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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

36話 「迫り来る世界大戦の足音」その1

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御披露目舞踏会は我を忘れた主人公が大いに楽しみ倒して一応は成功した。

「イリスよ・・・晩餐会では大人しくな?」

「はーい」昨晩の舞踏会では、調子ブッこいてやり過ぎた自覚があったイリス。
めっちゃ可愛いらしく返事をして誤魔化す。
これでクレアには通用するのがイリスにも不思議な事なのだ。

暴走姫に苦笑いのクレアから軽く嗜められて次の日の晩餐会へ挑むのだ!
しかしコイツは何か行動を起こす時は必ず「挑む」のだな・・・

今回の晩餐会は武官達との会食なので話題は世界の軍事的情勢がメインになった。

そんな話題をお姫様の前で無粋な!と普通はなるのだが、イリスもバリバリの武官なので寧ろ積極的に会話に参加している。

成長しても全然大人しくならぬなコイツ。
寧ろシルフェリアの件を乗り越えてから図太くなりおったか・・・
まぁ・・・大人しいイリスはつまらんのだがな!

「やはり中央大陸の混乱が酷いですね」
兎にも角にも世界情勢の不安定さの原因は中央大陸に起因していた。

「ヴァンパイアから聞いたのですがピアツェンツェア王国が滅びたとの事です。
あの国は、どの様な経緯で滅亡に至ったのですか?」

話題を振った国防大臣の侯爵は現在厳重に緘口令を敷いているはずの特級機密の「ピアツェンツェア王国の滅亡」を知っていたイリスに大分驚いた表情をした。

それにヴァンパイア?ってなんだ?

そう思ったが、「まぁ・・・この姫だから」と妙に納得し気を取り直してピアツェンツェア王国の滅亡の経緯の説明を始める。

「分かり易く言うとゴルド王国の調略で寝返った者が多く王都周辺の維持を断念して首脳陣は元々の拠点の東部に後退したのです」

「なるほど・・・まだまだ挽回の余地があるのですね?
聞く所だとゴルド王国は健全とは言えない国家なのに何故そんなに支持を受けているのです?」

イリスは前から不思議に思っていたのだ。
民を顧みず周辺の国を侵略しまくる国家に何故多くの者達が集まるのか。

「帝国主義の観点から言うとゴルド王国は一部の者には旨味の多い国家です。
金や物資を国に入れるだけ自身が出世出来ますからね。
ゴルド王国の場合は、この者が金や資源などをどの様な手段で得た物か・・・
完全に無視していますが・・・」

つまり領民から搾り取った金だろうが誰かを貶めて得た金だろうが金は金と言った考えの国だ。

悪徳が好きな者からすればやりたい放題出来てしまうのだ。
しかし自分も逆くに同じ事をやられる可能性も高い修羅の国だ。

「帝国主義とは・・・」帝国主義に対し非常に不愉快な表情をしたイリスに別の武官が慌てて補足を入れて来る。

「帝国主義自体は害悪ではありません。
国内を急速に発展させる能力は共和制を超えますから。
それにヴィグル帝国などは、汚職や簒奪などの面では非常に厳しく各領主を監視しています。
なので国民からの支持は非常に高く治安も良いです。
ゴルド王国が帝国主義を履き違えているだけなのです」

民主主義っぽいヴィグル帝国に帝国主義っぽいゴルド王国・・・
名前を交換した方が良くね?とか思っているイリス。

「でも帝国主義ならヴィグル帝国も周辺国に侵略を行うのでしょう?」

「相手に明確な敵対意思があればヴィグル帝国も侵攻しますが、この数年は周辺国との協力を全面に出して内政重視のスタイルを貫いています」

「西の大陸、西部地域は完全にヴィグル帝国の支配権になり安定しています。
それを面白く思っていないゴルド王国が北の大陸の「魔族」と手を組みちょっかいを掛けていますがヴィグル帝国は其れらを悉く跳ね除けていますね」

「へえ?ヴィグル帝国って強いんですね?」

「あそこは「勇者」がゴロゴロと居ますからね、戦闘力では人族の国の中なら世界一です。
魔族にとって天敵の様な国なんですよ。
そこでゴルド王国と手を組んで対ヴィグル帝国戦線を組んでいます」

「・・・・・・・・」

「イリス?ヴィグル帝国へ行くなんて許さないからね?」

ヴィグル帝国に修行の旅に出ようかなぁ?とか考えてたイリスに隣に座っていたホワイトがガッツリと釘を刺しておく。

「何で分かったの?!」

「イリスの行動パターンはだんだんと分かる様になっているわよ?」

「ええ~?私ってそんなに分かり易いかなぁ?」

「いいえ?何だかんだでイリスはポーカーフェイスだし最初は何を考えているのか全然分からなかったわ。
少なくともクレアの方が単細胞だわね」

「酷いのじゃ?!」

めっちゃショックのクレア・・・人はそれを「可愛いらしい天然」と呼ぶ。
クレアのこの天然の可愛いらしさが人々を惹きつける魅力なのだがな。

「いずれにせよラーデンブルク公国の方針は「不干渉」よ。
人間の難民等が来た場合には即座に東の大陸へと護送します」

ホワイトの発言に頷く参加者達。
非情の様だがこれは致し方ない。
下手な干渉はゴルド王国や魔族を刺激する事になるからだ。

それに東の大陸は「天龍」が管轄しているのでラーデンブルクに来るよりは安全かも知れない。

後は素直にゴブリンなど亜人の言う事に従えるのか?だ。
これは個人の資質に左右されるのでラーデンブルク公国としてもそんな事まで面倒は見切れない。

「もしゴルド王国側が東の大陸に攻めて来たらラーデンブルク公国はどうするおつもりなのでしょう?」

イリスダンジョンが東の大陸にある以上は気になる事柄だ。
仮にラーデンブルク公国が動かなくても救援に赴くつもりのイリス。

「ゴルド王国軍が東の大陸に入った時点でデッドラインを超えたと判断してラーデンブルク公国はゴルド王国に宣戦布告をします。
これは外交筋を通して相手方に通達している決定事項です」

「ええ?!」思わず声を出してしまったイリス。
イリスの見立てでは、仮にイリスダンジョンがゴルド王国から攻撃を受けてもラーデンブルク公国は動かないだろうと予測していたからだ。

まさか全面戦争をやるつもりだったとは思わなかったのだ。

「うむ、イリスよ・・・情勢は大きく動いておる。
東の大陸がゴルド王国に落ちると色々と面倒な事になるのじゃ」

なぜ急にラーデンブルク公国が方針転換したか?
その理由がクレアから語られる。







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