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56.過去2 ~王太子妃side~
しおりを挟む学園では更に大勢の男友達ができた。
今までの友達とは比べものにならない家柄の人達。特に上級生は私に色々と教えてくれた。先輩達は身分も高ければ裕福さも桁違いだった。男友達からのプレゼントに慣れていた私ですら驚くほどの高価な品々。今まで見た事のない美しい宝石の数々。絹の素材から違う高級ドレスの数々。
ある先輩は、「サリーの魅力が一層引き立つように」と言って特注の香水をプレゼントしてくれた。フローラルな香りでありながら少し独特の匂いが混じっていた。とても魅惑的な香り。それを付けると何時もよりベッドの中で積極的になってしまうのよ。でも、情熱的な夜を過ごせるから良いわよね。
先輩達に新しい友達を紹介された。
その友達は先輩達同様に高位貴族。私と同級生。下位貴族との違いを思い知らされた。皆、洗練されていて魅力的。私の欲しい物を沢山くれる。
でも、何か物足りなかった。
その何かが分からないのがもどかしかった。
それを知ったのは高級ホテルからの帰り道でのことだった。
「泥棒猫!!!」
見知らぬ女性から罵倒された。
「貴女、誰?」
「私を知らないっていうの?」
「? 知らないけど?」
「私はクロードの婚約者よ!」
「誰それ?」
「ふざけないで!あんたがクロードに絵を描かせたでしょう!」
「画家の知り合いなんていないわ」
「あんたのせいでクロードはおかしくなったのよ!」
意味不明。いるのよね。時々、こういった訳の分からない事を言ってくる輩がいる。
何なの?
「もしかして、クロード・ファレーのことかい?」
エスコートの相手である男友達が私を庇うように女性に対峙した。
「そうよ!」
「確かに、以前クロード・ファレーに彼女の絵を依頼した」
「あれから彼がおかしくなったのよ!」
「三ヶ月前かい?」
「そうよ!あれ以来様子がおかしいの!何時もどこかぼんやりしていて……かと思えば急に暴れ出したりして……」
ああ、そういえば私の絵を描かせたいと彼に言われたっけ。女性の絵を描くのが得意な画家だとかいってたわね。けど、アレは裸体だったわよ。てっきり何時ものように熱い時間を過ごすものだとばかり思っていたからビックリした。折角、例の香水を付けていたっていうのに!
「……彼は将来を嘱望された画家だったな。君、僕が詳しく聞こう。サリー、申し訳ないが今日は送っていく事が出来ない」
「えっ!?」
何?
私を放っておくの?
「御者には伝えておくから、いいね」
優雅に微笑んでいるけど拒否権はないのね。
「……はい」
「良い子だ。この埋め合わせは近いうちにするよ」
「ええ」
その後、彼と別れて帰省した。
彼があの女をどう説き伏せたのかは知らないけど、あれ以来、女を見る事はなかった。彼も女の存在などなかったかのように振る舞うので聞くに聞けない。まるでそんなことは無かったかのように普通に過ごしている。私もあえて聞かなかった。
足りない何かを理解したから――
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