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約束

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「…この塗り薬で治るのかな…普通、私に確認して薬を塗るのに…」
ブッブッと青年から塗り薬を貰ったフォスティヌは教室へと向かっていた。
その頃、フランシスとシャロンは古いベンチに座り身なりを整えていた。
「君の長い髪はいつ見ても良いよ」
背中まで伸ばされた金色の長い髪の毛を一房手に取ったフランシスはシャロンの髪の毛にキスをしていた。
「ふふっ、長い髪の毛が好きよねフランは」
「長い髪は女性の魅力を引き出しているからね」
「あらっ、わたくしは魅力的かしら?」
「ああ…凄く魅力的だよ」
フランシスはシャロンに口付けをすると抱きしめ首筋にキスをしていた。
「あ…ダメよフラン…教室に戻りましょう」
「はぁ…君の傍を離れたくないよ」
「ふふふ、子供みたい」
「ああ、君といる時は甘えてしまうよ」
フランシスはシャロンの手を握りしめお互い寄り添っていた。
「ねぇ、フラン…」
「ん?」
「どうしてわたくしに婚約の話をしてくれなかったの?」
「……」
シャロンはフランシスにフォスティヌと婚約した事を聞き出していた。
「ふぅ…」と小さな息を吐いたフランシスはしばらく黙ったまま周りの木々や草をじっと見ていた。
「……婚約の話があってから君に話さなくてはと思って学校で君に会うたびに言わなくてはと思っていたんだ…まさか、数日の間で婚約の噂が流れていたとは知らなかったんだ…」
シャロンの手を離したフランシスは両手を膝の上に置き握りしめていた。
「…わたくしも皆が話しているのを聞いてはじめは信じてはいなかったわ…でも、今日あなた達の姿を見てわたくしと目が合いましたあなたが驚いているようで…噂は本当なんだわと思って…」
「いや、あれは…まさか君が女子の中に紛れているとは思っていなかったんだそれで驚いて…」
オロオロとするフランシスにシャロンはクスクスと笑っていた。
「可愛い婚約者じゃない」
「っ…両親達が勝手に決めた婚約なんだ」
「…でも、あなたの婚約者は違うんじゃないの?」
「え?」
「彼女…あなたの事を想っているんでしょう?」
「!」
フランシスはシャロンからフォスティヌが自分の事を好きだと言われシャロンの顔を思わず見てしまった。
「だって分かりやすいのよあなたの婚約者…いつもあなたと一緒にいる彼女はあなたの顔を良く見ているのよ」
「……でも、僕の中ではフォスティヌは妹みたいなんだ…」
「妹だと思っているのにどうして婚約したの?」
「いや、だからあれは両親が…悪かったよシャロン…僕がはっきりとしないから……」
「わたくし、愛人は嫌よ」
「愛じ…!?……僕はフォスティヌとは何もないんだ」
フランシスはフォスティヌとキスをした事はシャロンに言えなかった。
「……すぐには婚約破棄は無理なんだ…僕を信じてほしい、愛しているのは君だけなんだ」
じっとシャロンの顔を見るフランシスにシャロンは顔を下に向き小さな声で確認していた。
「……本当にわたくしだけを愛してくれるの?」
「本当だよ」
「もし…彼女があなたを求めて来たらどうするの?」
「それは…ないと思う」
「何故?」
「『妹』と思っているからだよ。昔も今も未来もフォスティヌは僕の『妹』なんだ」
「……何故かしら、彼女が可哀想に思えて来たわ…」
「酷いな~っ、僕は本当の事を話しているのに」
フランシスは膝の上に乗せているシャロンの手を握りしめていた
「シャロン…僕を信じて待ってほしい」
「…わかったわ。あなたを信じて待っているわ」
「シャロン!ありがとう、愛しているよ」
「ふふふ、わたくしも愛しているわ。フラン」
フランシスとシャロンは誓いを交わし、シャロンはフランシスの婚約破棄を待っ約束をした。








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