18 / 143
第一章 スライム生活
第十五話 大虐殺
しおりを挟む(なぜだ!何故だ!理解できない!)
彼は、塾が終わると、昆虫を魔物化して殺していた。すでに、3桁を越えて4桁に届きそうなスライムを殺している。しかし、彼が望むような変化は訪れない。
(虫だからなのか?僕のような天才がスキルを得る為には、虫ではダメなのか?)
彼が次に狙ったのが、中学校の池に居る魚たちだ。もちろん、自然に出来た池ではなく、貯水湖の役割を持っている。彼は、塾に行く前に、貯水湖の栓を抜いている。それほど大きくない池なので、塾が終わる時間には、膝丈以下まで水位は下がっている。目視で鯉が見られる状態だ。それほど手入れはされていないが、水位が下がったことで、苦労しないで魚を見つける事が出来る。
彼は、手当り次第に、スライムにして、殺していった。
しかし、彼はここで間違いを犯した。
水の中に居る生き物という曖昧な設定で発動したスキルが、魚以外にも適用されてしまう。池には、魚以外の生物ももちろん住んでいる。彼は、見える所のスライムだけを殺した。それでも、20や30の数ではない。魚以外もスライムになったと考えられるのだが、彼には些細な問題だ。
(魚でもダメなのか?それなら・・・)
彼は、ひとまず家に帰る。
抜いた池の水を元に戻す必要性を感じて、栓を戻して、注入する水量を増やした。問題にはならない行為だと考えていた。
通常なら、池の水位が上がった時点で、注入する水量を元に戻せばいいのだが、彼がわざわざ戻ってきて、水量を戻すような行為をするはずがない。
最大の水量が流れ込む池は、またたく間に水位が上がる。
彼がスライムにした多くの魚や虫たちが残っている。池の底は、泥で覆われていた。泥の中には、魚以外にもカエルやドジョウやヤゴなどが大量に住んでいた。彼は、これらの生き物を全てスライムにした。元々、泥の中に居た為に、スライムになっても泥の中に留まった。彼が虐殺を行っている最中も、泥の中で彼の行為から逃げていた。彼が、虐殺した数の数倍に匹敵するスライムが、泥の中に潜んで、彼の蛮行をやり過ごした。
通常の魔物なら、魔物同士で戦うのだが、彼が作ったスライムたちは、いわば同族だ。
泥の中で過ごしていたスライムたちは、意識しないまま、同族で集まった。
そして、池の水量が増して、池は溢れ出す。
いくつかの塊になっていたスライムたちは、脱出時に際して、同族が集まって、一つの個体になった。
スライムが集まって何になる?
ラノベ展開では、ビックスライムやヒュージスライムやキングスライムと思われるが、残念ながらスライムは、どれだけのスライムが集合してもスライムでしかない。ただ、核が複数存在して、全部の核が壊されて初めてスライムとしての生が終わるという化け物になっただけだ。
新たに産まれたスライムは、中学校の池からの脱出に成功する。自分たちを作った者ではない。自分たちと同じ者が居る場所を目指す。多くの仲間たちが、虐殺された。多くの同胞たちが、最後に頼った者が居る。多くの仲間たちを受け入れた者が居る。近くて遠い場所に・・・。
彼は、知らなかった。
彼を憎んでいる者が産まれていることを・・・。
彼は、知らなかった。
彼を殺したいと思っている者が産まれていることを・・・。
彼は、知らなかった。
彼が虐殺するたびに彼を憎んで殺したいと思っている者が力を得ていることを・・・。
彼は、間違っていなかった。
彼は、彼が望んでいた通りに特別な人間だ。
---
今日もダメだった。
魚ではなく、ネズミをスライムにしてみたが、ダメだ。
くそぉ。ネズミはなかなか見つからない。ペットショップで買おうにも、そんなにお金がない。ペットショップや猫カフェに居る獣をスライムにして、僕の糧にしようかと思ったが、誰が見ているかわからないし、ニュースになってしまう。
中学校も、あれから警備が厳重になった。
あれは、天才の僕にしては珍しいミスだ。気持ちが焦っていたのかもしれない。水を出しっぱなしにしてしまった。それで、池が溢れ出して、問題になってしまった。池の魚が消えたとか問題になっていたが、野犬や野良猫が持っていたのだろうと推測されていた。
経験値は少ないだろうが、やはり昆虫をターゲットにしたほうが良いのだろうか?
はやく、偽装や隠蔽のスキルを得ないと、僕が偉大なスキルを持っているとバレてしまう。バレるのは、問題ではないが、早すぎる。アイツらが警戒してしまう。それに、こんな偉大なスキルを持っていると、自衛隊が戦っている最前線に送られてしまう可能性もある。
あれからママは、帰ってきては、すぐに奴の所に向かう。何をしているのか知らないけど、奴を連れて帰ってくるつもりなのだろうか?
パパからは何も教えてもらえない。
毎日、少ないけどお金が貰えるからパパは殺さないで置いてもいいかと思い始めている。
僕は、人類を選別する立場になっている。
まだ、僕の偉大さに気が付かれていないが、僕の偉大さが解ってしまえば、皆が跪くに決まっている。
だからこそ、動きやすいように、新しいスキルが必要になる。
偉大な僕だから、経験値が必要になってくるのは理解が出来る。
何か、方法を考えなければダメかもしれない。
そうだ。
良いことを思いついた。
夜に、養鶏場に忍び込んで、鶏を・・・。さすがは、僕だ。完璧な計画だ。
田舎の山の中に有るような養鶏場なら、防犯施設があっても、僕のような天才なら解除は出来るだろう。解除が出来なくても、すぐに逃げれば大丈夫だ。鶏が一気にスライムになって殺されるとは考えないだろう。
そうだ。昆虫でもダメで、魚でもだね。それなら、鳥類だ。鶏なら、入ってくる経験値も多いだろう。
---
彼は、養鶏場の鶏を魔物化する計画を実行、出来なかった。
彼は、父親の運転する車で養鶏場の近くを通った記憶があり、簡単に行けるものだと思っていた。
彼の家の近くには、養鶏場はない。
この地方の特有の事情なのかもしれないが、養鶏場は存在するが、山の中に点在している。
そして、車で20分ほどの場所にある養鶏場は、歩いていける距離ではない。根性があり、なんとしても歩こうと思えば、到着は出来るだろう。しかし、安易に考えて、何事も都合よく考える彼が歩けるような距離ではない。もちろん、自転車を使っても良いのだが、楽な方に逃げる彼が山道を自転車で登ろうとは考えない。何かしらの理由をつけて、勝手に折り合いをつけて、辞めてしまう。
彼の養鶏場・大虐殺計画は、彼の性格から実行できなかった。
しかし、彼は小学校に忍び込んで、小学生たちが育てている。鶏やウサギを虐殺することを思いついてしまった。
防犯カメラが有るのだが、フードをかぶって、顔を見られなければ大丈夫などと安易に考えて実行してしまった。
昆虫の大虐殺に始まって、中学校の池の魚を殺して、街で見かけたネズミを殺して、今日、彼は鶏とウサギを殺した。
彼は小心者だ。
自分を天才で、特別な人間だと思っていなければ、精神の均衡が保てない。
彼の境遇は、同情すべき部分が多い。
しかし、それは彼が動物を虐殺していい理由にはならない。同級生を呼び出して、偶然現れた女子生徒をスライムにしていい理由にはならない。彼は、被害者でありながら、加害者になってしまった。
彼はスキルを得た事で、間違えてしまった。
彼は間違えてしまった。スキルを得た時に、スキルを公表すべきだったのだ。
彼が犯した間違いは、スキルの使い方だ。
彼が皆から尊敬される未来が存在していた。彼が考える、なりたい自分になれるチャンスを自ら手放したのだ。
10
あなたにおすすめの小説
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる