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四十四話 白い羽根の巨人
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ガシャーン! グーブンドルデ城内に大きな音が響き渡った。
「何事だ!」
その音が聞こえて間もなく、とある部屋から一人の男が飛び出してきた。
「ザグルド様! 国王陛下の部屋から大きな音が!」
ザグルドと呼ばれた男は近くにいた兵たちに手早く指示を出した。
「お前らは城内を見回れ! 俺は父上の様子を見てくる!」
兵たちが散らばるのを待つ間もなく、ザグルドは国王である父の元へと駈けた。
「なんだ、この胸騒ぎは……」
そう呟きながらも胸に宿る不安を押し殺し、最上階にある国王の部屋に辿り着いたザグルドは、扉をドンドンと叩きながら、中にいるはずの父を呼んだ。
「父上! 如何致しました!」
しかし返事が返ってくることは無かった。
「父上! 父上!」
何度呼んでも声を返さない父に業を煮やしたザグルドは、有無を言わさず部屋に飛び込んだのだった。
「失礼致します!」
次の瞬間、ザグルドの視界に飛び込んできたのは、人間の三倍はあろうかという体躯に、背中からは白い羽根が生えた巨人。そしてその右手にはヒトの下半身が、左手には上半身が握られていた。胴から真っ二つにちぎられたヒトだったモノは両の半身から内臓がだらりとたれ、血が滴り落ちている。
「な、なんだと……? 父上が? そんなまさか?」
変わり果てた父の姿に驚愕の表情を浮かべるザグルド。そんなザグルドの声に気が付き、巨人は振り返りザグルドに話しかけた。
「お前はザグルドってやつか?」
「何者だ貴様! よくも、よくも父上を! その手に握るのはグーブンドルデ十八世と知ってのことか!」
背負った剣を抜き構えるザグルドに対して、巨人は呆れたかのように肩を竦めた。
「俺の質問にも答えられないとは……これだから穢れしモノは……✦‧✧̣̥̇‧✲゚✧✽*✼✼✽*様が嘆くのも無理はない」
「何を言っている! 貴様! 何をしたか分かっているのか! 許さんぞ!」
「何をした……って。俺はこいつを掴んで、こうやって引っ張っただけだよ。そしたらちぎれちまった。そんだけ。でもさ……」
巨人は右手と左手に握られている半身同士をくっつけ、また離して見せながらそこで言葉を止めた。
「なんだ?」
そして巨人はザグルドの目の前に、目を見開いたままのグーブンドルデ十八世の上半身をポイッと投げ捨ててこう続けた。
「俺はさ、このグーブンドルデ十八世ってのが今の地上で最強って聞いて、わざわざ始末する為に来たんだぜ? それがこんな調子じゃ呆れるわ。で、お前はこいつの息子のザグルドだろ? そこそこ強いとは聞いてたけど、こいつより強いの? 弱いの? お前の方が強いなら、俺の聞いてた話が間違えているのか? で、お前の強さは俺様を許す許さないの話が出来るほどあるワケ? 引っ張ってもちぎれないほどは?」
「クッ! ふざけるな!」
「ま、いいや。お前の大好きな父親、返してやるよ」
そう言いながら巨人は右手に握った下半身をザグルドに向かって放り投げる。
凄まじい勢いで回転しながらザグルドに飛んでいったそれはザグルドの頭をその身体から切り離してしまった。
一瞬遅れて、今まで頭があった場所から噴水のように血を噴き出し、ザグルドの身体は崩れ落ちた。
「あ、ごめん。もっと手加減してやるべきだったな。って聞こえてないか」
巨人は軽く謝罪の言葉を述べると、大きく割れたガラスから外を見上げる。天は黒い雲に覆われ、その奥から羽根を持った存在が大量に舞い降りてくる光景が広がっていた。
「あーあ。これだから弱っちいヤツらは嫌いなんだよな。全然楽しくな……」
そこまで言いかけて巨人はピタリと言葉を止めた。そして、割れたガラスから身を乗り出して楽しそうにこう話す。
「アレ? この匂いはもしかして……へぇ、まさかまだ生きてたのか。ここにいてもつまんねぇし、そっちに行くか」
そして巨人はバサりと羽ばたき、目にも止まらぬ速さで飛び去って行った。
「何事だ!」
その音が聞こえて間もなく、とある部屋から一人の男が飛び出してきた。
「ザグルド様! 国王陛下の部屋から大きな音が!」
ザグルドと呼ばれた男は近くにいた兵たちに手早く指示を出した。
「お前らは城内を見回れ! 俺は父上の様子を見てくる!」
兵たちが散らばるのを待つ間もなく、ザグルドは国王である父の元へと駈けた。
「なんだ、この胸騒ぎは……」
そう呟きながらも胸に宿る不安を押し殺し、最上階にある国王の部屋に辿り着いたザグルドは、扉をドンドンと叩きながら、中にいるはずの父を呼んだ。
「父上! 如何致しました!」
しかし返事が返ってくることは無かった。
「父上! 父上!」
何度呼んでも声を返さない父に業を煮やしたザグルドは、有無を言わさず部屋に飛び込んだのだった。
「失礼致します!」
次の瞬間、ザグルドの視界に飛び込んできたのは、人間の三倍はあろうかという体躯に、背中からは白い羽根が生えた巨人。そしてその右手にはヒトの下半身が、左手には上半身が握られていた。胴から真っ二つにちぎられたヒトだったモノは両の半身から内臓がだらりとたれ、血が滴り落ちている。
「な、なんだと……? 父上が? そんなまさか?」
変わり果てた父の姿に驚愕の表情を浮かべるザグルド。そんなザグルドの声に気が付き、巨人は振り返りザグルドに話しかけた。
「お前はザグルドってやつか?」
「何者だ貴様! よくも、よくも父上を! その手に握るのはグーブンドルデ十八世と知ってのことか!」
背負った剣を抜き構えるザグルドに対して、巨人は呆れたかのように肩を竦めた。
「俺の質問にも答えられないとは……これだから穢れしモノは……✦‧✧̣̥̇‧✲゚✧✽*✼✼✽*様が嘆くのも無理はない」
「何を言っている! 貴様! 何をしたか分かっているのか! 許さんぞ!」
「何をした……って。俺はこいつを掴んで、こうやって引っ張っただけだよ。そしたらちぎれちまった。そんだけ。でもさ……」
巨人は右手と左手に握られている半身同士をくっつけ、また離して見せながらそこで言葉を止めた。
「なんだ?」
そして巨人はザグルドの目の前に、目を見開いたままのグーブンドルデ十八世の上半身をポイッと投げ捨ててこう続けた。
「俺はさ、このグーブンドルデ十八世ってのが今の地上で最強って聞いて、わざわざ始末する為に来たんだぜ? それがこんな調子じゃ呆れるわ。で、お前はこいつの息子のザグルドだろ? そこそこ強いとは聞いてたけど、こいつより強いの? 弱いの? お前の方が強いなら、俺の聞いてた話が間違えているのか? で、お前の強さは俺様を許す許さないの話が出来るほどあるワケ? 引っ張ってもちぎれないほどは?」
「クッ! ふざけるな!」
「ま、いいや。お前の大好きな父親、返してやるよ」
そう言いながら巨人は右手に握った下半身をザグルドに向かって放り投げる。
凄まじい勢いで回転しながらザグルドに飛んでいったそれはザグルドの頭をその身体から切り離してしまった。
一瞬遅れて、今まで頭があった場所から噴水のように血を噴き出し、ザグルドの身体は崩れ落ちた。
「あ、ごめん。もっと手加減してやるべきだったな。って聞こえてないか」
巨人は軽く謝罪の言葉を述べると、大きく割れたガラスから外を見上げる。天は黒い雲に覆われ、その奥から羽根を持った存在が大量に舞い降りてくる光景が広がっていた。
「あーあ。これだから弱っちいヤツらは嫌いなんだよな。全然楽しくな……」
そこまで言いかけて巨人はピタリと言葉を止めた。そして、割れたガラスから身を乗り出して楽しそうにこう話す。
「アレ? この匂いはもしかして……へぇ、まさかまだ生きてたのか。ここにいてもつまんねぇし、そっちに行くか」
そして巨人はバサりと羽ばたき、目にも止まらぬ速さで飛び去って行った。
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