空蝉

ひさかはる

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 男の指が抜かれ、一時の安堵とやんだ快感との狭間にあなたは落ちた。

 ファスナーが降ろされる音が鳴った。

 あなたは片手を後ろへのばした。

 「匂うな」

 指を嗅いだ男の声にあげられ、あなたの片手は羞恥に凝り、指の関節すべてが力を漲らせ、手全体を厳めしくしたが、脳のなかはそれとは裏腹に、掻きまわされて陶酔に似た妖しさに湧くものがあった。

 滾る男の根が手に押し付けられ、先端にしたたる分泌液に男の悦びを見た。犯そうとする割りに冷静が過ぎていた男の態度との差異に手は熱くなり、ひと想いに根を握り潰してしまえば逃れられると知りながらも素直にもっと深く触れたい心を制御するに留まった。

 男の手が優しくあなたの手に触れて、根を掴ませる形を取らせた。

 自身の尊厳から厭がる手を演出したが、男の根を包むと、陰のなかへ運ぶことを強く欲する女が心を領した。

 自分で入れろ、と強く命令さえしてくれれば…。

 男の次の出方を待ち侘びた。

 が、男はあなたに重ねていた手を離し、再度女の陰に指を沿わせた。洩れ出した濡れを指に搦め芯を甘く弾き始めた。弾かれる度にあがりそうになる声を喉の奥で殺し、支えるものがなくなったにも拘わらず、男の根を一向に離そうとしない自身の手を怨んだ。

 男の根の先が時折り臀部の皮膚を撫でて分泌液で濡らす。

 臀部をずらせ、真ん中に忍ばせたいと願う腰にいうことを利かせるに必死なあなたは淡く洩れ始めていた自身の声に気付かずにいた。

 助けを求める声はなくとも自ずと色に呼応する声帯の正直さに辟易としながらも、自身からひとつ薄い衣が剥がれた感触があった。

 男はこちらが何も動かなければ根を没する気はないのかもしれない。始まりは強姦ではあっても結果が伴えばそうとはいえない、とする卑劣な手口なのかもしれない。

 そう思えばおもうほど後になって怨み事を吐かずにいるつもりはあると知らせ、ひと思いに犯されてしまいたい、と言い訳の立つ交接を求める欲望は昇ってゆく。

 芯を弾く手がやみ男が体勢をわずかにずらせ、陰に根を寄せた。

 ようやく繋がれるとあなたの腰は受け入れを整えて待ったが、男にそれ以上動く気配はない。

 もう限界は遠に過ぎていた。

 あなたは腰を動かし、自身で根を呑み込んでいった。

 あなたは悦びに啼いた。

 
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