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がつ子、道草を食う
10.
しおりを挟む樹子はベッドのヘッドボードにクッションを置き背中を預けた。服を脱ぎ裸になった広居主任を背後から抱く。
「力、抜いて体重をこちらに預けてください」
「や、そういうわけにも。重いだろう」
「だいじょうぶですって。リラックスしてください。――ね?」
「ん」
溜め息とともにゆっくりと体に重みがかかった。ずっしりとくることはくるが、想像していたほどでもない。視線は合わないのに密着していつもより顔が近くにあるのが新鮮だ。樹子はうなじに頬ずりしながら囁いた。
「寒くありませんか?」
「ん、平気」
逞しい肩越しの眺めはきっと主任の普段の視界に近い。いったんクールダウンして甘勃ちサイズになった肉棒が少し遠く見える。
「いつも、どんなふうにオナニーするんですか?」
躊躇いが残るらしい主任のほんのり赤らんだ耳に口づけて自慰を促す。
「握ってこする、だけ……」
「見たいです。見せて、主任」
おずおずと大きな手が肉棒を握る。二度、三度上下した手が止まった。
「やっぱり、恥ずかしい……」
「どうして? 気持ちよくなってるとこ見られるの、厭ですか?」
普通、厭だろう。分かっていながら見られて嬉しいはず、恥ずかしがるほうが不思議だといわんばかりに
ちゅ。ちゅ。
耳を唇で愛撫しながら主張する。
「お仕事のときのきりっとしている主任も素敵ですけど――、それってみんなの主任じゃないですか」
「みんな、の――」
「そう。でも主任がえっちになるのを見られるのは、私だけ」
今だけは――。
ひやりと心の隙間に忍びこむ冷たいものから樹子は目を逸らした。
れ、り。
耳殻に舌を這わせる。
「それに、私――後ろにいますから主任のお顔、見えませんよ」
見たいといいながら見えないなど、めちゃくちゃだ。だけど嘘ではない。背後から密着する樹子から主任の顔がぜんぶ見えているわけではない。横顔程度のものだ。ただし、主任の手の中で甘勃ちから完勃ちまでむくむく大きくなった肉棒は見えている。
「安心して気持ちよくなってください」
「ん」
大きな手がゆっくりと上下しはじめた。手の動きが大胆になるにつれて、主任の息が荒くなる。
男だとか女だとかに限らず、自慰を初めて見た。
――あんなにこすって、平気なんだろうか。
俯きバナナと化し何かとくったりしてしまう繊細な肉棒がごしごしごりごりこすられていて気が気でない。途中から耳への愛撫を忘れ、樹子は見入ってしまった。しばらく無言のまま手が上下するさまを見つめていると密着している大きな背中が強張り
「っ! く……」
力が脱けた。
だが、射精はしていない。大きな手の中の肉棒はまだ力を失っていないように見える。
「――駄目、だ。あと少しだったんだが、いけない」
「見せてくださって嬉しい。ありがとうございます」
赤く染まった耳から頬へ口づけるうちに広居主任が振り向いた。
ちゅ。ちゅ。
唇を重ねる。ついばむように口づけた。
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