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第三章
(22)舞踏会なのに
しおりを挟むはっきり言って、オクタヴィアお姉様はとても美人だ。私としては世界で一番お美しいと思っている。
でも、なぜかいつも自信が足りていない。
その自己評価の低さが、完璧な美人を見た人が勝手に抱く「高慢な女」という印象を完全に消し去っているのは確かなんだけど。
ちょっと伏し目になっていたりすると、どこか幸薄さが漂うというか、物憂げで思わず手を差し出してあげたくなるような絶世の美女になっている。
いいこととは言えないかもしれないけど、これはこれで最高だと思う。
……でも王都の男どもは、お姉様が密かに悲しげなため息をつくのを遠巻きにして見ているだけだった。あり得ない。
もしかして、王都の男は全員目が節穴なの?
私が男で、血縁のない金持ちだったら、絶対にその場でプロポーズするのに。金がなくても、相応しい地位につけるようにと死に物狂いで成り上がってみせる。
そして、顔と生まれだけは抜群にいいクズ男の手から救い出す!
まあ、実際は私は女で、妹という一生ものの地位を神様からいただいているんですけどね。
私は王宮の舞踏会に来ていた。
もちろん、世界で一番お美しいオクタヴィアお姉様と一緒だ!
ローナ様も同行してくれていて、王宮に向かう馬車の中はとても和やかで楽しかった。
「女性だけで楽しそうだけど、私も混ぜてもらいたいな」
会場に着くと、調子のいいことを言うお姉様の婚約者と合流することになったんだけど、潤んだ目で私を見つめてくるクズ男なんて無視ですよ、無視。
この調子で最後まで無視したかったのに、オクタヴィアお姉様はお父様の代理でもある。いろいろな人に挨拶に行ってしまったから、私はクズ男と一緒に取り残されてしまった。ローナ様がいるからまだましだけどね。
本当はローナ様がいるから、もう少し我慢しようと思っていた。
でも、私は見つけてしまったのだ。会場の向こうに食べ物コーナーがあることを!
気付いてしまった私は、すぐに動いた。
クズ男の様がローナ様と話をしている一瞬の隙をついて、逃げてやったよ!
ふふん。私は領地で狩りの技を磨いていた。だから、人間の知覚から逃れるくらい楽勝なのだ。
無事に脱走した私は、鼻歌混じりに食べ物コーナーに向かった。
予想通り、そこは天国だった。お洒落で美味しそうな食べ物がずらりと並んでいる。どれも男性の大きな口なら一口。女性たちがお上品に食べても五口以内で食べ終わりそうだ。
私なら二口かな。でも今日はドレスで完全武装中だから、五口で挑みたい。
まずは軽いものから!
……と思ったのに。
「アズトール伯爵のご令嬢ですよね? 初めまして。私はローディル子爵の嫡男のカーヴィルと言います」
「僕はステイド伯爵の三男ダルシムです。オクタヴィア殿もお美しいが、あなたはまるで妖精のようだ。どうか、一曲踊ってくれませんか?」
まさに、お皿に手を伸ばそうとしたのに声をかけられてしまった。そのまま、密かに不機嫌になった私の周りに若い男性たちが集まっている。
オクタヴィアお姉様には目もくれなかったのに。……本当に、なぜなの?
それに、この人たち、なぜ私の素性を知っているんだろう。
お姉様と一緒にいたから?
それなら、お姉様と一緒にいた時に声をかければいいのに。お姉様の美貌を間近から堪能して、ついでに知性に触れることのできる絶好の機会だったのに、何やってるの?
……というかさぁ。
今から軽食を楽しもうとしているのはわかるよね? 乙女の食事なんだから、しばらく見て見ぬふりくらいしてよ……。
うんざりしながら、どう対応しようかなと考えていると、黒髪を肩上で切りそろえたお洒落な男性がやってきた。
私と目が合うと、品のいい、でもちょっと皮肉っぽい笑みを浮かべた。
あ、なんだか見覚えがある人だ。
えっと、確か……ゼンフィール侯爵邸でいきなり庭の散歩に誘ってきた人だ。
なんとか伯爵様で、名前は……忘れた。
「無粋な君たちは控えたまえ。私が先に誘うつもりなのだから」
「ボルドー伯爵。ご令嬢はまだお若いのですよ? いきなりあなたのようなご年齢の方と踊るなんて……いや、失礼」
名前を思い出そうと密かに考え込んでいた私の横で、男性たちが勝手に会話を始めたと思ったら……え?
なぜそこで睨み合いが始まったの?
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