縁の鎖

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禍の足音

一抹の不安

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「陛下。よろしかったのですか?」

隠密部隊の隊長エピドが国王に問いかける。
謁見の間から執務室へ戻った国王の元へ、隠密部隊の隊長エピドと副隊長のボルダが姿を現した。

「昔からジェイドは悪戯が得意でな、悪戯が失敗した試しがなかった。今回の事もそうだ。1年以上をかけた大掛かりな作戦に、私が引っ掛かったのだ。」
「ですが子供の悪戯とは訳が違います。王家の威信に関わります。このままフィサリス嬢に入学試験を受けさせる訳には行きません。」
「隊長の言う通りです。直ぐにでも女家庭教師__ガヴァネス__#として潜入しているテルルに、座学を試験にそぐわない内容にする。試験内容を難問ばかりにするなど、対策を取られるのが最良かと愚考いたします。」


国王は目を瞑り、知恵を絞る。

「ジェイドは本気だ。フィサリス嬢を嫁がせないと言っていた以上、ソーディア公爵家の跡取とすると公言したも同じ。どの様な手を使ってでも、合格させてくるだろう。」


国王だけで無く、エピドとボルダも頭を抱え出した。

「そう言えば!隊長、フィサリス嬢は魔力持ちだと思われますか?」
「いや。魔力の香りが無いと、モルガから報告を受けいる。」
「陛下!朗報ですよ!フィサリス嬢は大公に似たため、魔力が無いのです。であれば試験に合格したとしても、水鏡の儀は落ちる事でしょう。」
「そうか!ならば満点を取らなければ、優は難しいであろう。」


エガリテ学園は魔力が無くても入学は出来る。
だが余程の頭脳明晰でなければ、優以上のクラスに魔力の無い者が在籍する事はできない。


「下手に試験内容を難しくすれば、平等を基本理念としている王立学園の信用に関わってしまう。ガヴァネスの授業内容がそぐわなければ、テルルを解雇し新たなガヴァネスを雇い入れ、諜報部員を公爵家から遠ざけることになってしまうと危惧していた。だが水鏡の儀に落ちれば、優以上の成績は難しいであろう。光明が見えた気がする。」

魔術部隊のモルガの報告により、執務室に安堵の空気が流れた。
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