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暮らしの章

ブルーノ

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翌日は晴れて、俺は麓の村に品物を売りに行った。

すると、初日にプラウを買ってくれた若い男が俺を見るなり声を掛けてきて、

「よお、あんた! いい腕だな。あんたの作ったプラウ、すげえ調子いいぜ!」

満面の笑みで言ってくれた。ただ、ふっと、自分の家の向こうに広がっている畑を見て、急に、

「おい! ブルーノ!! サボってんじゃねえ!!」

とか怒鳴った。俺も視線を向けると、十歳くらいの男の子が座り込んでた。明らかに調子が悪そうな様子だったから無理もないと思ったし、何より、人の好さげな男が豹変したことで、俺は正直、いい気はしなかった。しかも男は、俺に対してはどこまでも愛想よく、

「あんたのナイフも調子よくてよ! 女房の料理の腕まであがっちまったぜ! まるで魔法みたいだ! そのことを話したら『うちも欲しい!』って言うのが何人もいてよ。村の井戸まで行ってみな! 客がいるぜ!!」

とかご機嫌で話してた。

「そうか。じゃあ、行ってみるよ」

俺はそう応えて、井戸のある辺りへ行ってみようと決めた。以前、<火事場泥棒>のために来た時にある程度の地理は把握したから、まあ分かるだろ。それよりも俺は、畑で座り込んでた男の子のことが気にかかった。だから、

「あのブルーノって子、あんたの子か?」

尋ねたら、

「ああ。長男だ。俺が十五の時にできた奴なんだけどよ、怠け者で困ってるぜ。その分、次男には期待してる。まだ八つだけどな」

忌々し気にそう言った。それで俺は、

「あの子、たぶん、熱あるぜ。休ませた方がいいんじゃないか?」

と言ったんだが、

「いやいや、あのくらいなら問題ねえって。甘やかしたらダメなんだよ!」

って、それこそ『テンプレか?』って思うような返答を。

『こりゃ言うだけ無駄だな……』

俺もそれをわきまえて言われた通りに井戸の方に行ってそこで何人もの客に囲まれて、この日持ってきたのが全部売れて、その上、注文までもらった。代金代わりの野菜や小麦や日用品と少しばかりの金と合わせて屑鉄も手に入れて、材料もこれで十分ってことでいい気分で帰路に就く。

だが……

あの若い男の家の前を通ると、何人もの人間が集まってて、

「あ~、こりゃもうダメだな。助からん」

「まあ、助かったところでどうせ使えねえ奴だったんだろ?」

「新しいの作れってこった」

とか口々に言ってるのが聞こえてきた。そいつらは地面に寝かせられた子供を、あのブルーノって子を見てたんだが、その顔色は一目見て俺でもダメだって分かるものだった。

もう、死んでたんだ。

たぶん、熱中症だろうな……今日はまだそこまで暑くないが、体調が良くないところに無理をさせたんだろう……

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