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19 婚約!?結婚!?
「日奈子。お茶を買っておいてね。なかったわよ」
「う、うん。ごめんなさい」
水和子お姉ちゃんは体調が戻ったのか、金曜日の朝には元気になっていた。
お茶は重いし、土曜の買い出しに行く時はリュックタイプのレジ袋を持って行こう。
今日は我慢してもらって……。
買い物メモに買うものを書きだしながら、冷蔵庫を眺めた。
作り置きの本を見て勉強してからは冷凍庫や冷蔵庫にいろいろ常備菜を置いて置けるようになったから、平日が楽になった。
これも壱哉さんのおかげだよね。
頭がいい人はこうやって時間を作るのかな。
水和子お姉ちゃんは足取り軽やかに出勤して行った。
元気になったみたいでよかった。
けれど、杏美ちゃんが言っていた言葉がずっと胸にひっかかっていた。
『私も現場を見たんだけど、あれはつまずいたふりをして、お兄様に支えさせたのよ』って、どうして水和子お姉ちゃんがそんなことをしたんだろう。
それがわからなかった。
お姉ちゃんは昔から優秀でなんでもできて、私と違って大人からも信頼されていて、壱哉さんの隣にいつもいた。
水和子お姉ちゃんに勝てるわけなくて、みんな身を引いて行った。
それは私だけじゃない。
周りの女の子達全員がそうだった。
いつも最後に残ったのは水和子お姉ちゃんだけ。
敵うわけがないんだけど……。
そう思いながら、迎えに来てくれる壱哉さんを見るとその気持ちが粉砕されてしまうから不思議だ。
「おはようございます」
「おはよう」
いつもの黒塗りの車に運転手さんじゃなく、壱哉さん自らが運転していた。
「今日は運転手さんじゃないんですね」
銀のメルセデスベンツに乗った壱哉さんは運転する姿もカッコいい。
神様ありがとうございます。
朝からこんなごほうびを。
「今日、日奈子に話したいことがあって」
「はい」
どこか固い声の壱哉さんに私は真面目にうなずいた。
「夜、食事に行かないか?」
「えっ!?わ、私とですかっ」
「他に誰がいるんだ……」
確かに。
私しか車に乗っていない。
「夕飯は作らなくて大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。作り置きしてありますから、母にメールしておきます」
冷凍庫にカレーと冷蔵庫にはマリネサラダが入っているから、あとはインスタントのコーンスープを出してもらえば、夕飯は大丈夫なはず。
「そうか、よかった」
ホッとしたように壱哉さんは言った。
壱哉さんでもそんな緊張気味に言うことがあるんだなぁと思いながら、その横顔を盗み見ていた。
でも、話ってなんだろう。
会社に着くと、社員が壱哉さんに近寄ってきた。
「おはようございます。専務。ご結婚が決まったそうでおめでとうございます」
けっ……結婚――――!!!!
「結婚式は六月だとか」
「そうらしいですね」
まるで他人事みたいに言っている。
もしかして、今日の食事は『結婚することになったんだ。さようなら、日奈子』的な!?
やっと恋してもいいんだってなった所にいきなり『完』みたいな?
くらっと眩暈がした。
終わった……終わったよ。さよなら、私の恋。
「杏美さん、おめでとうございます」
あ、杏美さん!?
「安島常務、おめでとうございます」
安島常務?
ハッとして、会社の入り口を見るとにこにこした安島常務と機嫌の悪い杏美ちゃんがいた。
「あ、杏美ちゃんが結婚っ!?」
「そうよ、ドン子。お先に」
そう杏美ちゃんは言ったけど、少しも嬉しそうじゃなかった。
表情も固いし。
「卒業したら結婚って話だったけど、働いてみたくて無理を言って入社したのよ。そしたら、婚約者の秘書でしょ?働くも何もないわよ」
「婚約者!?」
安島常務を見ると頷いていた。
「友達に教えてないのか。杏美が高校生の頃からの婚約者だよなあ?」
「高校生の頃から……」
「そういうことだから、結婚式に招待してあげるわね。友達として」
友達という単語を杏美ちゃんは強調して言った。
「う、うん」
気づくと、壱哉さんのスーツの端を握っていた。
ハッとして、手を離すと優しい眼差しで私を見下ろしていた。
「俺が結婚すると思ったのか」
「えっ!?はあ……とんだ勘違いをしまして」
「本当にな」
ふっと笑って私の背中を押した。
微笑んだ壱哉さんが珍しかったのか、安島常務は目を見開いて壱哉さんの顔を凝視して、それを見た杏美ちゃんも笑っていた。
「う、うん。ごめんなさい」
水和子お姉ちゃんは体調が戻ったのか、金曜日の朝には元気になっていた。
お茶は重いし、土曜の買い出しに行く時はリュックタイプのレジ袋を持って行こう。
今日は我慢してもらって……。
買い物メモに買うものを書きだしながら、冷蔵庫を眺めた。
作り置きの本を見て勉強してからは冷凍庫や冷蔵庫にいろいろ常備菜を置いて置けるようになったから、平日が楽になった。
これも壱哉さんのおかげだよね。
頭がいい人はこうやって時間を作るのかな。
水和子お姉ちゃんは足取り軽やかに出勤して行った。
元気になったみたいでよかった。
けれど、杏美ちゃんが言っていた言葉がずっと胸にひっかかっていた。
『私も現場を見たんだけど、あれはつまずいたふりをして、お兄様に支えさせたのよ』って、どうして水和子お姉ちゃんがそんなことをしたんだろう。
それがわからなかった。
お姉ちゃんは昔から優秀でなんでもできて、私と違って大人からも信頼されていて、壱哉さんの隣にいつもいた。
水和子お姉ちゃんに勝てるわけなくて、みんな身を引いて行った。
それは私だけじゃない。
周りの女の子達全員がそうだった。
いつも最後に残ったのは水和子お姉ちゃんだけ。
敵うわけがないんだけど……。
そう思いながら、迎えに来てくれる壱哉さんを見るとその気持ちが粉砕されてしまうから不思議だ。
「おはようございます」
「おはよう」
いつもの黒塗りの車に運転手さんじゃなく、壱哉さん自らが運転していた。
「今日は運転手さんじゃないんですね」
銀のメルセデスベンツに乗った壱哉さんは運転する姿もカッコいい。
神様ありがとうございます。
朝からこんなごほうびを。
「今日、日奈子に話したいことがあって」
「はい」
どこか固い声の壱哉さんに私は真面目にうなずいた。
「夜、食事に行かないか?」
「えっ!?わ、私とですかっ」
「他に誰がいるんだ……」
確かに。
私しか車に乗っていない。
「夕飯は作らなくて大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。作り置きしてありますから、母にメールしておきます」
冷凍庫にカレーと冷蔵庫にはマリネサラダが入っているから、あとはインスタントのコーンスープを出してもらえば、夕飯は大丈夫なはず。
「そうか、よかった」
ホッとしたように壱哉さんは言った。
壱哉さんでもそんな緊張気味に言うことがあるんだなぁと思いながら、その横顔を盗み見ていた。
でも、話ってなんだろう。
会社に着くと、社員が壱哉さんに近寄ってきた。
「おはようございます。専務。ご結婚が決まったそうでおめでとうございます」
けっ……結婚――――!!!!
「結婚式は六月だとか」
「そうらしいですね」
まるで他人事みたいに言っている。
もしかして、今日の食事は『結婚することになったんだ。さようなら、日奈子』的な!?
やっと恋してもいいんだってなった所にいきなり『完』みたいな?
くらっと眩暈がした。
終わった……終わったよ。さよなら、私の恋。
「杏美さん、おめでとうございます」
あ、杏美さん!?
「安島常務、おめでとうございます」
安島常務?
ハッとして、会社の入り口を見るとにこにこした安島常務と機嫌の悪い杏美ちゃんがいた。
「あ、杏美ちゃんが結婚っ!?」
「そうよ、ドン子。お先に」
そう杏美ちゃんは言ったけど、少しも嬉しそうじゃなかった。
表情も固いし。
「卒業したら結婚って話だったけど、働いてみたくて無理を言って入社したのよ。そしたら、婚約者の秘書でしょ?働くも何もないわよ」
「婚約者!?」
安島常務を見ると頷いていた。
「友達に教えてないのか。杏美が高校生の頃からの婚約者だよなあ?」
「高校生の頃から……」
「そういうことだから、結婚式に招待してあげるわね。友達として」
友達という単語を杏美ちゃんは強調して言った。
「う、うん」
気づくと、壱哉さんのスーツの端を握っていた。
ハッとして、手を離すと優しい眼差しで私を見下ろしていた。
「俺が結婚すると思ったのか」
「えっ!?はあ……とんだ勘違いをしまして」
「本当にな」
ふっと笑って私の背中を押した。
微笑んだ壱哉さんが珍しかったのか、安島常務は目を見開いて壱哉さんの顔を凝視して、それを見た杏美ちゃんも笑っていた。
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