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ー雪山ー40

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  その時望の部屋のドアが開かれる。

「望、雄介! 朝ご飯出来たぜ!」

 そう朝から元気のいい和也。 だが望が着替えている姿を見てしまい「まずい!」とでも思ったのか、

「ゴメン……」

 と一言だけ言うと部屋のドアを閉めるのだ。

「……ったく、何で、アイツ気を使ってんだ? ただ俺が着替えてただけなのにさ」

 望はそう雄介に漏らしながら着替えを終える。

「ま、そうやねんけどな」

 望のその言葉にはクスクスとしたようなのだが、どうやら和也の気持ちも察しているのかもしれない。

「え? なんだよ。 何か俺が悪い事でも言ったのか? だってさ、和也と俺は親友みたいなもんだろ? 別にいいじゃねぇのかな?」
「ま、まだ、望はよう和也の事分かっておらんみたいやね」
「はぁ!? 何言ってんだ? 何和也の事分かってるような事言ってんだ? 俺なんかより和也といる時間が短いのにさ」
「何……朝からキレとんねん」

 そうボソリと呟くと雄介は頭を掻きながらため息を吐く。

「うるせぇなぁ!」

 望はそこ言うと望は雄介の所まで行って何でか分からないのだが、襟首まで掴んでしまっている望。

「何で、テメェにそんな事言われなきゃなんねぇんだよ!」
「ちょ……はぁ!? ホンマ、今日の望……なんか変やぞ? それこそ、どないしたん? 俺からしてみたらホンマ意味が分かれへんねんけどなぁ」

 今までこんな事はなかった筈だ。 今日の望は何だか様子が変な気がしてたまらない。 何がどうして望がキレてしまっているのかさえ分からない状態の雄介。 そんな望に戸惑ってしまっている。

「何か、すっげぇ……ムカつくんだよなぁ!?」
「はぁ!?」

 本当に今の望は言葉も言動も何が何だか分からない。

 雄介は望が掴んでいる手を襟首から離すのはいとも簡単な事だ。 だけど雄介はただ望の事を見つめるだけで留めている。

 そして今の望はどうしてしまっているのか!? というのを探っているのかもしれない。

「……ってか、今日の望……ホンマどないしたん?」

 そう雄介は真剣に聞いてみた。

「ただ、お前の言葉が癇に障っただけだ……それでムカついたっていうのかな?」
「はぁ!?」

 本当にその言葉だけで望の事をここまで怒らせたというのであろうか。 それだったら本当に意味が分からない。
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