30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
846 / 1,578
第8章 南部動乱編

膠着

しおりを挟む
「まあでも、エンノアもワディンも私たちに不信感を抱いている感じじゃないわよね。いつも親切だし」

「そいつぁ、俺も感じるぞ。けどよぉ、どうにも居心地が良くねえんだわ」

「……そうね」

「メルビンさん、どうする? このままここを拠点にして調査を続けんのか?」

「……」

「それとも、いっそ離れちまうってのは?」

 仕事を終えていない状況でエンノアを離れても、また戻る必要がある。
 その場合、理由を探すのが厄介だ。
 やはり今の段階では離れるべきではない、か。

「しばらくは、この地を拠点にしてテポレン山の調査を続ける。その方針に変わりはない」

「……そうかい。あんたがそう言うなら、俺も従うしかねえわ」

「私も従うわよ」

「ああ、お前たちのことは信用している」

「俺も信頼してるぜ、メルビンさん」




*********************




 魂替から2日が経過。
 特に問題は起こっていない。
 セレス様も無事だ。

 ということは……。

 あの宴での4時間を切り抜け、喫緊の死地を越えたと。
 前回の不吉な流れから脱したと。

「……」

 時間遡行によるやり直し。
 いつも考えてしまう。

 その際に前回の現実が強制力を持つのか?
 強制とは言わないまでも、多少の因果律は存在するのか?
 どうしても気になってしまう。

「……」

 遡行のたびに思い浮かぶのは魔落後のやり直し。
 最初にセレス様を失った後、続けて同じ経験を強いられた。
 死を逃れることができなかったあの時間。

 強制力は存在する、因果からは逃れられない。
 そう感じたものだ。

 けれど、セレス様はあの死地を切り抜け、今もこうして無事に過ごせている。
 そこに強制力のようなものは感じられない。

 つまり、今回も因果を越えたと考えていいだろう。
 無駄に怯える必要はないってことだ。
 
 ただし、問題は残ったまま。
 同一犯だと推定しても先に進めない状況の中、誰とも知れぬ襲撃者がエンノアに存在しているはず。

 なのに、襲撃どころかあやしい行動すら見られない。
 毒、呪い、魔法、物理的行為、そのいずれの予兆もまったく。

「……」

 今は、こちらから動きがたい状態。
 警戒だけをして時間を過ごすことになっている。

 俺の言葉を信じてくれたヴァーン、シア、アル、ディアナ、ユーフィリア。
 そんな彼らでも、このまま警戒を続けるのは簡単じゃない。

 セレス様の死を目にしていない彼ら。
 襲撃の兆しが何ひとつ見えない状況で、緊張感を保てというのが無理な話だ。
 気が緩むのも仕方ないことだと思う。

 ただ、犯人はそれを狙っているのかもしれない。
 好機を窺っているのかもしれない。

 好くない状況だな。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。 (早くない?RTAじゃないんだからさ。) 自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。 けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。 幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。 けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、 そもそも挽回する気も起こらない。 ここまでの学園生活を振り返っても 『この学園に執着出来る程の魅力』 というものが思い当たらないからだ。 寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。 それに、これ以上無理に通い続けて 貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより 故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が ずっと実りある人生になるだろう。 私を送り出した公爵様も領主様も、 アイツだってきっとわかってくれる筈だ。 よし。決まりだな。 それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして…… 大人しくする理由も無くなったし、 これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。 せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。 てな訳で……… 薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。 …そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、 掲示板に張り出された正式な退学勧告文を 確認しに行ったんだけど…… どういう事なの?これ。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。 王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。 なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。 自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。 11月14日にHOT男性向け1位になりました。 応援、ありがとうございます!

処理中です...