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ゾンビは既に死んでいる。リスカの悪魔はもう古い。時代はピパリスの銀雷だ
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オレはあれだけ苦労して移動した道を戻るというマヌケな事をしてる訳だが。
何故かあれだけしつこく狙われた冒険者に一向に襲われなかった。
まさかのエンカウントなしの20日間。
その間に遭ったのは、街道を蜥蜴が引く車で進む行商人1人だけだった。
無論、美味しくいただいたがな。
先に行商人の車を発見して街道を塞ぐ形で倒れてたら、
「大丈夫ですか」
と降りて声を掛けてきてくれたから。
善意よりも通行の邪魔だから横に退けるのが目的だったと思うが。
後は、
「ヒィィ、ゾンビ、ギャアアアアア」
で終わりだ。
蜥蜴車には懲りてるので、その後、無人の蜥蜴車だけを進ませた。
運が良ければ行商人の物資を待つ集落まで到着するだろう。
別にオセンチなんかじゃない。
戦術的行動だ。
行商人が到着しなくて、調査の為に兵士や冒険者を放たれたら迷惑なだけだからな。
無理矢理、理由を付ければそうなった。
ゾンビだって善行を施す事もあるさ。
◇
安全に移動出来ると思ってたのも束の間。
前方から砂煙が上がってて、慌てて土を掘って地中に隠れれば、足音が長々と続いた。
会話も地中から確認。
「なあ、たったの2000人でピパリスの銀雷に勝てるのか?」
「喋るなって。上官に聞かれたら見せしめの鞭打ちだぞ」
「ピパリスの城を落とすなんてな」
「住民の1万人以上が3頭に喰われたんだろう?」
「聖郭の要塞も落としたらしい」
「2000人で勝てるのかよ?」
そんな会話が長々と続いた。
兵隊2000人らしき足音をやり過ごしたオレは土の中から身体を出した。
ピパリスがどこかは知らないが、1万人も喰らった魔物か。
相当、物騒だな。
オレへの追撃がないのはその為か。
オレは納得しながらゾンビポーズで移動したのだった。
◇
小さな村を発見した。
正確には跡だが。
外周を囲う煉瓦の塀の一部が崩れている。
村も人の気配がない。
オレは日中だったが構わずに崩れた塀から村に入った。
やはりもう遺棄された後で廃墟だった。
まだ潰れたてなのか真新しかったが。
他の魔物に先を越されたか。
早い者勝ちだから文句は言うまい。
オレは街を探索した。
欲しいのは地図だ。
最初に村を潰した時、愚かにも探さなかったからな。
兵の詰め所の中を探す。
壁にデカデカと貼られてあった。
手書きだったが、
ゾンビながらオレにも文字が読めた。
リスカは載ってなかったが、ピパリスの場所は分かった。
オレが燃やした森の横のデカイのがピパリスらしい。
なるほど。
あの街を落とした魔物か。
それは凶暴だな。
そして、もう1つ、新たな発見があった。
割れた鏡が床に落ちてたのだが、その割れた鏡に写ったオレの顔がゾンビ顔から少し人間臭くなっていたのだ。
禿げ散らかしてた金髪も少し増えてる。
何だ、これ?
人間を美味しくいただきまくってるから、人間の外見になってきた?
ふむ。
などと考えてると、外から、
「こっちこっち」
「待てよ、お兄ちゃん」
声が聞こえてきた。
子供が遊んでる?
逃げ遅れた?
・・・いや、この村にまだ隠れ住んでる人間が居るのか。
何人居るかは知らないが、なんていい連中だ。
オレに美味しくいただかれる為に残ってくれていたなんて。
子供達は兵舎の中までは探検に来なかった。
つまらん。
オレはこの村の人間を狩る事に決めた。
夜を待った。
村の中で明かりが灯った建物は3軒のみ。
遠慮なく片っ端から襲った。
窓の隙間から闇の手を発動。
おっ、黒い霧が時たま白い静電気を帯びてる。
何だ、これ?
暗闇で使用したら、モロ視認出来るだろ、これだと。
どうしてこんな仕様になったんだ?
前の方が断然、効率的だろ。
原因は何だ?
もしかしてあの白い翼持ちを一口美味しくいただいたからか?
まさかな。
逃げられないように3軒の人間を落としてトドメを刺して回ってから、計14人を美味しくいただき、村から旅立ったのだった。
◇
おっと、遂には冒険者達と遭遇した。
「野良の黒ボロを纏ったゾンビ? もしかして『リスカの悪魔』って奴か?」
「余裕だろ、こんなの。『ピパリスの銀雷』に比べたら?」
4人が襲い掛かってきた。
オレも随分と舐められたものだな。
斧男戦士に正面から肩を斬られ、爪攻撃で反撃して沈めた。
男僧侶が枕で顔を殴られ、爪攻撃で反撃して沈める。
2人を撃破。
残る女狩人と男魔術師が顔を見合せて驚くのに最後の時間を使ってくれたお陰で闇の手を放ち、2人を落として戦闘は呆気なく終了した。
何だ、新人か、コイツラ?
弱過ぎるな。
オレはその後、4人を美味しくいただいて移動を再開したのだった。
何故かあれだけしつこく狙われた冒険者に一向に襲われなかった。
まさかのエンカウントなしの20日間。
その間に遭ったのは、街道を蜥蜴が引く車で進む行商人1人だけだった。
無論、美味しくいただいたがな。
先に行商人の車を発見して街道を塞ぐ形で倒れてたら、
「大丈夫ですか」
と降りて声を掛けてきてくれたから。
善意よりも通行の邪魔だから横に退けるのが目的だったと思うが。
後は、
「ヒィィ、ゾンビ、ギャアアアアア」
で終わりだ。
蜥蜴車には懲りてるので、その後、無人の蜥蜴車だけを進ませた。
運が良ければ行商人の物資を待つ集落まで到着するだろう。
別にオセンチなんかじゃない。
戦術的行動だ。
行商人が到着しなくて、調査の為に兵士や冒険者を放たれたら迷惑なだけだからな。
無理矢理、理由を付ければそうなった。
ゾンビだって善行を施す事もあるさ。
◇
安全に移動出来ると思ってたのも束の間。
前方から砂煙が上がってて、慌てて土を掘って地中に隠れれば、足音が長々と続いた。
会話も地中から確認。
「なあ、たったの2000人でピパリスの銀雷に勝てるのか?」
「喋るなって。上官に聞かれたら見せしめの鞭打ちだぞ」
「ピパリスの城を落とすなんてな」
「住民の1万人以上が3頭に喰われたんだろう?」
「聖郭の要塞も落としたらしい」
「2000人で勝てるのかよ?」
そんな会話が長々と続いた。
兵隊2000人らしき足音をやり過ごしたオレは土の中から身体を出した。
ピパリスがどこかは知らないが、1万人も喰らった魔物か。
相当、物騒だな。
オレへの追撃がないのはその為か。
オレは納得しながらゾンビポーズで移動したのだった。
◇
小さな村を発見した。
正確には跡だが。
外周を囲う煉瓦の塀の一部が崩れている。
村も人の気配がない。
オレは日中だったが構わずに崩れた塀から村に入った。
やはりもう遺棄された後で廃墟だった。
まだ潰れたてなのか真新しかったが。
他の魔物に先を越されたか。
早い者勝ちだから文句は言うまい。
オレは街を探索した。
欲しいのは地図だ。
最初に村を潰した時、愚かにも探さなかったからな。
兵の詰め所の中を探す。
壁にデカデカと貼られてあった。
手書きだったが、
ゾンビながらオレにも文字が読めた。
リスカは載ってなかったが、ピパリスの場所は分かった。
オレが燃やした森の横のデカイのがピパリスらしい。
なるほど。
あの街を落とした魔物か。
それは凶暴だな。
そして、もう1つ、新たな発見があった。
割れた鏡が床に落ちてたのだが、その割れた鏡に写ったオレの顔がゾンビ顔から少し人間臭くなっていたのだ。
禿げ散らかしてた金髪も少し増えてる。
何だ、これ?
人間を美味しくいただきまくってるから、人間の外見になってきた?
ふむ。
などと考えてると、外から、
「こっちこっち」
「待てよ、お兄ちゃん」
声が聞こえてきた。
子供が遊んでる?
逃げ遅れた?
・・・いや、この村にまだ隠れ住んでる人間が居るのか。
何人居るかは知らないが、なんていい連中だ。
オレに美味しくいただかれる為に残ってくれていたなんて。
子供達は兵舎の中までは探検に来なかった。
つまらん。
オレはこの村の人間を狩る事に決めた。
夜を待った。
村の中で明かりが灯った建物は3軒のみ。
遠慮なく片っ端から襲った。
窓の隙間から闇の手を発動。
おっ、黒い霧が時たま白い静電気を帯びてる。
何だ、これ?
暗闇で使用したら、モロ視認出来るだろ、これだと。
どうしてこんな仕様になったんだ?
前の方が断然、効率的だろ。
原因は何だ?
もしかしてあの白い翼持ちを一口美味しくいただいたからか?
まさかな。
逃げられないように3軒の人間を落としてトドメを刺して回ってから、計14人を美味しくいただき、村から旅立ったのだった。
◇
おっと、遂には冒険者達と遭遇した。
「野良の黒ボロを纏ったゾンビ? もしかして『リスカの悪魔』って奴か?」
「余裕だろ、こんなの。『ピパリスの銀雷』に比べたら?」
4人が襲い掛かってきた。
オレも随分と舐められたものだな。
斧男戦士に正面から肩を斬られ、爪攻撃で反撃して沈めた。
男僧侶が枕で顔を殴られ、爪攻撃で反撃して沈める。
2人を撃破。
残る女狩人と男魔術師が顔を見合せて驚くのに最後の時間を使ってくれたお陰で闇の手を放ち、2人を落として戦闘は呆気なく終了した。
何だ、新人か、コイツラ?
弱過ぎるな。
オレはその後、4人を美味しくいただいて移動を再開したのだった。
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