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第一章 エルフの少女

54話 「時は流れて」

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ドライアドの森の戦いから10年の月日が流れた・・・

その間にイリスの身長は5cmも伸びた。つまり、まだまだ幼児のままだ。
イリスも諦めて特に何も言わなくなっていた。

《イリス・・・こんなに、5cmも大きくなって・・・》

「やかましい!!」訂正、やっぱり気にしている様子だ。

この10年間のイリスは・・・めっちゃクレアにこき使われていた。
本当に北は南に東へ西へと、やれ魔物の討伐だの、やれ親善の使者だのと。

不思議な事にゴルド王国や魔族は目立つ動きをしなかった。
油断させる罠の可能性が大なのでより一層監視は強化しているが。

変わった事と言えば、ピアツェンツェア王国のクレマン国王が何を血迷ったのか、
イリスに正式な婚姻の打診をして来た。

イリスはラーデンブルク首都から7500kmの旅を経てクレマン国王を思い切りブン殴って速攻で逃げて帰って来た。

その後、ピアツェンツェア王国の宰相から「ナイスパンチ!」との書状を頂いた。
大丈夫か?あの国。

これで中央大陸の覇者だと言うから恐ろしい。

「イリス・・・そう言う事をするからアイツに好かれるんだよ?」

「なんで?!」

ガストンの謎の言葉が気になったが相手にしたくないから何も聞く事はなかった。
いや!絶対に聞いてはならぬ!との神の御告げがあったのだ。

《ところでエルフと海龍って子供が出来るのかしら?》

「気色悪い事を言わないで!シルフェリア!」

なんか不安になったシルフィーナが気になってコッソリと地龍王クライルスハイムに尋ねた所・・・「彼奴とイリスに関しては絶対に無理じゃ」との事。
良かったね!イリス!絶対に無理だってさ。

しかし・・・

ブリックリンとイリスなら条件次第では可能との事、えっ!なんで?!

これは龍種が古い産まれか新しい産まれかで変わるとの事だった。
と言う事はクレマンは古代龍種なのだ。

ちなみにシルフィーナとガストンではどうか?と尋ねた所・・・
「普通に可能、むしろ相性は良い」
と聞いて表情は変わらなかったが内心はもうウッキウキのシルフィーナだった。

どうやらシルフィーナはシルフェリアやシルヴァーナの様に完全な精霊と違いかなり人間、亜人に近い存在との事だ。
竜人族とも少し違う様だが、かなりレアな存在らしい。半精霊半亜人?

じゃあ何で竜の姿なのか?そう尋ねると父親が母親と結婚する為に天龍種から精霊になったからだそうだ。

多分、母親が亜人と関係あるとは思うが会った事が無いので直接聞いて見よとの事。
今後、実家に帰ったら詳しく聞いて見ようと思ったシルフィーナだった。

じゃあじゃあ、シルフェリアやシルヴァーナとガストンとでは?
もう完全に恋愛脳全開のシルフィーナが尋ねたら・・・
「かなりの下準備が必要になるがギリギリ可能」との事だ。

こんな感じの話しを3時間も付き合ってくれる地龍王も優しいね!

そんな日々の中でイリスにまた新しい任務が来る。

「東の大陸の調査ですか?」

現在の東の大陸は魔物の楽園だ。
海龍と天龍が少し手を加えているがジャングル地帯が多くて亜人もほとんど住んでいない未開拓の地だ。

「うむ、どうやら最近見慣れぬ街が出来た様でな、ひとっ飛び見て来てくれぬか?」
この様にクレアの指示は結構大雑把なのだ。実際に見て判断する感じだ。

「安全を確認出来れば繋ぎをつけて見て貰えるとありがたい」
要するに仲良く出来そうなら話しをして来てくれ。との事だ。

「危険がありそうなら?」

「すぐに逃げろ、別にそこまで東の大陸に手を伸ばす必要性はないからな」

「分かりました」
と答えたとは言え何も情報が無いので東の大陸の事を精霊に聞いて見る。

「東の大陸ですか?精霊は「火」の精霊が多いですわ」
精霊が東の大陸と聞いたら先ずは「火」を連想するらしい。

《東の大陸は活火山が多いんです》

「あっ、なるほどー」

「ノイミュンスター様なら詳しかったんだけどね、産まれ故郷だから」
火山と言えば地琰龍ノイミュンスターだが、やはり関係があったのだ。

「火の精霊が多い地域で街を作れるほどの魔物なら「ゴブリン」や「オーガ」とかじゃないでしょうか?」
ガストンも世界中を旅していたから知識量は膨大なのだ。

「えっ?ゴブリン?!」

そうよくエルフの天敵と言われているあのゴブリンだ。
エルフを捕まえて、アハンやウフンな事をやらかすあのゴブリンだ。
これにはイリスも嫌悪感を全開にさせる事だろう・・・

「う~ん?ゴブリンなら特に問題ないかな?でもなんで東の大陸に?」

《そうですね、なぜそんな場所に街を作ったのかは気になりますね》

あれ?なぜかイリスやシルフェリアにも特にゴブリンに対して嫌悪感は感じられない、これはなぜに?

「ゴルド王国の圧政から逃げたとも考えられます」
ガストンの考察では北の大陸に住んでいたゴブリンやオーガ達がゴルド王国や魔族に圧迫されて南方へ追い出されたと言う物だ。

「ゴルド王国・・・あいつらならやりそうだよね」

《でもそれなら、放っておいてあげた方が良くないですか?》

「確かに人族の顔は見たくないかもだね」
もしそうなら彼らは人族に敵対心を持っているので落ち着くまで待った方が良い?
とのシルフェリアとブリックリンの意見だ。

「クレア様も逃げて良いと仰っているので遠目から様子見がメインですわね」

「そうだねぇ」

今回はシルフィーナの言う通り遠方から霊視で覗き、彼らを刺激しない方針で決まったのだった。
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