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第5章 新たな試練

第136話 獣人族の村

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 ボス猫をジェーンに抱いてもらい、夜の街道をひた走る。
 とはいえ、俺とアタランテが本気で走るとジェーンが遅れてしまうし、猫を抱いている事もあって、速度はジェーンに合わせているが。

『おぉぉ……人間とは、こんなにも速く走れる生き物なのか!?』

 ボス猫が俺たちの走る速さに、若干引きながら問いかけてくる。

(本気を出せばもっと速く走れるぞ。とはいえ、全ての人間の脚が速いという訳ではないが)
『そうなのか。人間に対する認識を改めなければならんな』
(まぁ俺たちは少し例外だと思ってくれて良いんだが……それよりも、既に街を出てからかなり走っているが、大丈夫なのか?)
『大丈夫とは?』
(猫って、あまり行動範囲が広い訳では無いんだろ? 街の外へ出て、道が分かるのか?)
『問題無い。信頼出来る所から情報を得ているのと、ちゃんと目印を教えて貰っている。だから、一先ずこのまま街道を進めば良い』
(まぁ、そう言うのなら従うまでだが)

 猫の集会場を発ってから、それなりの時間が経って居る。
 俺たちの速度なので、かなりの距離を進んでいる事になるのだが。
 とはいえ、俺たちはボス猫に案内してもらうしか術がないので、ひたすら進んでいると、唐突にマーガレットからメッセージ魔法が届く。
 ……どうやらユーリヤに、起きそうな気配があるそうだ。

「ジェーン、アタランテ。一旦、ストップ。ユーリヤがヤバいらしい」
「了解いたしました」
「あー、ユーリヤちゃんが起きそうなんだね。じゃあ、私たちはここで待って居るよ」

 月明かりしかない、周囲を草原に囲まれた草原の中で二人を止めると、すぐさまテレポートで寮の部屋に戻る。
 闇に慣れた目をすぐさまベッドに向けると、ゴロゴロと転がるユーリヤの隣に滑り込んだ。

「……にーにぃ……」

 俺の存在を確認出来て安心したのか、ユーリヤの動きが止まる。
 危ない、危ない。
 マーガレットの話によると、前回はあのまま俺が見つからず、ムクっと起き出したって話だったからな。
 そうなると、朝まで全身拘束コースだからね。
 暫くユーリヤの傍に居て、静かに寝息を立てたのを確認すると、ゆっくりと立ち上がる。

「……マーガレット。悪いけど、また頼む」

 マーガレットにユーリヤを任せ、再びテレポートで二人と一匹の元へ。

「すまん、待たせた……って、この血の匂いは魔物か?」
「はい。ですが、特に問題はありません」
「魔物は夜の方が活発だからねぇ。まぁでも、大した事なかったよ」

 よくよく見てみれば、闇に紛れて黒い塊が落ちているが、大きさからしても中型の魔物だ。
 確かに、この二人であれば問題無いだろう。

『人間……一つ良いか?』
(ん、何だ?)
『この二人の強さは、まぁ良いとしよう。魔物を倒す力を持つ人間が居るというのは知っていたからな。だが、問題はお主だ。一瞬で消え、気配も匂いも絶っていたが、何が起こったのだ?』
(あぁ。俺、瞬間移動の魔法が使えるんだよ。今日、猫の集会場にもそれで現れただろ? 一度行った事のある場所には行けるから、無事に獣人族の村へ着いたら、集会をしていた公園まで送ってやるよ)
『そうか、それは助かる』

 ジェーンたちが倒した魔物の死骸を空間収納魔法へ格納すると、再び走り出す。
 そこから暫く走った所で、

『見えたぞ。我らが得た情報によると、あの横一列に並んだ四本の高い樹が目印だ。あそこまで行ってくれ』

 ボス猫が目的地を示したので、ジェーンに確認を取った上で加速する。

『ぐ……ぐぐぐ……』

 速すぎるのか、ボス猫が呻いているが、その甲斐あって目的の場所へと到着した。
 四本の樹が不自然に真っ直ぐ並んでおり、その少し先には大きな森が広がっている。

(次はどっちだ? この樹を目印に右か左かへ曲がるんだろ?)
『いや、ここが目的の村だ』
(おいおい。ただの森で、村どころか家すら無いぞ?)
『大丈夫だ。人間……一先ず、我を下ろすように言ってくれ』

 ジェーンにボス猫を地面に降ろすように伝えると、四本の樹をするすると登りだした。
 猫は樹に登れるが、降りられないと聞いた事があるのだが、大丈夫だろうか。

『人間……登れないか?』

 ついて来いと、こちらを見下ろしながら、ボス猫が上へ上へと登って行く。

「登って来いだってさ」
「ふーん。まぁいいけどね。じゃあ、先ずは私が行くよ」

 身軽なアタランテがするすると猫の後を追い、俺はその場で行方を見守る。
 ふっふっふ……思った通り、アタランテのパンツが見放題だ。
 木登りは、軽い者から行くのがセオリーだからと、どこかで聞いた話を伝え、次はジェーンに登ってもらう。
 アタランテとジェーン、二人のスカートの中を覗きながら思う。
 昼間に来れば良かった……と。
 夜の暗闇に慣れているので、木登りくらいは出来るが、せっかく真下から二人のスカートを覗けているのに、暗くてよくわからない。
 流石に今から明かりを点けるのも不自然だしな。
 せめてジェーンが木登りが苦手とかなら良かったのに。それなら助けを申し出ながら、下からお尻を触り放題だしさ。

『……思考が私の予想通り過ぎて、突っ込む気にもなれませんよ……』
(甘いな。俺は、そのアオイの呟きを予想していたぜっ!)

 だから何だという話をアオイとしつつ、俺も木に登る。
 結構な高さなので、最悪の場合は浮遊魔法を使おうと思いつつ、先行した二人と一匹に追いつく。

「樹に登ったが、ここに何が……って、凄いな。こういう事か」

 高い樹の上に登ると、木で作られた家が森の上に沢山並んで居た。
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