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第二章
大切な想い出(15)
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化け物は完全に消失した。
化け物が現れてから食い散らかされていったものが次々に復元されていく。
本棚にベッドに扉、そして私の思い出の本。
本棚に本が収まっていくと、私が失っていた記憶たちも私の元へと帰ってくるのが自分でもわかった。
その自分へ戻ってきた記憶や思い出を噛み締めるたび、自分が望んだ行為がどれほど愚かなことだったのかと私はひとり涙を流して泣いた。
アケルが私を心配し、私の側に駆け寄ろうとするのをケルビムが止めた。
「千里様、わたくしとアケル様は食堂で食事の用意をいたしております。気持ちが落ち着いたら階下へお越しください」
そう言ってアケルと手を繋ぎ部屋を出ていった。
「ありがとう。ケルビム……」
私はひとり、落ち着くまで失っていた記憶をひとつずつ噛み締めそして泣いていた。
落ち着いた私は部屋を出て廊下を進み階段を降りていった。二階に差し掛かり過去の記憶の図書室の扉を見た。
「楓、ごめんね……」
私は二階の扉の向こうにある、私の記憶たちに謝る気持ちで言った。
食堂に降りていくと、アケルとケルビムがなにやらワイワイ賑やかに笑っているのがわかった。私は食堂の扉を開け、大広間のふたりのいる席まで歩いていく。
アケルが私に気づいて駆け寄ってくる。
「あっ! おねえちゃん! もう大丈夫?」
両手をブンブン振り回しながら駆け寄ってくるアケルがとてもかわいく感じられる。
「あっ! 千里様! もう大丈夫でございますか?」
ケルビムがアケルの真似をして手をブンブン振り回しながら駆け寄ってくる。
「ちょっとぉ! ケルビムわたしの真似しないでよ!」
アケルが口を尖らせ怒っている。ケルビムは両手を胸にやりモジモジとぶりっ子ポーズをとりながら「ごめんなさい! わたくし! ごめんなさい!」と言った。
アケルは指を差して大笑いしている。
私もたまらず笑ってしまった。
アケルが私の手を取って席に連れていく。
「わたし、おねえちゃんのためにサンドイッチ作ったんだよ!」
「アケルが? 本当に? すごく嬉しい!」
席に着くと大皿に山のようにサンドイッチが並べられていた。
ケルビムがお茶を注ぐとハーブのよい香りが辺りを包んだ。
「アケル様のセンスはわたくしには理解に苦しみます」
アケルが皿にサンドイッチを取り分けてくれた。
「さぁ! 召し上がれ!」
アケルが取り分けたサンドイッチは竹輪をカットし、ケチャップがたっぷりと塗り込まれた竹輪サンドだった。
うわぁ……。
アケルはテーブルに両肘をつき、頬杖をついて、私が竹輪サンドを食べ感動の言葉を発するのを今か今かとワクワクした表情で待っていた。
私はサンドイッチを手に持ち、ケルビムに顔をやるとケルビムはわざと視線をそらすように顔を背けた。
――ケルビムめっ!
私は竹輪サンドイッチにおもむろにかぶりついた。竹輪とケチャップの味しかしない。
「どぉ? 美味しい?」
「ぅう、ん! とっても美味しい! アケル天才!」
私の言葉を聞きアケルは御満悦。
「ね! ほらっ! だから言ったでしょ?」
「いいえ! それは千里様のアケル様に対する社交辞令であって本心ではございません!」
このふたり、私が来る前になにやら賭けでもしてたのね……。
化け物が現れてから食い散らかされていったものが次々に復元されていく。
本棚にベッドに扉、そして私の思い出の本。
本棚に本が収まっていくと、私が失っていた記憶たちも私の元へと帰ってくるのが自分でもわかった。
その自分へ戻ってきた記憶や思い出を噛み締めるたび、自分が望んだ行為がどれほど愚かなことだったのかと私はひとり涙を流して泣いた。
アケルが私を心配し、私の側に駆け寄ろうとするのをケルビムが止めた。
「千里様、わたくしとアケル様は食堂で食事の用意をいたしております。気持ちが落ち着いたら階下へお越しください」
そう言ってアケルと手を繋ぎ部屋を出ていった。
「ありがとう。ケルビム……」
私はひとり、落ち着くまで失っていた記憶をひとつずつ噛み締めそして泣いていた。
落ち着いた私は部屋を出て廊下を進み階段を降りていった。二階に差し掛かり過去の記憶の図書室の扉を見た。
「楓、ごめんね……」
私は二階の扉の向こうにある、私の記憶たちに謝る気持ちで言った。
食堂に降りていくと、アケルとケルビムがなにやらワイワイ賑やかに笑っているのがわかった。私は食堂の扉を開け、大広間のふたりのいる席まで歩いていく。
アケルが私に気づいて駆け寄ってくる。
「あっ! おねえちゃん! もう大丈夫?」
両手をブンブン振り回しながら駆け寄ってくるアケルがとてもかわいく感じられる。
「あっ! 千里様! もう大丈夫でございますか?」
ケルビムがアケルの真似をして手をブンブン振り回しながら駆け寄ってくる。
「ちょっとぉ! ケルビムわたしの真似しないでよ!」
アケルが口を尖らせ怒っている。ケルビムは両手を胸にやりモジモジとぶりっ子ポーズをとりながら「ごめんなさい! わたくし! ごめんなさい!」と言った。
アケルは指を差して大笑いしている。
私もたまらず笑ってしまった。
アケルが私の手を取って席に連れていく。
「わたし、おねえちゃんのためにサンドイッチ作ったんだよ!」
「アケルが? 本当に? すごく嬉しい!」
席に着くと大皿に山のようにサンドイッチが並べられていた。
ケルビムがお茶を注ぐとハーブのよい香りが辺りを包んだ。
「アケル様のセンスはわたくしには理解に苦しみます」
アケルが皿にサンドイッチを取り分けてくれた。
「さぁ! 召し上がれ!」
アケルが取り分けたサンドイッチは竹輪をカットし、ケチャップがたっぷりと塗り込まれた竹輪サンドだった。
うわぁ……。
アケルはテーブルに両肘をつき、頬杖をついて、私が竹輪サンドを食べ感動の言葉を発するのを今か今かとワクワクした表情で待っていた。
私はサンドイッチを手に持ち、ケルビムに顔をやるとケルビムはわざと視線をそらすように顔を背けた。
――ケルビムめっ!
私は竹輪サンドイッチにおもむろにかぶりついた。竹輪とケチャップの味しかしない。
「どぉ? 美味しい?」
「ぅう、ん! とっても美味しい! アケル天才!」
私の言葉を聞きアケルは御満悦。
「ね! ほらっ! だから言ったでしょ?」
「いいえ! それは千里様のアケル様に対する社交辞令であって本心ではございません!」
このふたり、私が来る前になにやら賭けでもしてたのね……。
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