すぐ死ぬ女王これで最後にいたしましょう

ろろる

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第八話 国を背負う者

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「私と、結婚していただけませんか」

レオンハルトは、私に膝まづき、手の甲にキスをおとした。

「……私に求婚するということがどういうことか分かっているのですか?」
「ええ。あなたの伴侶になるということは、同じ国を背負う者となる、王配となるということ。
それを承知での求婚にございます」

……ええ?
攻略対象はスカーレットに行くと思ってたんだけどな。
ていうか、行かれても困るけどね。アルティアは公爵家だし。カーネルはもう監獄暮らしだし、
他の男に乗り換えられて、もう一度王位が危険にさらされるなら、あの子の処分も考えないと……。

「お断りさせて下さい。」
「何故でしょうか。理由があるならお話し下さい。自分は王配に推薦されるぐらいには優秀であります。きっとあなたを支えれる良いパートナーになるでしょう。断る理由がないかと。」

「それは、なんのために私に求婚しているのですか?」
「え?」
「家のため?国のため?名誉のため?色々あるでしょう。あなたは、何のために今ここで、私に結婚しろと言っているのですか?」
「それを答えれれば、断る理由を聞かせてくださいね。」
「いいでしょう」
「……家のためです。父の期待に、応えたい。家の役にたてることは、これくらいだと思うのです」

へぇ、求婚する相手に結構正直に喋るね。そこはプラス点だ。
まぁレオンハルトはゲームでも正直なことしか言わないキャラだったしな。でも、彼はスノーリリーの暗殺後、壊れかけていた王国を立て直そうと必死で、多くの人の命を救った。彼のおかげで、国は輝きを取り戻していった。

「……そうですか。ではお断りするしかないですね。」
「理由をお聞かせ願います」

「あなたは自分を低評価しすぎです。自分は優秀だと言っておきながら、自分に出来ることは私と結婚することだけと言う。家のため、大いに結構。ですが、自分の価値に気づけていない人を伴侶にするわけにはいきませんわ。失礼、アルティア公子。」
 
誰かのために、何かのためにを原動力にすると、身を滅ぼすこともある。ゲームの攻略対象はほとんど皆、ヒロインのために頑張って身を滅ぼしかけた。だからとりあえず結婚相手は、
誰かのために、ではなく、「自分のためだ」と、堂々と言える人にしないと、ダメな気がする。

レオンハルトってネガティブなのかポジティブなのかわかんないわね。
もっと自分を評価してもいいと思うけどな…。

でもでも、もはや好き嫌いで選んでられないんだよなぁ…。即位まで、あと半年しかないんだから。

でも国を任された者として、そこは慎重に決めないと……。

自分のタイプとか推しで婚約相手選んじゃダメ。
あー……、昔の貴族って大変だよねぇ。

恋愛結婚は、出来なさそうだ。
それでも愛したこのゲームの世界を守れるなら、それもいいかなって思ってるよ。

眠くなってきたし、寝るか。
自室に戻って、ベッドに寝転んだ。


「おはようございます、スノーリリー様」
「おはようございます」

「おはよう。ネア、シャルド」
「今日の予定を申し上げます。今日は書類に目を通していただき、承認するかどうかの報告を宰相に。……あと、お客人が1名」

「客人?どなた?」
「アルティア公爵家のご長女、カヌレ・アルティア様でございます。」

……え、何?何でアルティアの長女が私に 会いに来るわけ?あ、もしかして求婚を断った苦情?
さすがにそれはない?

ゲームでレオンハルトを選ぶと、その妹であるカヌレも登場する。確かすごいしっかり者なんだよね?
そのカヌレが私には何の用だ……。

「で?カヌレ嬢はどうしてるの?」
「応接室にお通ししました。」
「わかった。行きましょう」
「はい。」

「ねえ、カヌレ嬢ってアポ無しできたの?」
「はい。スノーリリー様にお話があるとのことで」

応接室に行くまでの途中、2人に尋ねた。
「……その、怒ってたりした?」
「いいえ?怒らせるようなことでもしたのですか?」
「うーん、どうかなぁ……」
「面識は?」
「社交界で何回か…。っていっても幼少時代だし。」

幼少時代に何回かゲームで会ってるシーンあるよね?あと、ゲームでカヌレはヒロインの友人だ。
スノーリリーとは挨拶ぐらいの会話しかしてないんだよね。

「知ってる?私が小児性愛者だって噂があるらしいわよ。」
「え?」
「ネアとシャルドは私より年下だし、専属侍女筆頭は13歳ネア。結婚相手は選ばないのに2人侍女を迎え入れたから、らしいけど。」
「なんなんですかその噂……。妄想がいき過ぎているじゃないですか」

と、ネアがうわぁとドン引きだと言うような顔をした。
「その通りよ。まったく……。とりあえず、結婚相手を早く決めて、私より年上の侍女を迎え入れないと噂の誤解はとけないわね。あ、年下の侍女を迎えても筆頭はネアだからね。」

「光栄にございます。」
か、かわいいっ!ネアが微笑んだ。
い、いや、ネアが可愛いとはいえ、別に小児性愛者ってわけじゃないし!!
ネアもシャルドも仕事出来るし可愛いし、よくやってくれてるよね。

「さて、カヌレ嬢に会うとしますか。」
応接室の扉をシャルドが開けた。

「ごきげんよう、カヌレ嬢。お久しぶり」
「ごきげんようスノーリリー様。突然申し訳ございません。」

カヌレがこちらに立って礼をした。
「構わないわ。で、何のご用かしら」
「今日は、お願いがあって参りました」

……お願い?まさか昨日の求婚のこと?
「私を、専属侍女の1人にしてくれないでしょうか!?」

…んっ?専属、侍女……。
つまりは、ネアとシャルドと同じ仕事をするってことだよね?
まぁでも元々、侍女って貴族がするイメージある所もあるかも。
王妃とかの侍女は貴族の子女や夫人がやってるよね。

「まぁ急にどうしたのかしら?」
「実は私、婚約が白紙になりまして」

ん!?えらくオーバーな話だな!

「それが私の侍女になりたいということにどうやったら繋がるのかしら」
「私は長女ですから、面目丸潰れなのです……。
家での立場も最悪なのです。ですから侍女にしては頂けないかと」

「貴族のお嬢様に私の侍女が務まるかしら?それって、自分のためってこと?」
「自分のためでしかないですね。アルティア家の名誉とか誇りとか正直どうでもいいんですの。オホホホ」

それ言っていいやつ!?
あんた長女でしょうが!お菓子みたいな名前しやがって!……それは関係ないな。

でも、面白い。そういう人を待ってた。
カヌレがしっかり者なのがゲーム通りなら、雇う価値はある。
「つまり出世したいと。」
「ええ。……軽く見えるかもしれませんが、何だってやる覚悟はあります。」
「何でも?」
「ええ。情報収集から何でも。お望みなら人を殺すことだっていたしましょう。」
「!へぇ、自分のためにそこまで出来るのね」

「誰だって我が身が1番可愛いでしょう?
ですけど、お仕えする以上、あなたの危機には盾になりますわ。」

「ふふ、いいでしょう。面白いわ。でもねカヌレ嬢。私は人を殺すことを強要したりしないわ。
絶対に、代わりに人の手を汚すようなことはさせない。こちらからお願いするわ。人を絶対に殺さないで」

「な、何故ですか?」
「人を危険な目に合わせるのは苦手なのよ。それに、傷ついて欲しくない。大切にしているのよ。私を信じ、使えてくれる臣は国と私の宝です。」
「……成程、国を背負っておられる方の言うことは違いますね。分かりました。あなたとの約束をお守りすると約束します。」

「わかりました。ではよろしくお願いするわねカヌレ。」
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