全てを失った私を救ったのは…

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一喝

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全身土まみれの私に、更に追い打ちをかけるように頭上から大量の土が降ってくる。
ベチャ…ベチャ…と音を立ててながら付く様を伏した状態で見聞きしていた。
そんな時だった。

「おい、そいつは違うぞ。次当てた奴は俺が切り刻む」

ニコルの声は投げ込む民衆の耳にハッキリと届き、ピタっと手が止まった。

「いや、しかし、コイツはニコル様を襲ったと聞きました」
「そうだ!俺も聞きました!」

民衆の声は段々大きくなり、私達をいますぐにでも断罪するべきだ!と提案し、皆それに賛同し始めていく。

「うるさいっ!?黙れ!?」

ニコルの怒りの口調に民衆は萎縮し、持っていた土を地面へボトボトと落としていった。

「そいつは俺の妻になる者だ、如何なる罵倒も許さん。もしする者がいたら俺が首と胴体を分けるぞ?」

腰に携えた宝剣の柄を右手で掴み、ガラガラとゆっくり引き抜き始め、刃が半分ほど現した時には民衆は皆静まり返り、膝をついて頭を下げていく。
その様子を見渡すと、ニコルはガチャっと音を上げながら現した刃を鞘に納めた。

「おい」

近くにいる衛兵に地面に伏した私を立たせるように命令すると、慌てた様子で私に近づき、そして両肩を支える様に立たせていく。

「……リース、すまないな」

私はその謝罪の言葉に反応を示さず、伏目がちで背を丸め、ただ聞いていた。

「あの、ニコル様、先程の言葉は本当でしょうか?」

衛兵がニコルに問いかけるが、『だからなんだ?』と軽くあしらい、私を馬に乗せるように言う。
皆が見る中、土まみれの私はニコルが乗る青鹿毛の馬の鐙に足を掛けると下から衛兵にグイっと押され馬上に腹這う形で乗せられた。

「落ち着いて足をこちら側に回せ」

すぐ側にいるニコルの声は先程の怒りはなく、優しく穏やかな感じに聞こえた。
だが、馬に乗った事がない私は上手く足を回す事ができず、もがくのがやっとだった。
そんな私を見るなり左手で腰辺りを持ち上げ、そこに生まれた空間から右足を回せとニコルは言った。
必死にもがきながら足を右側の鐙に回すとようやく私は馬に跨ることが出来た。

「それで良い」

私の後ろから聞こえる声。
言葉を放つたびに私の髪は揺れ、付いた土が少し前方へと飛んでいった。

「あ、あの…」
「なんだ?」
「私がいたら服が汚れてしまいます。それに、馬も」
「気にするな、替えなど幾らでもある」
「それと……」
「まだあるのか?なんだ、ハッキリと言え」
「妻とは、どういう意味ですか?」
「そのままの意味だ、お前は俺の妻として屋敷に連れて行く。不服か?」

馬上で振り向く事が出来ず、どんな顔で言ってるのか確認が取れなかった。

「答えないという事は了承したと捉えるぞ」

ニコルは馬の腹を蹴り、ゆっくりと歩かせていく。
それを見た衛兵達は付き添う形でニコルについて来る。
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