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55.過去1 ~王太子妃side~

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 自分をより綺麗に見せるために一日中鏡の前で練習をした。
 
 どうすれば男の子にウケがいいのか。
 どうすれば自分の思い通りに行動してくれるのか。

 男の子達は素直な女の子が好き。だけど、いいなりになる女の子は下に見られる。ワガママな方が可愛いと思われた。
 
 長じるに従い気を引こうとする男の子達が列をなした。
 それと同時に女の子達からの虐めが発生した。
 これはハッキリと言って予想外だったけど、男の子達にすればそれは直ぐになくなった。数人はしつこく虐めてきたけど男の子達の前で涙を見せれば彼女達はたちまち悪者として退治された。何だか、物語に出てくる意地悪な継母や義姉のような存在だった。彼女達は時々、私を恨めしそうに睨みつけてくるけど周りの男の子達が遠ざけてくれた。少し微笑んでお礼をいえばそれだけで嫌なものを排除してくれる。綺麗なもの、可愛いもので満たしてくれる存在男達は実に使い勝手がいい。

 欲しいは両親ではなく男の子達がくれた。
 彼らは私を「お姫様」にしてくれる存在だった。お姫様を守る騎士であり召使。

 忙しい両親は私に「友人が出来た」と喜んでいたけど、父は女友達がいないのを心配していた。

 
「サリー、女の子の友達もつくってみたらどうだい?」

「お父様は私が前のように虐められてもいいの?」

「そんなことはないが……」

「女の子達は私に意地悪をするから怖いの!」

「サリーと仲良くしたい子もいる筈だよ?」

「また無視されるわ!酷い言葉を投げつけられるかもしれない!」

 そう言って涙をにじませると父は慌てて謝ってきた。

「すまないサリー、そんなつもりで言った訳じゃないんだ」

 じゃあ、どういうつもりで言ったのかしら。
 そもそも女友達じゃあ、プレゼントを贈ってこないじゃない。
 それに……彼女達は男爵家が貧乏な事をこれ見よがしに嘲笑うのよ。嫌になっちゃう。言い返したら逆切れされるし。大体、私は本当の事しか言ってないわよ。綺麗なドレスは私の方が似合うし、彼女達がブスなのは本当の事じゃない。自分がモテないからって私に当たり散らすのは違うでしょう。
 
 その点、母の方はあっさりしていた。

「王立学園に入れば自然と女友達ができるわ。無理して相性の悪い子と友達関係になる必要はないわよ」

「それもそうだが……」

「交流の幅を広げるのは学園に入ってからでも遅くないわ」

「う……む」

「学園に入学すればサリーと気の合う女の子もいるわ。勿論、意地悪なんてしない良い子がね」

 父を言いくるめてくれる母には感謝しかない。
 定期的に「女友達はできたかい?」と聞いてくると流石に鬱陶しい。


 母曰く、「お父様は、他の男の子にサリーを取られたように感じているのよ。早い話が娘を取られたくない嫉妬ね」との事らしい。男親にありがちな心境だから気にしないで良いと言ってくれた。
 ただ、十二歳頃に子爵夫人からの「お茶会」の招待状は届かなくなった。幼馴染の子爵家の男の子とも疎遠になったけど、元々、名前もおぼろげな子だったから気にしなかった。後から知った事だけど、何でもに罹って入院したらしい。

 数年後、王立学園に入学した。



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