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第16話:入学式当日を迎えました

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「ねえ、制服姿、変じゃないかしら?」
真新しい制服に身を包み、鏡の前に立つ。

「いいえ、とてもよく似合っていらっしゃいますよ。それにしても、何とも羨ましいスタイルですわね…」

「シャティ、何か言った?」

「ええ、何でもありません。はっきり言って、女神さまの様な美しさです。やはり修道院での生活が良かったのでしょう。出るところはしっかり出て、引き締まるところはしっかり引き締まっていらっしゃいます。まさに完璧ボディでございます」

「別にボディが完璧でなくてもいいのよ。問題は中身ね」

「中身も問題ありませんわ。きっと王太子殿下をギャフンと言わせられる日も近いかと」

「ありがとう、シャティ。あなたにそう言ってもらえると、なんだか自信が出て来たわ」

「さあ、そろそろ朝食のお時間です。旦那様や奥様も、お嬢様の制服姿を楽しみにしていらっしゃいますので、早く食堂へ」

シャティに促され、食堂へと向かう。

「セイラ、おはよう。制服姿、とっても良く似合っているわ。何て素敵なのでしょう」

「本当だ。この美しい姿を見たら、あんな噂など吹き飛ぶだろう」

「あなた!セイラ、何でもないのよ。さあ、食事にしましょう」

慌てる両親をよそに、隣で必死に笑いを堪えているお兄様。相変わらず性格が悪いわね。そう思いつつも席に着き、朝食を頂いた。私の食事は、パンとスープ、それから果物も食べる。

食後は再び身だしなみを整え、いざ、馬車へ。両親に見送られ、貴族学院へと向かう。向かいにはお兄様が座っている。

「セイラ、お前緊張しているのか?俺は楽しみでたまらないがな」

相変わらず嫌味な男ね。

「別に緊張などしておりませんわ。ただ、貴族界を随分と離れておりましたので…」

うまく振舞えるか少し心配なだけだ。

「大丈夫だ、お前は無駄に馴れ馴れしいからな。さあ、学院に着いたぞ。きっと馬車に注目が集まっているぞ。噂の公爵令嬢の姿を拝めるかどうかってな。さあ行くぞ、セイラ」

満面の笑みで馬車から降りるお兄様。その後に続く。馬車から降りるとお兄様が言った通り、皆がこちらを見つめていた。そして私を見るなり、皆固まっている。中には口をぽかんと開けている人や、目玉が飛び出るのではないかと言うくらいこちらを凝視している人も。

チラリとお兄様を見ると、肩を震わせ笑いを必死にこらえている。こいつ…やっぱり失礼な奴だわ。とにかく挨拶をしておくか。

「皆様、おはようございます。今日からよろしくお願いしますね」

マナー教育で培った渾身のカーテシーを決め、入学式の会場でもあるホールへと向かう。後ろから

「おい、誰だよ。セイラ嬢が見るも無残な姿になっているって言ったやつ。どう見ても女神だろう」

「何だあの美しさは。それになんだか傲慢な雰囲気もすっかり消えているぞ」

「ねえ見た?あのセイラ様が、私たちに挨拶をしたわよ。それも敬語で」

あなた達、興奮するのはわかるけれど、声が大きくて丸聞こえよ。そう言いたいが、もちろんそっとしておくことにした。

ホールに入ると、やはり皆私を見て固まっている。そんな中、スタスタと歩き席に着いた。そんなに驚かなくても…そう思ったが、まあ1年半近く社交界から姿を消し、酷い噂が流されていたのだから、当然と言えば当然か。

壇上の上に登って行ったお兄様は、相変わらず肩を震わせているし…ふとお兄様の隣を見る。水色の髪に紺の瞳、間違いない。にっくきライムだわ。1年半ぶりに見るあの男は、少し背が伸びて大人びた印象を受けるが、他はあまり変わっていない。

待っていなさい、あなたを絶対にギャフンを言わせてやるんだから。その時だった、ライムと目が合ったのだ。その瞬間、大きく目を見開き固まるライム。本当はフンとそっぽを向いてやりたいが、微笑んでそのまま会釈をした。その瞬間、なぜかライムがプイっとそっぽを向いたのだ。

何なのよ、あの態度!ムカつくわね。その後もずっと俯いているライム。まあいいわ、今日はまだ入学式だものね。まだ時間はたっぷりある。

その後式は滞りなく進み、生徒会長でもあるお兄様の挨拶、そして新入生代表でもある、ライムの挨拶と続いた。なぜか挙動不審なライム。あの人、あんな人だったかしら?ふとお兄様の方を見ると、やっぱり肩を震わせている。

あの人、今日は笑ってばかりね。まあ、別にいいけれど…

入学式が終わると、各自クラスに向かう。基本的に身分の高さでクラス分けされている為、ライムと同じクラスだ。ちなみにライムも婚約者候補でもある、サリー様とフェミナ様も一緒だ。

教室に向かうと、やはりここでも注目の的だ。そんな中私に話しかけて来たのは、なんとライムだ。

「セイラ、久しぶりだね。しばらく見ない間に随分と雰囲気が変わったね」

「ライム殿下、お久しぶりです。殿下には以前、不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」

ゆっくりと頭を下げた。その姿に目を大きく見開いて固まるライム。そんな私たちに割って入って来た女性2人。サリー様とフェミナ様だ。
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