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大希
カナの差し金だけど
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皆で初詣に行き、幸せを噛み締めながらその一方でこのようなことを考えている私を、『おかしい』と考える方もいらっしゃるでしょう。それこそ、
『頭がおかしい』
と。
なるほど、確かに私は頭がおかしいのかもしれません。ですがこれが私という人間なのです。そして、今、私のすぐそばにいてくださる方々は皆、私がそのような人間であることを承知の上で一緒にいてくださっています。だから少々のことでは揺るがない。
私自身も、千早や、カナや、フミがその心の奥に抱えているものを知った上で、彼女らが抱える<闇>を知った上で、一緒にいたいと思っているのです。
だから、彼女達が事件を起こしたくらいでは見限ることもありません。彼女達が身勝手な悪意で事件を起こすような人でないことは分かっていますから。彼女達が事件を起こすようなことがあれば、それは相応の事情があってのことだと分かるからです。
故に、私がこんな穏やかな時間の中でもこんなことを考えていても、彼女達は私を奇異の目で見たりしないのが分かるのです。
でも、その一方で、
「どうしたあ? ピカぁ? 難しい顔しちゃってぇ~?」
不意にカナがそんな風に声を掛けてきました。
「……もしかしてまた私のことでなにか…?」
カナのそれでフミも気付き、不安そうに尋ねてきます。
「いえ、そういうのではないのです。一般論として、この世は難しいことが多いなと思いまして……」
それは、嘘ではありません。あくまで一般論の範囲での諸々について考えていただけですから。
するとカナは、
「そっか~? まあそれならいいんだけどさ。また旅館に行って盛大に鼻血を吹くぐらいの気分転換が必要だったら躊躇わずそうしてくれよな~」
ニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべながら言ってきました。
と言うのも、実は、年末最後の土曜日にもあの旅館に行ったのです。そこで、ヒロ坊くんに、突然、背後から抱きつかれ、私は久しぶりに鼻血を出してしまって……
その日の夕方、いつものように<会合>に山下さんがいらっしゃった時、
「いや~、今日もピカってば派手に鼻血をふきましてな」
カナが嬉しそうに山下さんに報告したのです。
「……」
私は何も言えず、熱くなった顔を伏せたままでした。
「ピカって、ホント意外にウブなんだね~。ヒロ坊にお風呂で後ろから抱き着かれて、その瞬間にダバ~って。まあ、それもカナの差し金だけど」
とのフミの言葉にも、顔を上げられません。
すると、
「ヒィ~ッ! ヒィ~ッ!」
という、声とも言えない声が。
玲那さんでした。玲那さんがビデオ通話の画面の向こうで、ひっくり返って膝を叩きながら笑っていたのです。
『頭がおかしい』
と。
なるほど、確かに私は頭がおかしいのかもしれません。ですがこれが私という人間なのです。そして、今、私のすぐそばにいてくださる方々は皆、私がそのような人間であることを承知の上で一緒にいてくださっています。だから少々のことでは揺るがない。
私自身も、千早や、カナや、フミがその心の奥に抱えているものを知った上で、彼女らが抱える<闇>を知った上で、一緒にいたいと思っているのです。
だから、彼女達が事件を起こしたくらいでは見限ることもありません。彼女達が身勝手な悪意で事件を起こすような人でないことは分かっていますから。彼女達が事件を起こすようなことがあれば、それは相応の事情があってのことだと分かるからです。
故に、私がこんな穏やかな時間の中でもこんなことを考えていても、彼女達は私を奇異の目で見たりしないのが分かるのです。
でも、その一方で、
「どうしたあ? ピカぁ? 難しい顔しちゃってぇ~?」
不意にカナがそんな風に声を掛けてきました。
「……もしかしてまた私のことでなにか…?」
カナのそれでフミも気付き、不安そうに尋ねてきます。
「いえ、そういうのではないのです。一般論として、この世は難しいことが多いなと思いまして……」
それは、嘘ではありません。あくまで一般論の範囲での諸々について考えていただけですから。
するとカナは、
「そっか~? まあそれならいいんだけどさ。また旅館に行って盛大に鼻血を吹くぐらいの気分転換が必要だったら躊躇わずそうしてくれよな~」
ニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべながら言ってきました。
と言うのも、実は、年末最後の土曜日にもあの旅館に行ったのです。そこで、ヒロ坊くんに、突然、背後から抱きつかれ、私は久しぶりに鼻血を出してしまって……
その日の夕方、いつものように<会合>に山下さんがいらっしゃった時、
「いや~、今日もピカってば派手に鼻血をふきましてな」
カナが嬉しそうに山下さんに報告したのです。
「……」
私は何も言えず、熱くなった顔を伏せたままでした。
「ピカって、ホント意外にウブなんだね~。ヒロ坊にお風呂で後ろから抱き着かれて、その瞬間にダバ~って。まあ、それもカナの差し金だけど」
とのフミの言葉にも、顔を上げられません。
すると、
「ヒィ~ッ! ヒィ~ッ!」
という、声とも言えない声が。
玲那さんでした。玲那さんがビデオ通話の画面の向こうで、ひっくり返って膝を叩きながら笑っていたのです。
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