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第一章
美しい変化(18)
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「ホテルエデンは先ほどご説明申し上げたとおり、本館以外に東西南北にそれぞれ分館がございます。現在地は東館なのですが、ここから北館そして西館を経由して南館へ行く方法しかございません」
なんて融通の利かない造りなのだろう……。
「じゃあ北館への入口はどこ?」
私が訊くと、またおかしな答えが返ってきた。
「今のところ北館への入口は見つかっておりません。千里様、アケル様がお昼寝をしている間にひととおり探してみたのですが、あちら側への入口はまだ閉ざされたままのようにございます」
ケルビムは悪びれる様子もなく、きっぱりと言った。
「見つかっておりません、ってどういうこと? ちょっと、あなたここの総支配人なんでしょ? しっかりしてよ」
アケルも面白がって私の真似をする。
「なんでしょ? しっかりしてよ!」
アケルはケラケラ笑っていた。
「も、申し訳ございません。わたくし、もう一度探しにいって参りますのでしばらくお待ちください! あ! 千里様は、お茶をしっかりとお飲みくださいますように」
そう言い残すとケルビムは慌てて食堂を後にした。
「まったく、どこか抜けてるわよね」
私が腕組みし、ケルビムの背中を横目で見ると、正面に立っていたアケルも私の真似をした。
「わよね!」
ふたりで顔を見合わせて笑いあった。
穏やかな時間の流れる中、アケルは再び天井を見上げ、一層幻想的に煌めく無数の光の筋に心をときめかせていた。私はアケルの隣に腰を下ろし、アケルと同じ目線で、アケルの見上げる景色を見ながら言った。
「本当にきれいだね」
アケルは、天井から差し込む光から片時も目を逸らさずに、「うん」とだけ答えた。
なんて融通の利かない造りなのだろう……。
「じゃあ北館への入口はどこ?」
私が訊くと、またおかしな答えが返ってきた。
「今のところ北館への入口は見つかっておりません。千里様、アケル様がお昼寝をしている間にひととおり探してみたのですが、あちら側への入口はまだ閉ざされたままのようにございます」
ケルビムは悪びれる様子もなく、きっぱりと言った。
「見つかっておりません、ってどういうこと? ちょっと、あなたここの総支配人なんでしょ? しっかりしてよ」
アケルも面白がって私の真似をする。
「なんでしょ? しっかりしてよ!」
アケルはケラケラ笑っていた。
「も、申し訳ございません。わたくし、もう一度探しにいって参りますのでしばらくお待ちください! あ! 千里様は、お茶をしっかりとお飲みくださいますように」
そう言い残すとケルビムは慌てて食堂を後にした。
「まったく、どこか抜けてるわよね」
私が腕組みし、ケルビムの背中を横目で見ると、正面に立っていたアケルも私の真似をした。
「わよね!」
ふたりで顔を見合わせて笑いあった。
穏やかな時間の流れる中、アケルは再び天井を見上げ、一層幻想的に煌めく無数の光の筋に心をときめかせていた。私はアケルの隣に腰を下ろし、アケルと同じ目線で、アケルの見上げる景色を見ながら言った。
「本当にきれいだね」
アケルは、天井から差し込む光から片時も目を逸らさずに、「うん」とだけ答えた。
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