上 下
14 / 53

第14話:少女に出会いました

しおりを挟む
グリーンズ王国に来て早3ヶ月。すっかり地下の生活にも慣れて来た。さらに毎日ジルド殿下たちと一緒に地上に出ている為、攻撃魔法もそれなりに上手に扱えるようになってきた。

食糧も毎日家族から届くため、もう空腹に悩まされることはない。もちろん他の地下に避難している人たちにも、定期的に食糧を配っている。ただ、王都だけでもかなり広く、まだまだ食糧を配り切れていないところもあるのだ。

魔法陣を使って配ればいいのだけれど、魔法陣は特殊な魔法で、あちこちに描きまくる訳にはいかない。下手をすると、魔物を魔法陣越しに呼び出してしまう事もあるのだ。とにかく、大変でも自分たちの足で、食糧を届けている。

今日も朝から、ジルド殿下たちと一緒に地上に出て、食糧を配る。相変わらず沢山の魔物がいるが、何とか攻撃魔法でしのぐ。

「ジャンティーヌ殿はすっかり攻撃魔法が上手に扱える様になったね。この前もドラゴンを1匹倒しただろう?本当に凄いよ」

優しい眼差しで私を褒めてくれるのは、ジルド殿下だ。

「ありがとうございます。でも、まだまだですわ」

そう、私はまだ自分の魔力をコントロールでき切れていない。もっともっとコントロールできるようになって、皆の手助けをしないと。

そう思っている時だった。1人の少女が目に入った。10歳くらいかしら?食べ物を探しているのか、壊れた建屋に隠れながら、辺りを物色している。

ただ…

「グワァァァ!」

近くにはドラゴンの姿が!

「危ない!稲妻!」

少女めがけて襲い掛かって来るドラゴンを、稲妻で一気に倒す。悲鳴を上げて倒れ込むドラゴンを横目に、急いで少女の元へと向かった。

「あなた、大丈夫?怪我はない?」

ガタガタと震えている少女を抱きしめた。

「助けて頂き、ありがとうございます」

相当怖かったのだろう、目に涙を浮かべながらも、必死に笑顔を作っている。

「あなた、食糧を探していたのでしょう?ここは危険だわ。あなた達が隠れている地下に、案内してくれるかしら?必要な分の食糧を提供するから」

地上は非常に危険なのだ、だからこそ、隠れ家に向かい食糧を手渡すことにしている。

「本当ですか?こっちです」

嬉しそうに少女が地下に案内してくれた。廃墟の奥を進み、地下へと繋がる扉を開けた少女は、そのまま奥へと入って行く。そして小さな洞窟の様な場所に、少女よりも小さな子供たちと、怪我をした両親の姿が。

「「おねえちゃん!!」」

子供たちが嬉しそうに少女に抱き着いている。そうか、この子は怪我をした両親に代わり、食糧を探していたのね。

「リマ、よかった。無事だったのね。あの方たちは?」

「この人たちは食糧を持ってきてくださった騎士様たちよ。本当にお強いのだから」

「そうでしたか、ありがとうございます」

私達に頭を下げる母親。早速食糧を提供した。そして私の治癒魔法で、両親の傷も治す。

「傷が奇麗に…本当にありがとうございます!」

「ありがとうございました!食糧を頂いただけでなく、怪我の治療まで行って頂けるだなんて。…あなた様は、ジルド殿下ですよね?」

父親の方が、ジルド殿下に気が付いた様だ。

「はい…あの…私たちのせいでこの様な過酷な環境を強いてしまい、本当に…」

「どうか謝らないでください。あなた様たち王族が、命をかけて私たちの為に動いて下さっている事を、私達平民は知っております。それに陛下たちに非があったとは、私共は思っておりませんわ。魔女が全て悪いのです。殿下、どうかご自分を責めないで下さい」

父親が必死にジルド殿下に訴えている。

「ありがとうございます…」

毎回食糧を届けるたびに、殿下はこうやって民たちに謝罪をしている。ほとんどの人たちがこうやって温かく迎えてくれるのだ。

きっとジルド殿下とシルビア殿下が素敵な人だからだろう。

「さあ、皆さま、お腹が空いているでしょう。しっかり食べて下さい。これからは定期的に食糧を届けますので、どうかここからあまり出ない様にしてくださいね」

きっとお腹ペコペコだろう。早く皆に食べて欲しくて、食糧を進めた。皆久しぶりの食事なのか、嬉しそうに食べている。

「こんなにお腹いっぱい食べられたのは、初めてだよ。本当にありがとう、お姉ちゃん」

そう言って子供たちが微笑みかけてくれた。

「どういたしまして。それじゃあ、私たちはまだ食糧を届けないといけないから、これで失礼するわね」

そう、私達にはまだまだ食糧を待っている人たちがいるのだ。すると、先ほど助けた少女が私の元へとやって来たのだ。

「あの…本当に色々とありがとうございました。私はリマと言います。あなた様のお名前は?」

「私はジャンティーヌよ」

「ジャンティーヌお姉様ね。ジャンティーヌお姉様、とても素敵でしたわ。これ、お礼です」

そう言うと、見た事のない形の美しい石を私の首にかけてくれたのだ。なんだかしずくの様な形をしている。

「この石は、邪悪な者から守ってくれる石なんです。お姉様が魔物にやられませんように」

そう言うと、それはそれは可愛らしい笑顔を見せてくれたリマ。

「ありがとう。でも、そんな大切な物、私がもらってもいいの?」

「ええ、もちろん。ジャンティーヌお姉様は、私たちの恩人だから」

恩人か…

そっと首からぶら下がっている石に触れた。

「ありがとう、この石、私の宝物にするわね」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

オメガバースな異世界に転移した僕はαの親友とツガイになる

M
BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:57

今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:31,205pt お気に入り:3,447

邪魔者王女はこの国の英雄と幸せになります

恋愛 / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:1,595

悪妃の愛娘

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:981pt お気に入り:3,174

You're the one

BL / 完結 24h.ポイント:576pt お気に入り:62

私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,822pt お気に入り:95

処理中です...