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266話 終業式の日 14
しおりを挟む俺は、どうしたらいい?
目の前に落ちている問題集を睨み付け、考える。
充分すぎる脅しと、俺にとっての最善の選択肢を示して見せていった桂本さんは、流石だ。
父さんや桂本さんのいいなりになるつもりなんかない。だけど、だからこそ逃走するなら体力を残しておかなければならないことも事実で。
やっぱり今は、言うことを聞くしかないのか...?
ここで勉強したら、桂本さんの思い通りになってしまうことは分かっている。でも、他にどうすればいいのか分からなくて。
今、勉強をしたからといって、転校が確定する訳ではない。
まだ逃げ出す算段もないし、そう考えるととりあえずは自分の身を守ることが優先だ。
「っ...くそ...」
俺は椅子に座り、机に置いた問題集を仕方なく開いた。
問題集は、国語、数学、英語の三教科が一冊にまとまったものだった。きっと転入試験はこの三教科のテストをするのだろう。
「それにしてもこれ、かなり難易度が高い問題ばかりだな...。まぁ、いつものことだけど。」
パラパラとページをめくり、ざっと眺めただけでもかなり捻った応用問題が多いことが見てとれる。
「これ、0時までに終わらせろって...?」
答えの冊子も挟まれていたから、問題集は埋めようと思えば埋められる。しかし、それだけではお仕置きは免れない。答えも一緒に渡してきたということは、おそらく全ての内容をきちんと理解しておけということなのだろう。
ちらりと壁に掛かった時計を見る。
今、7時前くらい。
0時まで5時間か...。
この内容を全て理解するにはあまりにも少ない。
でも、できなければお仕置き。やるしかない。
俺は、シャーペンを持ち、一問目を解き始めた。
ヤバイ。全然終らない。
解き始めたはいいものの、なかなか進んでいかない問題集に、俺は焦りを感じていた。
今までだったら、多少無茶な桂本さんの指示も、お仕置きへの恐怖と幼い頃からの訓練により、なんとかこなすことができていた。
だけど、数ヵ月のブランクに加え、いきなりこんな状況に立たされた混乱で、全く集中できなくて。
南原さん、今頃どうしてるかな...。
突然居なくなった俺をどう思っているのだろう。
怒ってる? 心配してる?
せめて、連絡が取れたらいいのに。
ああ、こんなこと考えてる場合じゃない。やらなきゃ、やらなきゃ。
こうして焦る気持ちは、さらに俺の思考を凍結させていった。
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