「待ってくれ」と呼び止める彼は私の彼氏ではありません

恋より食べること②

夕方エリーゼが学園から帰り疲れた顔を両親に見せていた。
「どうした？学園で何かあったのか？」
「女子が…招待状が来たと言ってわ～わ～泣いて五月蝿かったの…」
「……お前は泣かなかったのか？」
「えー？なんで私が泣くの？」
「いや、いい…それよりドレスは選んだのか？」
「まだ何もしていない、後から着てみる」
「そうか…」
エリーゼは両親に話し終えると部屋へと向かった。
「きや～～～っ！！お父様、お母様！」
「どうした！？」
エリーゼの悲鳴を聞いた両親はエリーゼの部屋の扉を開けた。
「…ドレスが…着れない…」
「ドレスが着れない？」
「……みんな…背中で止まるの…」
「は？」
「あらあら」
去年作ったドレスが途中で体につかえ着る事が出来なかった。
「…食べる量を減らさないとな…ドレスは仕立て屋に来てもらおう」
「えっ、私そんなに食べていないわ」
「…食後のケーキを三個から一個にしなさい」
「え～～っ」
頬を膨らませるエリーゼに父親はため息を吐いた。
仕立て屋を呼んで明日までにはドレスが出来るようにと追加料金を支払い父親はまたため息を吐いた。
次の朝ドレスが着れなかった事に落ち込んでいるだろうと思っていた父親は、食卓の席で普通に食べる娘を見て茫然となって見ていた。
「学園から帰った頃にはドレスは出来ているの？」
「え…あ、ああ…」
「ふふっ、どんな料理が出るのか楽しみ、行って来ます」
「行ってらっしゃい」
「……」
父親は、今年も彼氏を連れて来る気配がない娘に諦めた。
学園から帰って来たエリーゼはドレスが新しいドレスに喜び両親も笑顔になった。
「今夜の披露宴はロリーナと一緒に料理を食べる約束しているの今から楽しみ」
「そうか…ロリーナさんは彼氏はいるのか？」
「いるわよ、三人で披露宴に行くの行ってきまーす！」
「楽しんでね」
「はーい」
手を振るエリーゼを両親は見送った。
「…娘が喜んでいるんだ…いつか恋に目覚めるだろう」
「そうですね」
エリーゼを乗せた馬車は披露宴がある侯爵家へと馬車を走らせた。