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一章 白い光に包まれて
14.初めての銀夜祭-2
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ノックの音のすぐ後に、誰かが部屋に入ってくきた。
「シルヴィいるか?」
「カイ!」
シルヴィアがシャラリと髪飾りを鳴らしながらふり返る。
シルヴィアを呼んだのは男装姿のカイラのようで、シルヴィアが駆け寄る。
「カイ?」
いつもと違う呼び名に真子が不思議に思ってつぶやくと、後ろからにゅっと出てきた手が真子の口をふさいだ。
「その呼び名はシルヴィアの特別なものだから呼んじゃダメ」
驚いて後ろをふり向くと、よく見慣れた燃えるような赤い髪が目に入った。
「アレクサンドラ……さん?」
アレクサンドラはいつもなら高い位置で結んでいる髪を、今日は後ろでゆるく一つに編んでいた。
深い紅の生地に金の糸で縁に刺繍をされた男性用の衣を身にまとい、腰には太く黒いベルトを巻いている。
上衣は襟が大きく開いており、喉仏はもちろん鎖骨まで半分くらい見えていた。
アレクサンドラの少し濃いめの肌に深い紅の衣装が映えて、妙に艶めかしく見えた。
「今日のオレはアレクセイって呼んで欲しいな」
真子と目を合わせて、アレクサンドラならぬアレクセイがニヤリと笑った。
アレクセイが両手を広げて真子に男装姿を見せる。
「この格好はイヤか?」
真子が頭をブンブンと横にふると、頭の後ろでは髪飾りの鈴がリンリンと鳴った。
いつもの女装姿のアレクサンドラも迫力のある美女で美形なのは間違いなかったが、男装姿のアレクセイも文句なくカッコ良かった。
「アレクサンドラさんはキレイでいつも良い匂いがしてドキドキするけど、アレクセイさんはカッコ良すぎてドキドキする」
「ふふ、そうか。ありがとう。マーコもカワイイよ」
「うん。きれいにしてもらったの」
真子は着飾っているのが少し気恥しくなって下を向いた。
アレクセイは真子の髪型を崩さないように頭をポンと叩いた。
するとシルヴィアの肩を抱き寄せたカイラが片眉を上げていつものように鼻を鳴らして皮肉げに喋った。
「ふん。ま、多少は女に見えるかな」
「む、カイラさんも男に見えますよ」
「今日はカイルだ」
つまりカイルがカイラの男性名なのだろう。今日のカイルはシルヴィアとお揃いの銀の上衣と黒の下衣を身に着けていた。
「魔術士にとって呼び名は特別なんですよ」
シルヴィアが優美に微笑むと、そのあまりの眩さに見ていると目がつぶれそうになった。
シルヴィアに見とれる真子をカイラが不愉快そうに眺める。
「あんまり見るな。減る」
「もう、カイったら」
カイルが再びふんと鼻を鳴らしていた。
お揃いの銀の上衣と黒の下衣で並ぶ二人は一対のお人形のようだった。
「さて、じゃあ行くか!」
アレクセイが真子の手を取った。
「え? どこに?」
「銀夜祭を楽しむぞ」
アレクセイが真子を引っ張って部屋から外に出ていくのを、シルヴィアが優雅に手を振って見送った。
アレクセイに手を引かれるままに走りながら、真子の頭の後ろでは鈴の音がリンリンと鳴っていた。
「シルヴィいるか?」
「カイ!」
シルヴィアがシャラリと髪飾りを鳴らしながらふり返る。
シルヴィアを呼んだのは男装姿のカイラのようで、シルヴィアが駆け寄る。
「カイ?」
いつもと違う呼び名に真子が不思議に思ってつぶやくと、後ろからにゅっと出てきた手が真子の口をふさいだ。
「その呼び名はシルヴィアの特別なものだから呼んじゃダメ」
驚いて後ろをふり向くと、よく見慣れた燃えるような赤い髪が目に入った。
「アレクサンドラ……さん?」
アレクサンドラはいつもなら高い位置で結んでいる髪を、今日は後ろでゆるく一つに編んでいた。
深い紅の生地に金の糸で縁に刺繍をされた男性用の衣を身にまとい、腰には太く黒いベルトを巻いている。
上衣は襟が大きく開いており、喉仏はもちろん鎖骨まで半分くらい見えていた。
アレクサンドラの少し濃いめの肌に深い紅の衣装が映えて、妙に艶めかしく見えた。
「今日のオレはアレクセイって呼んで欲しいな」
真子と目を合わせて、アレクサンドラならぬアレクセイがニヤリと笑った。
アレクセイが両手を広げて真子に男装姿を見せる。
「この格好はイヤか?」
真子が頭をブンブンと横にふると、頭の後ろでは髪飾りの鈴がリンリンと鳴った。
いつもの女装姿のアレクサンドラも迫力のある美女で美形なのは間違いなかったが、男装姿のアレクセイも文句なくカッコ良かった。
「アレクサンドラさんはキレイでいつも良い匂いがしてドキドキするけど、アレクセイさんはカッコ良すぎてドキドキする」
「ふふ、そうか。ありがとう。マーコもカワイイよ」
「うん。きれいにしてもらったの」
真子は着飾っているのが少し気恥しくなって下を向いた。
アレクセイは真子の髪型を崩さないように頭をポンと叩いた。
するとシルヴィアの肩を抱き寄せたカイラが片眉を上げていつものように鼻を鳴らして皮肉げに喋った。
「ふん。ま、多少は女に見えるかな」
「む、カイラさんも男に見えますよ」
「今日はカイルだ」
つまりカイルがカイラの男性名なのだろう。今日のカイルはシルヴィアとお揃いの銀の上衣と黒の下衣を身に着けていた。
「魔術士にとって呼び名は特別なんですよ」
シルヴィアが優美に微笑むと、そのあまりの眩さに見ていると目がつぶれそうになった。
シルヴィアに見とれる真子をカイラが不愉快そうに眺める。
「あんまり見るな。減る」
「もう、カイったら」
カイルが再びふんと鼻を鳴らしていた。
お揃いの銀の上衣と黒の下衣で並ぶ二人は一対のお人形のようだった。
「さて、じゃあ行くか!」
アレクセイが真子の手を取った。
「え? どこに?」
「銀夜祭を楽しむぞ」
アレクセイが真子を引っ張って部屋から外に出ていくのを、シルヴィアが優雅に手を振って見送った。
アレクセイに手を引かれるままに走りながら、真子の頭の後ろでは鈴の音がリンリンと鳴っていた。
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