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31話

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 私達は冒険者ギルドのある街に到着して、中に入っていく。

 アゼルの後ろを着いていきながら、私は辺りを見渡して呟く。

「冒険者ギルド……中に入ったのは始めてです」

「この冒険者ギルドは酒場と併設している。依頼書を手に取りながら食事をして話し合っているから、常に賑わっているようだ」

 確かに……テーブル席には武装した人達が多くて、報酬やモンスターの話をしている。

 私は今まで平和に暮らしてきたけど……それも全て、冒険者の人達や兵士達のお陰だと実感できるわね。

 アゼルに着いて行くと、冒険者ギルドのカウンターへ向かっていた。

 どうやらランクで分けられているようで、一部の受付は行列ができているけど、アゼルが向かっている受付は人が誰も居なかった。

「冒険者はランクが低い者が大半で、それに合わせてカウンターが用意されている」

 低ランクの人達は順番待ちをしているけど、到着したカウンターには誰も待っていない。

 アゼルの関わる上位の冒険者用の受付に驚いていると、受付でアゼルが話をしていた。

 そして――カウンターの奥に案内されて通路を歩き、私は前を歩くアゼルに尋ねる。

「あの、どこに向かっているのですか?」

「俺の知り合いの部屋だ。最上位で拠点にしている冒険者パーティは個室が与えられる……部屋に居たのは運がよかった」

 冒険者はランクが上がると優遇されるとは聞いていたけど、ギルド内に個室が与えられるようね。

 常に冒険者ギルドを行き来するのだから、そこで暮らした方が楽そうな気がする。

 緊急事態の時に即座に動けそうだと考えながら、私はアゼルに尋ねる。

「アゼルも個室を用意されているのですか?」

「いや、話はあったが断った……隠れて冒険者をしている証拠になるからな」

 それはつまり、アゼルはそこまで凄い冒険者ということになる。

 私はアゼルの凄さを知れて嬉しくなりながら、冒険者の人達に会うこととなっていた。
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