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二章 ここにいる証

23.その身体、確かめるように-1※

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 真子はその日、どうやって家に帰ったのかわからなかった。
 気づくと食後の後片付け中で、手を滑らせてお皿を割ってしまったところだった。

「あ!」

「今日はもう休んでなさい」

「ごめんなさい」

 隣に立つアレクサンドラが真子の頭をポンと叩くと、割れたお皿を拾って片付けてくれた。

 夜にはアレクサンドラが念入りにお風呂上がりのマッサージをしてくれた。

「マーコ、おやすみ」

 ベッドに横になった真子のおでこにキスを落として、灯りを消して出て行こうとするアレクサンドラの背中に真子がつぶやいた。

「……アレクサンドラさん」

「なぁに?」

 半分閉めかけたドアの動きが止まる。

「私、寝ている間に消えちゃったらどうしよう?」

 真子が消え入りそうな声で囁いた。
 しばらく沈黙が続いたあと、パタンとドアが閉まった。
 真子の声が聞こえずにアレクサンドラが出て行ってしまったようで、真子はもそもそと布団の中に潜り込んだ。
 するとすぐそばで声が聞こえてきた。

「マーコ、ちょっとそっちに寄って」

「え?」

「マーコが寝ている間にどっか行ったりしないように、こうして捕まえておいてあげる」

 アレクサンドラは真子のベッドにもぐりこむと真子をギュッと抱きしめた。
 お日様のような香りが鼻に広がる。
 こうして強く抱きしめられていれば、どこかに消えたりなんてしないと、ちゃんとここにいると思えてきて、真子の不安な気持ちも少しだけ落ち着いた。
 真子はアレクサンドラの背中に手を回してキュッと抱きついた。

「アレクサンドラさん」

「なぁに?」

「ふふ、胸が柔らかいね」

 顔をはさむように大きな胸のふくらみがあり、真子は頭を動かしてその柔らかさを堪能した。

「これね、魔術士専門の職人がいるのよ。それぞれの体格に合わせて違和感の無い胸を作ってくれる凄腕なのよ?」

「すごい。気持ちいい」

 真子はさらにギュッと抱きついて、アレクサンドラの胸に顔を埋めた。

「マーコ」

「ん?」

「おかえしよ」

 アレクサンドラは真子の脇の下を掴んでグイと身体を上にズラすと、真子の寝衣の襟元をクイと引き下げてふたつの胸の膨らみの谷間にチュッとキスを落とした。

「ひぁっ! アレクサンドラさん!?」

 アレクサンドラは真子の胸の間から上目遣いに笑うと、真子を抱きしめながら体勢を変えて真子の耳にチュッとキスを落とした。

「や、え……?」

 アレクサンドラはそのまま真子の耳たぶを軽く喰んで舌を這わせた。

「こわいことなんて考えられないようにしてあげる」

 いつも優しいアレクサンドラとは違う熱のこもった声で囁かれて、真子の背筋にゾクリと何かが走る。
 真子の心臓がドッドッドッとその存在を主張するように激しく動いている。
 抱き合ったところから伝わるアレクサンドラの体温も、なんだかとても熱い。

「ま、待って」

「ふたつの月に誓ったものね。口づけしかしないわ」

 真子が腕を張って身体を離そうとするがアレクサンドラはびくともせず、逆に真子の手を取り指先を口に入れて軽く喰みながらペロリと舐めた。
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