私達は結婚したのでもう手遅れです!

椿蛍

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番外編

おねだりじゃないです!

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私達は結婚しました!
声を大にして私は言いましょう!
私が妻だとっ。
冬悟さんの周りに女性が集まっている。
胸も大きいし、美人揃いだし、ドレスが似合うスレンダーな人達。
女の私ですら、うわぁ、華やかですねぇ……(絶望)てなるくらいレベルが高かった。
そんな中でも冬悟さんの美しさは別格だった。
モテモテだってことはわかっていました。
妻として広い心で立ち向かおう。
そう思っていた―――けどっ!
ベタベタと遠慮なしに冬悟さんに触っている。
ここがそういうお店だってことは百も二百も承知ですよ?
でも、私(妻)の目の前でよくもそんな触れますね……!?
ぶるぶると怒りで拳を震わせていると、お店で一番偉い人らしき人が私に近づいてきた。
着物姿の色っぽい女性で目の下の泣きぼくろがまたセクシーだった。
私ににこやかに微笑みかけた。

「あなたが嶋倉の正妻さんね。これから大変だろうけど、頑張ってね」

大人の女性であることと身長差もプラスされて、私に語りかけるその姿が子供の目線におりてみよう。みたいなCMになっている。
しかも、なんですか。
今の発言。
聞き捨てならない。
正妻って言いましたよね?
その言葉に私はカチンときて、声を大きくして言った。

「正妻も愛人もありませんっ!冬悟さんには私一人なんですー!」

店に響き渡る私の声。
冬悟さんと竜江さん、仙崎さんは私を一斉にみた。
冬悟さんが笑って私に近寄った。

「そうだな。羽花」

ぐっ!子供扱い。
『可愛いな、嫉妬かな』そんな声が聞こえてくるようだった。
でも、冬悟さんが離れていった女の人達の悔しそうな顔を私は見逃さなかった。
やっぱり、わかってわざとしていたんだー!
礼華さんがいなくなったけど、冬悟さんの周りには女の人の影があとを立たない。
これは浮気、浮気案件じゃないですか!?

「違うぞ」

私の心を見透かしたかのように冬悟さんから否定された。

「車に戻る。竜江、仙崎」

二人はうなずき、すばやい動きで前と後ろに立つ。
ボディガードみたいだけど、実際はそのとおりで、なにかと恨まれやすい冬悟さんの身を守っている。
車に戻るとむうっと膨れっ面のままだった私の顔を冬悟さんが覗き込んだ。

「羽花。機嫌悪いな。嶋倉の関係者に紹介して回っているだけだろう?」

「そうですね」

刺々しい口調に冬悟さんは眉をひそめた。
妻として、ここでハッキリさせておかなくちゃいけない!
週刊誌に書いてあったんだから!

相談者Aさん『結婚してから、彼は変わりました。結婚前はお前だけだよ、なんて言ってたのに夜のお店に通っていたんです!まだ新婚なのにどうしたらいいですか?』

相談者Bさん『結婚する前は家事を分担しようって優しく言ってくれた彼。でも、実際は違ってました。私は彼に言うべき?』

武士もののふの母『仕事で夜のお店に行ったかもしれません。少し冷静になってから、お互いの顔をみて話し合ってみましょう。感情的にはならずに自分の気持ちを正直に言ってみましょう』

武士の母『最初が肝心といいます。鉄は熱いうちに打て!協力的な夫になるようしつける気持ちでいきましょう。また頼むときはお願いを頭につけると効果的です。命令口調にはならないよう気を付けましょう』

竜江さんが暇潰しに買っている週刊誌だった。
いつも社長室の椅子の上に忘れてあったり、机の上に置きざりにされている。
それを片付ける時にこっそり毎号読んでいた。
特にこの相談コーナーが妻として参考になる。
そう思っているのは私だけじゃないらしく、武士の母相談コーナーの雑誌のページ数が増えていた。

「冬悟さんは女の人から触られすぎですっ!」

「あれくらい別に」

「べ、別に!?」

冬悟さんに怒りそうになった私は思い出していた。
武士の母の言葉を。
『お互いの顔を見る』
『自分の気持ちを正直に言う』
『頭にお願いをつける』
実践するのを忘れていた。
さっそく実践してみようと、冬悟さんの顔をじっと見つめた。

「なんだ?」

ふっと冬悟さんが微笑んだ。
これは正解だったみたいです。
さすが武士の母。
えーと、次は頭にお願いのセリフをつけて自分の気持ちを言うでしたね。

「お願い、冬悟さん。私、冬悟さんが好きなんです」

目を合わせ、ぎゅっと冬悟さんのシャツの袖を握った。

「わかった」

「んっ!?」

気づくとキスをされ、押し倒されていた。
ま、ま、ま、まさかぁー!
このまま車の中で?
仙崎も竜江さんもいるのに!?

「まっ……まってください!なにしてるんですか?」

「おねだりしたのはそっちだろ?」

「ちがっ、違います!」

あ、あれー!?今の私の言い方が悪かったの?
違うって言っているのに冬悟さんは何度も角度を変えてキスをする。

「んっ、やっぁ……や、やめてください!」

涙目になった私の体を起こすと悪い顔をして笑った。

「ここまでにしておいてやるよ。まだ行く場所が残ってる」

仙崎さんと竜江さんは私と目を合わせず、『なにもみてませんでした』という白々しい態度をとっていた。

「ひどすぎます……」

よろよろとしている私に冬悟さんがくすりと笑う。

「羽花が悪い。見つめられてお願いされたら、応えたくなるだろう?」

武士の母の言葉通りにしたのにおかしい。
なにが悪かったのかな。
竜江さんが笑いをこらえているのが見えて、そこでやっと気づいた。
もしかして、武士の母は竜江さんの罠?
こうなることをわかってた!?

「続きは帰ってからな?さて、まだ挨拶回りがある―――」

冬悟さんが私の耳元に唇を触れさせた。

「羽花へのごほうびに一ヶ所終わるごとにキスをしてやろう。腰が抜けるくらいのをな」

「や、やめてください!そんなのされたら、私っ!」

絶対に心臓がもちませんよーっ!

「羽花はおねだりがうまいな」

満足そうな冬悟さん。
天使のような微笑みなのに私には悪魔のように見えた。
武士の母に相談しようと心に決めた。

『愛情表現が重い夫をどうすればいいですか?』と。

私の挨拶回りはまだ続く―――

 
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