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序章
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しおりを挟むあれから直ぐにオズワルド帝国から出発することはできなかった。当然といえば当然のことではあるのだが。
国王が外交で動くとなれば、それなりの人員が必要になる。しかし飛竜車はそれほど数が有るわけではない。しかも二国の重要人物が動くとなればある程度の数の護衛を連れて行かないというわけにもいかず、飛竜車で連れていける人数は限られていた。そうなるとどうしたって人数を分けなければならず、飛竜車で行くことのできない大半の随行員や騎士たちは陸路でアドリア王国に向かうことになる。
陸路であれば、オズワルド帝国内を3日、国境を越え2日でアドリア王国の王都に辿り着くのだという。
既にラティーロ王国の王都ルルテラからオズワルド帝国の帝都ディーラまで一週間かかっているが、もともと初めての外交先となるアドリア王国に向かうため、スケジュールには余裕を持たせてあった。
だから急な滞在も問題にはならない。イライアスの父などいきなり休暇になって嬉しいとまで言っていたくらいだ。しかしそうは言っても他国で遊んでいるわけにもいかず、近場の街へ視察に行ったり、お茶会や夜会に呼ばれたりと中々に忙しい日々を結局送ることにはなったのだが。
それでも二人の皇子と馬術訓練と言って遠乗りに出かけたり、出発まで時間ができてしまった飛竜たちを見学しにいったりすることもできたのでイライアスとしては満足度は高かった。特に飛竜を操る竜人の中に、イライアスと同じくらいの年代の少年がいて、飛竜について色々と質問して辟易とさせてしまったけれど、少し仲良くなれたのは嬉しかった。
そしてようやく待ち遠しかった出立する日が来る。
◆ ◆ ◆ ◆
アドリア王国王都であるアドリアは、空から見るととても綺麗な街並みに見えた。
同乗している外務大臣の秘書インセントが言うには、王城の周囲にはまず三つの門があるのだという。
王城と王族の住む離宮や内政府、元老院がある場所が第一門。この第一門の内側に魔導士や魔術師たちのいる魔導騎士団や近衛騎士団、第一と第二騎士団が東西南北に配置され、一部の高位貴族の屋敷もあるらしかった。第二門には低位貴族の屋敷や貴族相手に商売をしている大店の店が構えられ、第三門は平民たちが暮らしているという。もちろん第二門や第三門内に居を構える高位貴族もいるらしいのだが、それはごく一部らしかった。
「なぜ一々塀で区切っているのだろうね?」
説明を聞いていたイライアスは、少しばかり不思議そうにそう呟く。
「なぜだと思われますか?」
そう問われてイライアスは、むうと口を引き結んだ。なぜならその言い方が、イライアスの先生たちのようであったからだ。
勉強を始めたばかりのころは、先生たちもイライアスの「何故、なに、どうして」に一つ一つ答えを返してくれていたように思う。けれどいつからかイライアスの質問に対して、先生たちは一様に、「どうしてだと思います?」と返してくるようになったのだ。
別に意地悪をされているわけでないことくらいはイライアスにも分かっている。ちゃんと自分で考えろということなのだろう。
だがまさか、こんな場所でもそう言われるとは思わなかったのだ。それにふとした疑問にそう返されてしまうと、なんと答えたらいいものか分からなくなってしまう。
それに、貴族と平民を完全に分けているみたいで嫌な感じだと思ってしまったから、なんとなく口に出すのは憚られたのだ。
なぜなら、自分の発言が他者に与える影響を考えてから意見は口にするように、とラティーロや周辺諸国の歴史を教えてくれるマジオ老師に口酸っぱく言われているからだ。しかも歴史書にもあまり詳しいことが乗っていないような他国の王族の醜聞をぼそぼそと口にしながらだから、自分も何かへまをしたら他所で語られてしまうんじゃないかと怖くなる。だからイライアスは余計なことは言わないようにしているのだ。
だからこの時も特に何も言いはしなかった。
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コメントとかあらすじとか苦手なんですよね~。でもタイトルとか考えるのは好き。
今年は色々と大変だった方もいらっしゃると思います。そんな年も残りわずか。
来年もまだまだかもしれませんが、元気に頑張って生きましょう!
応援ありがとうございます!
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