幼馴染じゃなくなる日

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2.地味男子×無邪気女子

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 結局、千尋は陽花と、大川翔平、そしてもう一人翔平と仲のいいサッカー部の一人の合計四人で花火を見に行くことになった。
 浴衣を着てくる陽花だった。
 年々、陽花の姿がまぶしく映るようになっている。
 自分との差がどんどん開いていく気がする千尋だ。
 何の取り柄もない自分と違って、彼女は控えめに言っても「可愛い」部類だと思った。化粧はしていないのに、素で可愛い。
 どこで差がついたのだろう。
 子供の頃一緒に風呂に入ったこともあるし、裸を見たこともある。
「はるか、ここに黒い変な物がついてるの」
 幼稚園にも行っていないころ、陽花の胸元に黒子があるのを見た。彼女は変な物っだと思ったらしく、千尋に訴えてきた。
「はるちゃんのそれ、ほくろ、って言うんだよ。病気じゃないよ」
 子供とはいえ、こんなものを見せていたなんて、人に知られたらきっと叱られてしまう。
 そんな無邪気だった二人は、もう高校生だ。
 差がついているのに、彼女はおかまいなしに、自分を慕ってくる……不思議だった。 

 大川翔平と竹本雄也、そして二人の四人で歩くが、翔平は陽花に積極的に話しかけているのを見て、千尋と竹本雄也の二人は後ろに下がった。
「三沢は吉井とは付き合ってはないんだろ」
「ないよ」
 雄也は確認するように尋ねてきた。
 二人の仲を取り持ちたくて距離を開けて歩いても、陽花が振り返り、
「早く早く」
 と二人を気に掛けてくる。
 二人というより、陽花の視線は千尋だけに向いている気がした。


 花火の打ち上げが終わり、四人で岐路についていた。
「ちーちゃん、ちょっと足が痛くなってきた」
 陽花は下駄の鼻緒で足を痛めているようで、しかめっ面で後ろの千尋を振り返った。
「大丈夫?」
 翔平がしゃがみ、陽花の足下を覗き込んだ。
「ちーちゃん、ちょっと痛いかも」
 翔平のことはスルーするように、千尋の顔を見た。
「どうしようか。とりあえず、そこに座ろう」
 翔平は陽花の手を引こうとしたが、陽花は自分でベンチに腰を下ろした。
「…………」
 彼は苦々しい顔をしていたが、陽花は見向きもしなかった。
「ばんそうこう、持ってる?」
「俺はないな」
「俺もないや……」
 翔平と雄也は首を振った。
「僕は、持ってるよ」
 去年もそうだったのだ。同じように鼻緒で足を擦りむいて痛め、バス停まで彼女を背負って歩いた千尋は、今年もそうなるかもしれない、とばんそうこうと包帯を用意していた。ボディバッグに入れてきて正解だった。
 案の定だったので、手当をしてやると、
「用意いいね」
 と陽花に驚かれた。
 翔平と雄也の二人は、ぼんやりと陽花の足下を見ているだけだ。
「まあ、想定してたから」
 手当をしたあと、千尋は陽花が歩けるかを確認をする。
「うん、大丈夫」
 ゆっくり歩こう、と千尋は陽花を促した。
 翔平と雄也にも促し、駅に行こう、と伝える。
 陽花は千尋の腕をぐいっと引っ張った。
「ごめんだけど、二人は先に帰っていいよ。わたし歩くの遅いから迷惑かけるし」
「いや、別に迷惑なんかはないけど……」
 翔平はどうしようか悩んでいる。
「ちーちゃんに送ってもらうから、大丈夫」
 もう一度腕を引かれ、
「あ、うん、僕が……付いてく……」
 千尋は言った。
「そっか。じゃあ、頼むよ」
「悪いな」
 翔平と雄也は手をあげ、その場から立ち去った。
 本当は翔平は陽花の手助けをしたかったのだろう。ずっと苦々しい顔をしていた。
(申し訳なかったな……)
 二人を見送る千尋だった。
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