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第二章 スライム街へ
第十九話 開戦
しおりを挟む夕日が眩しい時間だ。
天子湖から、私たちがいる場所は離れている。私は、スライムになってカーディナルに乗っている。
状況分析と最終確認をしている。
結界も上手く作動しているから、天子湖にいる人たちは中には入られていない。
数名の、---多分自衛官だと思うけど・・・。結界を調べている。もしかしたら、鑑定のスキルを持っている人がいるのかもしれない。何度も、鑑定で調べているけど、私に繋がるような情報は結界では表示されない。
もし、私に繋がったとしても、今の私はスライムだ。問題になったとしたら、逃げればいい。裏山は、まだ私の持ち物だ。動物?の楽園にすればいい。
天子湖にいる魔物は駆除しなければならない。
人を喰らった魔物は、人を求めるかもしれない。
魔物は駆除すべき物だ。しかし、魔物と人の全面対決の様相になるのなら、私は第三勢力となり、人に味方する。魔物の目的が解らない。譲歩ができるのかさえも解らない。意図があるのかも解らない。解っているのは、魔物は排他的な存在だということだけだ。
夕日が徐々に沈みかけている。天子湖の水面に夕日が反射して綺麗だ。
偵察は十分できたと思う。いろいろ考えなければならない事は増えたけど、想定している範囲内だ。
一緒に偵察していたライを見てから、カーディナルに地上に向かうように頼む。ライを載せているアドニスも一緒に降下する。
スライムの状態で、切り株の上に乗る。カーディナルが、降ろした場所が切り株の上だ。綺麗に着られた切り株だ。
”ライ”
ライもスライムの形で、私がいる切り株に登ってくる。
『はい』
”作戦を考えてみたけど、皆は?”
作戦と呼べるか解らないけど、方針は決定した。
魔物と人の配置や、物資の位置は実際に見て確認した。それに、作戦の開始のギリギリで配置が変わってしまう可能性があった。できるだけ最新の情報で、作戦を修正したい。
『救援に出た者もいますが、突入するメンバーを選抜しています』
”救援?”
『はい。探索範囲を広げた結果。近くの山にも魔物が散らばっています。討伐と動物たちの救済を行っています』
”わかった。突入のメンバーは?”
『揃っています』
観察していたメンバーから、魔物たちの行動原理が解ってきた。
どうやら、魔物のテリトリーに入らない限りは攻撃を開始しない。これは、今までの経験で解っていた。ここの魔物たちは、しっかりと連携している。一体が動き出すと連動して数体が動く、動いて空白地帯になった場所には、他の場所にいる魔物が動いてくる。
正面から攻めようとした時には、魔物の集団に押しつぶされてしまう。
オーガの変異種を狙おうとしても、彼らのいる場所を攻め込もうとしたら、他の魔物が一斉に動き出して前後を挟撃される形になってしまう。
あと、天子湖のキャンプ場にいる人たちの投光器が厄介だ。私たちが見えてしまうのはある程度は諦めているけど、存在は秘匿したい。魔物たちも明るい方が戦いやすい種族が多い。私たちは、暗闇でも問題がない種族が多い。
だから、夜になるのを待っていたのに、投光器やマスコミのライトが邪魔だ。彼らは何をしたいのだろう?
いや、判り切っている。取材という題目で、自分や自分の家族や権力者以外のプライベートを暴きたいのだろう。それとも、自分は安全だと思っているのかな?私たちが結界を張らなければ、あの投光器やライトに虫が集まっている。あの投光器に、魔物が反応してしまう。自分たちは守られているとでも思っているの?
だめだ。マスコミにはいい印象がない。あの遠慮がない問いかけは、何も考えていないか、”喧嘩を売っている”としか思えない。怒らせたいのか?
ふぅ・・・。
落ち着こう。
”ライ。投光器やライトは、誰なら壊せる?”
『同時に?ですか?』
”ある程度は、同時に壊したい。あと、他の待機している車やカメラを無力化したい”
『破壊だけなら、誰でも可能です。スキルを使っても良いのなら、フィズが適任だと考えます』
”フィズ?”
フィズは、百舌鳥だ。
スキル?あぁそうか、フィズは”石を飛ばす”ことができた。石の強度が調整できる。泥のようにもできたはずだ。
『はい。ナップと一緒なら安全が上がります』
”わかった。フィズとナップは、開戦に先駆けて、投光器とライトを潰して、あとマスコミが持つカメラ・・・。フラッシュ部分だけでいいから潰して・・・。あと、カメラのレンズを汚してくれればいいかな”
『はい』『わかった!』
フィズとナップから了承が送られてくる。
パルの眷属は遊撃と連絡係だ。パルの眷属では、単独で対応が難しい。単独での対応は、不可能ではないが、決死の覚悟が必要になる。複数の個体で攻撃をする必要があり、乱戦になってしまうような戦いにはむかない。
”パルの眷属は、遊撃。特に、人の動きに注意して”
『はい』
”ライ。分体を皆に付けても、戦闘は大丈夫?”
『大丈夫です』
皆が集まってくる。
家の守りは残しているが、飛行能力がある者は、集結している。
”カーディナル。アドニス。キング。クイーン。テネシー。クーラー。ピコン。グレナデン。そして、ライ”
皆が、私の前に頭を下げる。
私も、女の子の姿になる。皆に、指示を出すときには、こっちのほうが、”シュール”になりすぎない。スライムに命令されている図よりは、”まし”というレベルだけど、気分は大事だ。
皆の返事を聞いて、作戦を伝える。
作戦は、前から言っている通りだけど、少しだけ変更が入る。
最初に、フィズとナップが、周りの光を潰す。車のライトは、汚すだけで十分。確実に汚すのに、ナップの力が必要だ。
私とライが天子湖のキャンプ増にいる人と魔物の間に降り立つ。
スライムの状態で、カーディナルとアドニスに乗って降り立ってから、私は女の子に、ライは男の子に変化する。武器を取り出して、近くの魔物と戦闘に突入する。その時に、テネシーとクーラーが右側から魔物の集団に切り込む。ピコンとグレナデンが左側から魔物の集団に切り込む。キングとクイーンは、オーガの変異種を牽制する。
光が無くなったら、結界の中で、アイズとドーンが、結界の外側に群がる。投光器の予備がある可能性があるから、予備が来た時の対応を指示する。他にも、人が結界に近づかないように牽制を行う。結界は壊れないとは思うけど、スキルを全力で使った場合に、壊れてしまう可能性がある。壊れても、すぐに結界が発動しない可能性がある。魔石が壊れてしまえば、その部分は結界が発動しない。
フリップとジャックが、キールとキルシュを連れて、結界の中に入る。戦闘が開始したら、私たちの補助を行う。いつものフォーメーションだ。
作戦というよりも、力技だ。
今回は、スキルを全力で使う必要があると思っている。そのために、結界を強めにしている。
”スキルはフルオープン。必要だと感じたら使って!あと、魔石だけは回収。魔物の遺体は必要ない。倒した魔物は、一か所にまとめよう”
『おぉ!』
皆が了承してくれる。
”あとは、別に命がけで戦う必要はないからね。安全マージンを確保して戦って、負けそうなら逃げればいい。別に、私たちは魔物を駆逐する正義の使徒でもなんでもない。この場所が滅んでも、可哀そうだなと思う以上の感情はない。だから、皆・・・。解っていると思うけど、いつものように、怪我しないように、無理しない範囲で頑張ろうね!”
さて、太陽が西にある山脈に姿を隠した。
静寂が支配する時間帯が近づいてきた。天子湖の周りからは、人々の声が聞こえてくる。
投光器が光りだす。マスコミのライトが、車のヘッドライトが光る。
”皆!行くよ!”
『出発します』『勝利を御身に!』
勝利なんかよりも、皆の無事を祈って欲しいけど、皆は私のわがままに付き合ってくれている。
私が心配しすぎるのはダメだ。
”お願い!”
フィズとナップが出立してから、2分くらいが経過した。
明るかった。投光器が破壊された。
投光器の光が消えて、徐々に闇が降りて来る。
”ライ!カーディナル!アドニス!”
『はい』『おぉ』『っは!』
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