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第7話:ハリー殿下と夕食を食べます

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「それでは、私はこれで失礼いたします。そうそう、王宮魔術師のところにいった事は、殿下には内緒にしておきましょう。“俺の為にそこまでしなくてもいい”と言われそうですので。それでは、どうぞゆっくりとお過ごしください」

私を部屋まで送ってくれたグラス様。そのまま部屋から去って行った。確かにお優しいハリー殿下なら、そう言いかねない。王宮魔術師のところに行っている事は、内緒にしないと。

さて、これから何をしようかしら?魔力欠乏症はもう調べ終わったし…

そうだわ、せっかくだから本でも読もう。実は私、恋愛小説が大好きなのだ。早速王宮図書館に向かい、いくつかの恋愛小説を貸してもらった。

部屋に戻り、ルルに入れてもらった紅茶を飲みながら本を読む。恋愛小説を読むと、つい自分もヒロインになった気持ちになる。いつか私も、私だけを愛してくれる人が現れないかしら?

そんな夢を見てしまう。でも…
ついダーク様の事を思い出す。結局私の元婚約者は、美しいセリーヌお姉様を選んだのよね…

気が付くと、瞳から涙が溢れていた。

やだ、私ったら。よく考えたら私の様な人間が、あんなにも素敵な男性に愛される訳がないじゃない!それなのに、一時的でもダーク様に大切にされているなんて思っていたなんて、本当にバカよね。

溢れる涙を必死に拭う。
とにかく今は、私の魔力を必要としてくれているハリー殿下の治療に集中しよう。たとえどんな理由であろうと、私を必要としてくれているのだ。その事実だけが、今の私を支えてくれている。

そうよ、今は私を必要としてくれる人の為に生きよう!それが私の生きる意味でもあるのだから!そう決意した。

その時だった。ルルが私の部屋にやって来たのだ。

「カトリーナ様、そろそろ夕食のお時間です。どうぞこちらへ」

あら?昨日も今日もこの部屋で食事をしていたのだけれど…一体どこに行くのかしら?

疑問に思いながらも、ルルに付いて行く。向かった先は、ハリー殿下の部屋だ。部屋に入ると、ハリー殿下が待っていた。

「ハリー殿下、一体どうされたのですか?もしかして、魔力が足りないのですか?すぐに魔力を送りますね」

「イヤ…そうじゃなくて…」

何かを言いかけていたハリー殿下の手を急いで握る。スッと魔力が吸収される感じはあるが、すぐにそれも治まってしまった。あら?魔力が足りていない訳ではなかったのかしら?

不思議に思い、ハリー殿下の方を見ると

「魔力が足りなかったわけではなくて…その…一緒に食事をしようと思っただけなんだ」

少し恥ずかしそうに、殿下がそう言った。まあ、そうだったのね。ヤダわ、私ったら早とちりしてしまったのね。

「申し訳ございません」

急いで頭を下げた。

「気にしなくてもいいよ。それより、早速一緒に夕食を食べよう」

必死に頭を下げる私の手を掴むと、そのまま椅子に座らせてくれた。目の前には、豪華な料理が並んでいる。どうやら本当に食事に誘ってくれた様だ。

早速お料理を頂く。やっぱりこの国のお料理は、とても美味しいわね。つい夢中で食べてしまう。

「カトリーナ嬢は、とても美味しそうに食べるんだね。朝はあまり食べていなかったから、心配していたんだ」

ふと顔をあげると、優しい眼差しで私を見つめるハリー殿下と目が合った。今、心配していたと言っていたわね。私を心配してくれていたの?この私を?

目頭が熱くなり、溢れそうになる涙を必死に堪える。

「ありがとうございます。元々食べる事が好きなので。ただ、朝はあまりお腹が空いていなかったので…」

「そうだったんだね。それならよかった。おかわりも出来るから、遠慮なく食べてほしい。そうそう、今日は何をして過ごしていたんだい?王宮内は退屈ではないかい?」

今日か。今日は王宮魔術師に会いに行った。でも、この事は内緒にするのだったわね。

「今日は王宮図書館に行って、本を借りて来て読んでおりましたの。王宮図書館にはたくさんの本があるので、飽きませんわ」

「君は本が好きなのかい?どんな本がすきなんだい?もし読みたい本があったら言ってくれ。すぐに取り寄せるから」

「ありがとうございます。でも、図書館には読み切れない程の本があるので、大丈夫です」

あそこには、恋愛小説だけで1つの本棚を埋め尽くすぐらいあった。きっと一生かかっても、読みきれないだろう。

おっと、私の話しばかりしていてはダメよね。

「ハリー殿下は何をされていたのですか?」

「俺かい?俺は久しぶりに竹刀を振るったよ。それから、勉学に励んだりもした。君のおかげで、今までできなかった事が出来るようになった。本当に君には感謝しているよ」

竹刀に勉学か…きっととても真面目で優秀な方なのだろう。

「私は溢れそうな魔力を提供しているだけですので。それに何より、私の様な人間でも誰かの役に立てる事が嬉しいのです。どうかこれからも、遠慮せずに魔力を受け取ってください」

「“私の様な人間”なんて、言わないでほしい…俺にとって君は…命の恩人なのだから…」

命の恩人か…

「ありがとうございます。そう言って頂けると、嬉しいです」

「さあ、少し話し込んでしまったね。食事の続きをしよう」

「はい」

その後もたわいもない話しをしながら、食事を楽しんだのであった。
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