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24話 王子視点
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「……バラド殿下は、まだフロンに未練があるのですか」
宰相の報告を聞き、フロンを消す計画が失敗したことに安堵した。
そんなバラドを眺めて、隣にいたコリサの様子がおかしくなる。
「ど、どうした……俺はフロンを側室にしたいが、コリサが妻なのは変わらない!」
本心を漏らしながら宥めようとしたバラドに対して、コリサが肩を強く掴んでくる。
ミシミシと体が悲鳴をあげるほどの力を受け、バラドは激痛に動揺するしかない。
「ぐぅっっ!? なぜ――」
「――そんなの、未だにフロンに対して未練があるからに決まっています」
その発言と同時に、バラドの体が椅子から浮く。
ベッドの上に投げ飛ばされたようで、痛みから解放されるがコリサに見下される形となる。
今までと同じ無表情なのに威圧感があり、バラドは立ち上がることができない。
「ラミカ様と違い、私はバラド殿下だけを愛しています……それでも、リスが飼い主ではなく、他の人に興味を持てばいい気分ではないでしょう」
「リス? 飼い主? コリサは何を言っている?」
「リスとはバラド殿下のことです。例えに相応しいでしょう」
信じられない発言を耳にしたバラドは、はじめて見るコリサの笑顔に全身を震わせる。
今まで優しくしてきたのも、ただ小動物として可愛がっていただけだというのか。
対等だと思っていたのはバラドだけで……ラミカと違い一途ではあるが、コリサも非魔法士を見下していた。
「……俺の頼みも、小動物のお願いという認識だったということか」
「はい。ラミカ様の本性を知ってから怯えるバラド様は素敵でした。私も護った甲斐があるというものです」
「そうか……はは、そうだったのか……」
バラドは自分の立場を自覚し、それでもコリサを嫌いにはなれない。
婚約者となってから今までの日々は楽しかったのに、内心では見下されていたと知ってしまう。
惨めだと自覚し、今のバラドはコリサから見限られればどうなるのかわからない。
「結婚式の前にフロンの名前が出た時も嫌でしたが、今回はそれ以上です……やはりフロンは、どんな手を使ってでも排除するしかなさそうですね」
「そうだな。フロンさえ消えてくれれば、俺はコリサのことしか考えられなくなるだろう」
フロンとは再会して元の関係に戻りたかったはずなのに、抗えない力でバラドの考えが変わる。
愛せなくてもフロンは王妃になれるのだから、従っていればこんな状況にはならなかった。
もう好きではなくなったコリサからは離れることができず、フロンを思い出すだけで理不尽な目に合ってしまう。
それなら消した方がいいと、バラドはコリサに協力することを決意した。
宰相の報告を聞き、フロンを消す計画が失敗したことに安堵した。
そんなバラドを眺めて、隣にいたコリサの様子がおかしくなる。
「ど、どうした……俺はフロンを側室にしたいが、コリサが妻なのは変わらない!」
本心を漏らしながら宥めようとしたバラドに対して、コリサが肩を強く掴んでくる。
ミシミシと体が悲鳴をあげるほどの力を受け、バラドは激痛に動揺するしかない。
「ぐぅっっ!? なぜ――」
「――そんなの、未だにフロンに対して未練があるからに決まっています」
その発言と同時に、バラドの体が椅子から浮く。
ベッドの上に投げ飛ばされたようで、痛みから解放されるがコリサに見下される形となる。
今までと同じ無表情なのに威圧感があり、バラドは立ち上がることができない。
「ラミカ様と違い、私はバラド殿下だけを愛しています……それでも、リスが飼い主ではなく、他の人に興味を持てばいい気分ではないでしょう」
「リス? 飼い主? コリサは何を言っている?」
「リスとはバラド殿下のことです。例えに相応しいでしょう」
信じられない発言を耳にしたバラドは、はじめて見るコリサの笑顔に全身を震わせる。
今まで優しくしてきたのも、ただ小動物として可愛がっていただけだというのか。
対等だと思っていたのはバラドだけで……ラミカと違い一途ではあるが、コリサも非魔法士を見下していた。
「……俺の頼みも、小動物のお願いという認識だったということか」
「はい。ラミカ様の本性を知ってから怯えるバラド様は素敵でした。私も護った甲斐があるというものです」
「そうか……はは、そうだったのか……」
バラドは自分の立場を自覚し、それでもコリサを嫌いにはなれない。
婚約者となってから今までの日々は楽しかったのに、内心では見下されていたと知ってしまう。
惨めだと自覚し、今のバラドはコリサから見限られればどうなるのかわからない。
「結婚式の前にフロンの名前が出た時も嫌でしたが、今回はそれ以上です……やはりフロンは、どんな手を使ってでも排除するしかなさそうですね」
「そうだな。フロンさえ消えてくれれば、俺はコリサのことしか考えられなくなるだろう」
フロンとは再会して元の関係に戻りたかったはずなのに、抗えない力でバラドの考えが変わる。
愛せなくてもフロンは王妃になれるのだから、従っていればこんな状況にはならなかった。
もう好きではなくなったコリサからは離れることができず、フロンを思い出すだけで理不尽な目に合ってしまう。
それなら消した方がいいと、バラドはコリサに協力することを決意した。
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