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三章 街角の襲撃
58.二度目の銀夜祭-1
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ドアを開けると男装姿のアレクセイが執務室の机の横に立ち、何やら書類を手にしていた。
アレクセイは前回と同じ赤い服に金糸で刺繍された服を身につけている。
アレクセイは部屋に入ってきたのが真子だと気づき目を細めると、すぐに手にしていた書類を机の上に置いて真子に近づいてきた。
「あの、おかえりなさい」
「マーコ、ただいま」
アレクセイは真子と少し離れた場所で足を止めると、真子の格好を上から下まで眺めて、ふ、と微笑んだ。
「それ、オレの色?」
「うん。みんなが用意してくれて」
「嬉しいけど複雑だな」
「……似合わない?」
真子はアレクセイの言葉にショックを受けて、少し涙目になりながら見上げる。
アレクセイはあわてて首を横に振ってから、困ったようにはにかんだ。
「いいや、すごく似合っている。ただ、その色の服はオレが最初にマーコに贈りたかったと思って。ごめん、みっともないこと言って」
アレクセイは一歩前に出て真子の頬に手を伸ばしたが、真子の肌に触れる前に動きを止めるとすっとその手を引いた。
「次の銀夜祭の衣装はオレに贈らせて欲しい」
アレクセイは真子の手を取り、腰を折り曲げて手の甲にそっとキスした。
「いいかな?」
真子の手を取りながら、アレクセイが下から真子の顔を覗き見る。
上目遣いのアレクセイの顔の威力にドキドキしながら、真子は顔を赤くしてこくこくとうなずいた。
「あ、そうだ。あのね、蝶を飛ばせるようになったの」
真子が小さな白色の魔力玉を出して蝶の形にすると、白い小さな蝶がふわふわと飛んでアレクセイの肩に止まった。
『会いたかった』
蝶は真子の声で告げるとふっと消えた。
「オレもずっと会いたかったよ」
「もう少し大きい魔力玉を作れるようになったら鳥も飛ばせるって。そうすれば声ももっと乗せられるんだって」
「それは楽しみだな」
久しぶりのアレクセイの笑顔に真子は何だかドギマギしてしまう。
「あ、あの、アレクセイさんはシルヴィアさんとかフェリシア様みたいな鳥を飛ばさないの?」
「オレはそういう細かい魔力操作が苦手で、オレが飛ばそうとするとすごくデカイ鳥になっちゃうんだよな」
「そうなの?」
「あぁ、これくらい」
そう言ってアレクセイは両手を広げた。
「えぇ? 今度、見てみたいな」
「いいよ。約束する」
会話が途切れて二人の間に沈黙が訪れる。
「……マーコ。触れても?」
真子が小さくうなずくと、アレクセイが真子のそばまで近づいて手を伸ばしてそっと真子の頬に触れた。
それからゆっくりと真子を抱きしめた。
真子もアレクセイの背中に手を回して抱きつくと、ふわりとアレクセイのお日様のような香りが鼻をくすぐってほぅと息を吐いた。
頭の上からアレクセイの声が降ってくる。
「あれから、どこか調子が悪いところは無かった?」
「大丈夫。あの、私のこと心配してくれたのに、ひどいこと言ってごめんなさい。ありがとう」
「オレも怒鳴ってごめん。オレのこと嫌になった?」
「ならない。なるわけない」
真子がアレクセイの背中に回した手にギュッと力を入れる。
ほんのわずかだが震えている声にアレクセイの不安な気持ちが表れている気がして、真子は強く否定した。
アレクセイもまた真子を抱きしめる腕に力を込めた。
「マーコ。マリーベルを助けてくれてありがとう」
「うん。でももうあんな危ないやり方はしないね」
「あぁ、そうしてくれ」
アレクセイは真子の髪に唇をあてながら、真子の背中を優しくなぞった。
「マーコ。今日はオレたちの家に帰らないか?」
「え?」
「マーコとゆっくり話をしたい」
真子が顔を上げると、真子の顔を覗き込むアレクセイの金色の目がそこにあった。
「それとも王都で銀夜祭を見て回る方が良い?」
「ううん。私も家に帰りたい」
そのまま二人は王宮から家の近くまで向かう二人乗りの馬車に乗った。
お祭りで通れない道があるらしく遠回りをしたのでいつもより少しだけ時間がかかったが、二人は手を繋いで肩を寄せ合い黙ったまま並んで座っていた。
アレクセイは前回と同じ赤い服に金糸で刺繍された服を身につけている。
アレクセイは部屋に入ってきたのが真子だと気づき目を細めると、すぐに手にしていた書類を机の上に置いて真子に近づいてきた。
「あの、おかえりなさい」
「マーコ、ただいま」
アレクセイは真子と少し離れた場所で足を止めると、真子の格好を上から下まで眺めて、ふ、と微笑んだ。
「それ、オレの色?」
「うん。みんなが用意してくれて」
「嬉しいけど複雑だな」
「……似合わない?」
真子はアレクセイの言葉にショックを受けて、少し涙目になりながら見上げる。
アレクセイはあわてて首を横に振ってから、困ったようにはにかんだ。
「いいや、すごく似合っている。ただ、その色の服はオレが最初にマーコに贈りたかったと思って。ごめん、みっともないこと言って」
アレクセイは一歩前に出て真子の頬に手を伸ばしたが、真子の肌に触れる前に動きを止めるとすっとその手を引いた。
「次の銀夜祭の衣装はオレに贈らせて欲しい」
アレクセイは真子の手を取り、腰を折り曲げて手の甲にそっとキスした。
「いいかな?」
真子の手を取りながら、アレクセイが下から真子の顔を覗き見る。
上目遣いのアレクセイの顔の威力にドキドキしながら、真子は顔を赤くしてこくこくとうなずいた。
「あ、そうだ。あのね、蝶を飛ばせるようになったの」
真子が小さな白色の魔力玉を出して蝶の形にすると、白い小さな蝶がふわふわと飛んでアレクセイの肩に止まった。
『会いたかった』
蝶は真子の声で告げるとふっと消えた。
「オレもずっと会いたかったよ」
「もう少し大きい魔力玉を作れるようになったら鳥も飛ばせるって。そうすれば声ももっと乗せられるんだって」
「それは楽しみだな」
久しぶりのアレクセイの笑顔に真子は何だかドギマギしてしまう。
「あ、あの、アレクセイさんはシルヴィアさんとかフェリシア様みたいな鳥を飛ばさないの?」
「オレはそういう細かい魔力操作が苦手で、オレが飛ばそうとするとすごくデカイ鳥になっちゃうんだよな」
「そうなの?」
「あぁ、これくらい」
そう言ってアレクセイは両手を広げた。
「えぇ? 今度、見てみたいな」
「いいよ。約束する」
会話が途切れて二人の間に沈黙が訪れる。
「……マーコ。触れても?」
真子が小さくうなずくと、アレクセイが真子のそばまで近づいて手を伸ばしてそっと真子の頬に触れた。
それからゆっくりと真子を抱きしめた。
真子もアレクセイの背中に手を回して抱きつくと、ふわりとアレクセイのお日様のような香りが鼻をくすぐってほぅと息を吐いた。
頭の上からアレクセイの声が降ってくる。
「あれから、どこか調子が悪いところは無かった?」
「大丈夫。あの、私のこと心配してくれたのに、ひどいこと言ってごめんなさい。ありがとう」
「オレも怒鳴ってごめん。オレのこと嫌になった?」
「ならない。なるわけない」
真子がアレクセイの背中に回した手にギュッと力を入れる。
ほんのわずかだが震えている声にアレクセイの不安な気持ちが表れている気がして、真子は強く否定した。
アレクセイもまた真子を抱きしめる腕に力を込めた。
「マーコ。マリーベルを助けてくれてありがとう」
「うん。でももうあんな危ないやり方はしないね」
「あぁ、そうしてくれ」
アレクセイは真子の髪に唇をあてながら、真子の背中を優しくなぞった。
「マーコ。今日はオレたちの家に帰らないか?」
「え?」
「マーコとゆっくり話をしたい」
真子が顔を上げると、真子の顔を覗き込むアレクセイの金色の目がそこにあった。
「それとも王都で銀夜祭を見て回る方が良い?」
「ううん。私も家に帰りたい」
そのまま二人は王宮から家の近くまで向かう二人乗りの馬車に乗った。
お祭りで通れない道があるらしく遠回りをしたのでいつもより少しだけ時間がかかったが、二人は手を繋いで肩を寄せ合い黙ったまま並んで座っていた。
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