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最終章 狂酔編

第287話 現実……?

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 目が覚める。
 硬いものが背中にあたり痛みを感じるが、これは学院の屋上に寝ていたからだった。

「大丈夫?」

 上から降ってきたのはキーラの声。
 空ではカケラと仲間たちが戦っている。
 空を飛べない者たちを飛ばしているのはロイン大将とモック工場長のようで、彼らは地上からの援護に徹していた。

 これはさっきとまったく同じパターンだ。ここにきて初めてまったく同じパターンというのがやってきた。
 よりにもよって特にキツイこのパターンでだ。

 仲間は悪気なさげに近づいてきて、俺を苦しめるとも知らずに俺に触れようとする。
 その仲間に味わわせられる痛みは、これまでの数々の苦しみの中でもトップレベルに耐えがたいもの。

 これからそれが何度繰り返されるのか。もしかしたら永遠に繰り返されるのか。
 カケラが約束なんて守るはずがなかった。俺はこの悪夢から抜け出すことはできないのだ。
 狂気に堕ちられるものならさっさと堕ちてしまいたい。いや、これはすでに堕ちているのか?
 分からない。助けてくれ。
 助けなくていいから殺してくれ。

「エスト、目覚めたばかりで悪いんだけれど、力を貸して!」

 キーラが寝そべった俺の肩に手を伸ばす。
 俺はとっさに起き上がってその場から離れた。

「来るな! 近づくな! もうやめてくれぇ……頼むから、もう、やめてくれぇえええ」

 俺はかつてないほどに大量の涙を垂れ流し、顔を崩して泣きじゃくった。
 そしてキーラ、リーズ、シャイルから距離を取った。
 心配そうに近寄る三人に対してめいっぱい叫ぶ。喉が破れそうなほどに大きな声で拒絶する。
 ふとエアの遺体が視界に映り、危うくつまずきそうになるも、どうにかエアを避けて床に転がり、そのまま這うようにして仲間たちから距離を取った。

「お願いだ。お願いだから近づくな! 俺に触れるな! あっちに行ってくれぇえええ!」

 俺は膝を抱えてうずくまったまま、顔を伏せた。
 頭を両手で押さえ、全力の拒否を示した。

 彼女たちはそれでも近づいてくるだろう。
 それがいつなのか、顔を伏せて怯えるだけの俺には分からない。すぐかもしれないし、時間がかかるかもしれない。
 腰が抜けてもう動けない。俺はただただ恐怖し、地獄の瞬間を待ちつづけることしかできなかった。
 肉体的地獄を待つこの時間も精神的地獄。
 俺は永遠に地獄から抜け出すことはできないのだ。
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