私達は結婚したのでもう手遅れです!

椿蛍

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番外編

相談者A.Tさんへ

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いつもの週刊誌が『どうぞお読みください』とばかりに社長室のソファーに置いてあった。
これは私に読めということでしょうか。
新しい号の雑誌が置いてあった。
週刊誌だけあって発売が早い。
パラパラとページをめくった。

『大物芸能人Xと女優Yが離婚か!?」
『初夏のおでかけコーデはこれで決まり』
『おすすめ温泉旅行』

今回の見所はこんなところでしょうか。
今日は冬悟さんは朝から会議でいない。
時計をチラリと見る。
そろそろ戻ってくるだろうか。
いつもの『武士もののふの母』のコーナーを開く。
もう癖になっているような気がする。
だいたい雑誌のどの辺に『武士の母』のコーナーがあるかわかってしまう。

「今週の母はなにかなぁ」

わくわくしながら、質問を読む。

相談者A.Tさん『彼女のことが好きで、つい高級ホテルや高い贈り物をしてしまいます。けれど、その気持ちが重いと言われました。俺は彼女に尽くしているつもりなのですが、どうすれば俺の気持ちは伝わりますか?』

最近、採用率が高いA.Tさん。
お金持ちみたいですね。
A.Tさんの彼女はしっかり者でA.Tさんはそんな彼女に頭があがらない。
そんなところでしょうね
うんうんとうなずいた。
『武士の母』の回答は。

武士《もののふ》の母『確かに女性は贈り物を喜ぶ傾向があります。それは悪いことではありません。ですが、高価なプレゼントを申し訳ないと思う女性がいるのも事実。彼女の負担にならないような好意の示し方をしてみてはどうでしょうか』

素晴らしい回答だった。
わかりますよ。
私も冬悟さんに贈り物をされると心苦しく思っってしまうタイプだし。
でも、冬悟さんはそんな私を察して自然な流れでプレゼントをしてくれる。
それが冬悟さんのすごいところっていうか、私のことをわかっているっていうかっ―――(以下省略)

「羽花?」

「わっ!」

いつ会議から戻ってきたのか、冬悟さんが私の目の前にいた。

「ご、ごめんなさい。サボっていたわけじゃないんですけど、つい」

「いや、いい。その雑誌、最近よく見るんだが、人気なのか?」

ドキッとした。
さすが冬悟さん。
めざとい。
冬悟さんの背後にいた竜江さんが慌てて前に回り込んだ。

「暇潰しで買ってるだけっすよ。運転手をしていると冬悟さんを待ってる時間とかあるでしょ。そんな時にパラパラっと読んでるだけなんで深い意味は……」

「なんだ。買っているのは竜江なのか」

「ま、まあ」

竜江さんはこくこくとうなずいた。

「羽花は興味ないだろ?そんな雑誌」

「そんなことないです!けっこう参考になるんですよ」

「参考に?」

冬悟さんが怪訝そうな顔をした。
しまった……
うっかりと本心を口にしてしまった。
正直すぎましたね。

「え、えーと、例えばこの初夏のコーデページとか、料理とか、温泉とか」

「温泉に行きたかったのか。じゃあ、週末、温泉に行くか?」

「いえっ!そうじゃなくっ!」

「なんだ?温泉嫌いだったか?」

「嫌いではないです」

あまり温泉は行った事がないから、むしろ行きたい、
でも、ハネムーンも控えているのに温泉旅行なんて贅沢すぎる。
どんどん墓穴を掘っている気がする。
このままじゃ、私が投稿していたこともバレるのでは!?
いっそ、バレるのであれば―――

「この相談者のページが面白いんです」

隠すことができず、すっと冬悟さんの前に差し出した。
冬悟さんと一緒にこのページを楽しんだ方がいい。
私はそう判断した。

「わああああっ!」

竜江さんが急に雑誌の前に飛び出した。

「ああ、俺も読んだ」

さすが冬悟さん。
すでに把握してましたか。
冬悟さんにもなにかきっと悩みが―――

「特に参考にはならなかったな。そもそも、女に重いと言われるということは男として、まだまだだってことだろう?」

「「そうなんですか!?」」   

私と竜江さんの声がハモった。
冬悟さんが竜江さんを見る。

「あ、いえ。俺じゃないっすよ?あー、そうなんだなーって思っただけなんで。そんなパターンもあるんだな。なるほどー(棒)」

「まあ、プレゼントを断られる時点で好かれているかどうかは怪しいがな」

「マジですか!?」

ちょっとみただけでさらっと答えてしまう冬悟さん。
さすがだなあと思っていると、竜江さんは悲しい顔をしていた。
どうしたんだろう。

「冬悟さんはやっぱり頼りになりますね」

「そうか?」

「はい」

パラパラと雑誌をめくった。
『夫の浮気診断。いくつ当てはまるかやってみよう』
むむっ!?
これは!

「冬悟さん!」

「なんだ?」

「いまから質問をします!覚悟してください」

「覚悟ってなんの覚悟だ」

「いいからっ!答えてくださいね?」

「わかった」

夫の浮気を暴くと書いてある。
これに五個以上あてはまるとクロらしい。

「自宅以外に帰る場所がある」

「まあ、嶋倉本家があるから、イエスだな」

「プレゼントの趣味がいい」

「悪くはないと思うが」

「記念日でもないのにサプライズを用意している」

「毎日が特別だろ」

すでに三つ!!
私はキッと冬悟さんをにらんだ。
これは激しくクロに近い?

「妻に内緒ででかけることが多い」

「……そんなことはない」

少し間があった。
これはイエスですね。
イエスにカウントしておこう。

「冬悟さん。リーチですよ?」

「リーチ?なんのリーチだ」

「夫が浮気をしているかどうかです」

冬悟さんが私の手から雑誌を奪い、竜江さんに叩きつけた。

「おい。竜江。今すぐその雑誌を焼却してこい」

「えっ!?でも、懸賞つきクロスパズルをまだやってないんですよ?」

「灰にしろ」

「りょ、了解」

冬悟さんの迫力に負け、竜江さんは雑誌を抱えて社長室から出ていった。
二人だけになると冬悟さんが凶悪な笑みを見せた。

「なぁ、羽花。俺が浮気するような男にみえるか?」

「い、いえ。まったくっ!」

リーチだったことも忘れ、首を横に振った。
どんっと机に押し倒された。

「どれくらい俺が羽花を好きかわかってないようだな」

「ま、ま、待ってくださいっ!ここは会社っ!会社です!」

「だから?」

冬悟さんがネクタイをはずした。
色気たっぷりだけど、今はその色気はまずいですっー!
ど、どうしたら!
走馬灯のように雑誌のテーマが頭に浮かんだ。
『女優』『初夏コーデ』『温泉』
これだあああ!

「冬悟さん!お、温泉っていいですよね」

「そうだな」

「やっぱり私、温泉に行きたいなって。初夏の温泉もいいですよねっ」

女優のように私は演じた。

「温泉に行きたいなら行きたいと素直に言えよ。わかった。予約する」

あっさりと私から体を離し、にっこりと冬悟さんは微笑んだ。
それも満足そうに。
あ、あれ。
もしかして、温泉に行きたいと言わされた?

「さて、予約するか」

すごく手際のいい冬悟さん。
まさか、これを狙って!?
相談者A.Tさんに教えてあげたい。
冬悟さんが私にくれるものは断ることのできないプレゼントばかり。
全部、先回りされてしまう。
私の力ではどうにもできない。
A.Tさん……これが本物の重い愛かもしれませんよ……?
予約が終わった冬悟さんが嬉々として、スケジュール帳に温泉旅行と書き足していた―――
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