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四十二話 戻った記憶
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「レイラァァアァアァ」
「イヤァァァァアアアアァァ!」
ゲイルとフレアの絶叫が辺りに響く。ゲイルは両膝を地についてうなだれながら嘆いた。
「また助けられなかった! また僕の目の前で!」
ゲイルは自身の発したその言葉に戸惑いを覚えた。
「ま、また? なんで? またなんて……この光景、初めてじゃないってこと?……あ、そ、そうだ……!」
そこでゲイルは自身で封印した記憶を思い出した。三歳の時の記憶を。母親を目の前でアネイルに潰されたという記憶を。
「クソ! 母さんだけでなく、レイラまで! 忘れたとは言わせないぞ!」
怒りの声を上げるゲイルに対して、アネイルは侮蔑と呼んでも過言のない冷めた瞳で見返してくる。
「何言ってんの? 私がゴミのことなんか覚えてる訳無いじゃない? バカじゃないの? 数万? はプチッとしてるんだからさ」
「ゴ、ゴミなんかじゃない!」
「そ、そうよ! 何言ってるのよ! ヒッ!」
フレアもゲイルに同意を示すが、アネイルに睨み付けられて悲鳴を漏らした。
そんなフレアのことなどまるで意に返さないかのように、アネイルは自身が握っている大槌に視線を戻して、吐き捨てるかのように喋りだした。
「でもね、だから分かるのよ。邪魔者が入ったってね!」
そして軽々とその大槌をヒョイッと持ち上げると、そこには人ひとりが入れるほどの小ささの穴が空いていた。中にはレイラが小さく丸まっていた。目は空いていないが、ゆっくりと小さく胸元が動いている。どうやら気を失っているようだった。
「レ、レイラ!」
安堵の声をあげるゲイルに対して、怒りの声をあげるアネイル。
「潰し損ねたわぁ! ムカつく!」
「間に合ったか?」
その時、ゲイルたちの背後から男性の声が聞こえた。
「父さん!」
「フレアのお父さん!」
振り返るとそこにはフレアの父が立っていた。彼は手に持ったスコップを突き出すと、震えながらこう話し出す。
「お、俺の魔法は地面を掘ることが出来るんだ。どうやら間に合ったようだな。良かった……」
「何が間に合ったんだか……違うでしょ? 遅くなっただけよ。アンタたちがプチッと押しつぶされるのが!」
そう言い放ったアネイルはまるで何も持っていないかの如く空を舞い、ふわりとフレアの父の目の前の降り立った。手にしている大槌は、舞った勢いで既に大きく振りかぶられている。
「ヒッ!」
「ソレッ!」
悲鳴を漏らしたフレアの父に大槌が振り下ろされた。
「やらせない!」
だがその大槌は届くことは無い。地面に足を埋め込みながらも、一寸早く潜り込んだゲイルが両の手でしっかりと受け止めていた。
「あーら、まさか正面から私の宝具を止められる人間がいるなんて正直驚いたわよ。それにアンタ動けたのね?」
「もう僕は大丈夫だ! 母さんの仇、取ってやる!」
「だからさぁ! 私はアンタの母親とか知らねぇぇんんだよ!」
「二人とも逃げて!」
ゲイルはフレアとフレアの父に逃げるように促す。同時に背を向けて逃げ出そうとする二人。しかし、アネイルは二人を逃がすまいとゲイル横を駆け抜けた。
「逃がすか!」
「待て! 相手は僕だ!」
ゲイルはアネイルを追いかけようと駆け出す。が、
「知ってるよぉぉ!」
アネイルは踵を返し、その勢いのままに大槌を横に薙ぐ。不意を付かれたゲイルはその大槌に吹き飛ばされてしまった。
「グゥッ!」
「不意打ちは効くだろぉ?」
「そ、そうだね……で、でも」
地に這いつくばり、顔を顰めるゲイル。アネイルは挑発するかのように顔を突き出し、耳に手を添えて、ゲイルが言いかけた言葉を尋ねた。
「でも? なんだい?」
「効いたのは僕だけじゃないみたいだよ」
「何を言って……う、嘘! 私の宝具が!」
と同時にアネイルの大槌が粉々に砕けてしまった。信じられない、と言った表情でアネイルは狼狽してしまう。
「モノにだってチャクラは流れてる。脆い部分は少なからずあるんだ」
「う、嘘だ……私の宝具が砕けるなんて……オリハルコンよりも硬いのに……これじゃもうプチッと出来ないよ……」
アネイルは我を忘れたかのように天を仰ぎ、呆然と立ち尽くしている。片手には先の無い大槌の柄を握りしめたまま。
「もう止めようよ。そういうの」
「なに、勝手に終わらせた気になってんだよォ」
ゲイルの言葉にアネイルは天を仰ぎ見たまま、ぼそりと呟いた。
「え、だって宝具はもう壊れて……」
「でもね、魔法は使えるんだよぉぉぉ!」
そう叫んでゲイルに向かって柄を突き出す。すると雷鳴が轟き、ゲイルのすぐ傍に立った木を巨大な雷が貫き、一瞬にして消し炭と化した。
「う、嘘!」
そしてアネイルは発狂したかのように叫び出す。
「あーもうやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだぁぁぁぁ!」
ひとしきり叫んだアネイルはピタリと止まった。そして少し投げやりっぽい様子で、ゲイルにこう吐き捨てた。
「一人ずつ殺すのはやーめた。もうお前らぜーんぶ焼け死ねよ。ここら一帯、無差別に雷の雨を降らせてやるよぉ! お前がぜーんぶ悪いんだからな! アハハハハハハハハハハハハハ!」
そうしてアネイルは高笑いと共に、柄を思い切り突き上げたのだった。
「イヤァァァァアアアアァァ!」
ゲイルとフレアの絶叫が辺りに響く。ゲイルは両膝を地についてうなだれながら嘆いた。
「また助けられなかった! また僕の目の前で!」
ゲイルは自身の発したその言葉に戸惑いを覚えた。
「ま、また? なんで? またなんて……この光景、初めてじゃないってこと?……あ、そ、そうだ……!」
そこでゲイルは自身で封印した記憶を思い出した。三歳の時の記憶を。母親を目の前でアネイルに潰されたという記憶を。
「クソ! 母さんだけでなく、レイラまで! 忘れたとは言わせないぞ!」
怒りの声を上げるゲイルに対して、アネイルは侮蔑と呼んでも過言のない冷めた瞳で見返してくる。
「何言ってんの? 私がゴミのことなんか覚えてる訳無いじゃない? バカじゃないの? 数万? はプチッとしてるんだからさ」
「ゴ、ゴミなんかじゃない!」
「そ、そうよ! 何言ってるのよ! ヒッ!」
フレアもゲイルに同意を示すが、アネイルに睨み付けられて悲鳴を漏らした。
そんなフレアのことなどまるで意に返さないかのように、アネイルは自身が握っている大槌に視線を戻して、吐き捨てるかのように喋りだした。
「でもね、だから分かるのよ。邪魔者が入ったってね!」
そして軽々とその大槌をヒョイッと持ち上げると、そこには人ひとりが入れるほどの小ささの穴が空いていた。中にはレイラが小さく丸まっていた。目は空いていないが、ゆっくりと小さく胸元が動いている。どうやら気を失っているようだった。
「レ、レイラ!」
安堵の声をあげるゲイルに対して、怒りの声をあげるアネイル。
「潰し損ねたわぁ! ムカつく!」
「間に合ったか?」
その時、ゲイルたちの背後から男性の声が聞こえた。
「父さん!」
「フレアのお父さん!」
振り返るとそこにはフレアの父が立っていた。彼は手に持ったスコップを突き出すと、震えながらこう話し出す。
「お、俺の魔法は地面を掘ることが出来るんだ。どうやら間に合ったようだな。良かった……」
「何が間に合ったんだか……違うでしょ? 遅くなっただけよ。アンタたちがプチッと押しつぶされるのが!」
そう言い放ったアネイルはまるで何も持っていないかの如く空を舞い、ふわりとフレアの父の目の前の降り立った。手にしている大槌は、舞った勢いで既に大きく振りかぶられている。
「ヒッ!」
「ソレッ!」
悲鳴を漏らしたフレアの父に大槌が振り下ろされた。
「やらせない!」
だがその大槌は届くことは無い。地面に足を埋め込みながらも、一寸早く潜り込んだゲイルが両の手でしっかりと受け止めていた。
「あーら、まさか正面から私の宝具を止められる人間がいるなんて正直驚いたわよ。それにアンタ動けたのね?」
「もう僕は大丈夫だ! 母さんの仇、取ってやる!」
「だからさぁ! 私はアンタの母親とか知らねぇぇんんだよ!」
「二人とも逃げて!」
ゲイルはフレアとフレアの父に逃げるように促す。同時に背を向けて逃げ出そうとする二人。しかし、アネイルは二人を逃がすまいとゲイル横を駆け抜けた。
「逃がすか!」
「待て! 相手は僕だ!」
ゲイルはアネイルを追いかけようと駆け出す。が、
「知ってるよぉぉ!」
アネイルは踵を返し、その勢いのままに大槌を横に薙ぐ。不意を付かれたゲイルはその大槌に吹き飛ばされてしまった。
「グゥッ!」
「不意打ちは効くだろぉ?」
「そ、そうだね……で、でも」
地に這いつくばり、顔を顰めるゲイル。アネイルは挑発するかのように顔を突き出し、耳に手を添えて、ゲイルが言いかけた言葉を尋ねた。
「でも? なんだい?」
「効いたのは僕だけじゃないみたいだよ」
「何を言って……う、嘘! 私の宝具が!」
と同時にアネイルの大槌が粉々に砕けてしまった。信じられない、と言った表情でアネイルは狼狽してしまう。
「モノにだってチャクラは流れてる。脆い部分は少なからずあるんだ」
「う、嘘だ……私の宝具が砕けるなんて……オリハルコンよりも硬いのに……これじゃもうプチッと出来ないよ……」
アネイルは我を忘れたかのように天を仰ぎ、呆然と立ち尽くしている。片手には先の無い大槌の柄を握りしめたまま。
「もう止めようよ。そういうの」
「なに、勝手に終わらせた気になってんだよォ」
ゲイルの言葉にアネイルは天を仰ぎ見たまま、ぼそりと呟いた。
「え、だって宝具はもう壊れて……」
「でもね、魔法は使えるんだよぉぉぉ!」
そう叫んでゲイルに向かって柄を突き出す。すると雷鳴が轟き、ゲイルのすぐ傍に立った木を巨大な雷が貫き、一瞬にして消し炭と化した。
「う、嘘!」
そしてアネイルは発狂したかのように叫び出す。
「あーもうやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだやめだぁぁぁぁ!」
ひとしきり叫んだアネイルはピタリと止まった。そして少し投げやりっぽい様子で、ゲイルにこう吐き捨てた。
「一人ずつ殺すのはやーめた。もうお前らぜーんぶ焼け死ねよ。ここら一帯、無差別に雷の雨を降らせてやるよぉ! お前がぜーんぶ悪いんだからな! アハハハハハハハハハハハハハ!」
そうしてアネイルは高笑いと共に、柄を思い切り突き上げたのだった。
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