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ミドウ村
第409話 新しいお友達
白雪さんから教えてもらった神話は吃驚のレベルが違ったけど、規模が大きすぎると逆に「へぇ~」ってなるんだと学んだね。
ちなみに岩巨人は共和国の北、皇国との境目にあるどでかい鉱山が巨人の成れの果てだそうです。私はまだ見に行ったことがないんだけど、空を飛んだことがある二人は納得してました。
亀の方は不貞腐れて穴を掘って地下に埋もれたから、そこで生きているのか、死んでいるのか、未だに眠っているのかは不明との事。その時掘った穴は湖となり、メネクセス王国の王都にある結構大きな湖だというから、まあ神話の時代に生きていた生物はデカかったという事だけを理解した次第です。
先日チアキさんから修行をしてもらえるという話があったんだけど、まずはこの村に慣れると良いだろうと言われて、今日は村の見学です。
稽古の時は装備が良いだろうけど、普段着は楽なのが良ければと渡された和服の数々。インナーは着てるけど、甚平スタイルが楽すぎるのでありがたく着用させてもらってます。裸足に草鞋っていうのも気持ちが良いんですよ。
「もう元気になったのか?」
「はい、チアキさん、白雪さん、ルイスさん、ミケさんのお陰で元気になりました。ベルフォンスさんはどうしたんですか?」
チアキさんのお屋敷を出たところにベル少年が立っていた。
彼と会うのはここに来た当初、起きたあの日以来だ。私が眠っている間に何度か様子を見に来ていたらしいけど、会うことはなかったんだよね。
身体が小柄で私と見た目が然程変わらなく見えるから、頭の中ではベル少年と呼んでいるけど、11歳らしいのでちゃんとお名前でお呼びしたんですけどね、ご本人がベルで良いというので、ベル君と呼ばせていただくことにしました。
「ベル君はチアキさんに御用ですか? それならもうすぐ――」
「おれっ――」
「おう、待たせたか? おお、ベル坊どうした?」
ベル君が何やら言い出すタイミングでチアキさんが出てきた。着流しは何着お持ちなのか、今日のは単色鼠色のお着物で、帯が白地に黒のストライプという中々粋な装いです。
その後ろから出てきた白雪さんは、桜色の着物がとても良く似合っている。着物はシンプルだけど、白っぽい帯に細かな模様が入っているからとても華やかに見えるね。帯紐がグレーになっているのはチアキさんの着物に合わせたのかな?
「お待たせしました! ベルフォンスもこちらに来たのですね。
ヴィオ様、この村は竜人族が多い村で子供が少ないのです。チアキ様の訓練を受けるのであれば、手合わせのお相手も必要でしょう?
この村にはベルフォンスよりも小さい子供はおりませんし、我々だと手加減も難しいですからね。先日の顔合わせはあのような形で終わってしまいましたから、村の見学を機に交流を深めて頂こうと思ったのです。説明が遅れて申し訳ありません」
着物スタイルではなく簡易な冒険者スタイルっぽくなったルイスさんが来たところで、ベル君がここにいる理由を聞かせてもらった。
私が今居る村は〖ミドウ村〗と呼ばれ、リルベルッティ大陸の中では北部に位置するらしい。その割に甚平と草鞋だけで寒いと感じないと思ったんだけど、今は夏が始まった時期だし、この場所はプレーサマとほぼ同じくらいの位置になるんだって。
ベル君は海の魔獣や空を飛ぶ魔鳥に気を取られて北方向へ飛んでいたため皇国上空を飛んでしまったらしい。私も自由に空を飛べるようになれば、きっとあちこちフラフラする自信しかないからしょうがないよねとしか言えないね。
「ベル君が一緒に訓練してくれるんですか?」
「おう、俺もチャーキ様に教えてもらえるなら嬉しいし、ヴィオをこの大陸に連れて来てしまったのは俺が原因だからな。それで、あの……」
もじもじしているベル少年。
全ての種族の中で群を抜いて寿命が長い竜人族、彼らは五百~千年も生きるのだというから驚きだ。エルフより長命なハイエルフですら六百年弱だというからその長さが分かるだろう。彼らと同じくらい生きるのは聖獣くらいで、だからこそ竜人族は友との別れが辛いから、竜人族だけの集落を作るのだという。
それだけ長命な竜人族だけど、成長速度はそんなにべらぼうに遅い訳ではない。ベル少年とて11歳の現在、ヒト族7歳の私と同じくらいというのは小柄ではあるけれど、ラノベあるあるの『長命種は五年に1歳くらいの成長速度』という程ではないからね。30歳を過ぎる頃には多種族の成人と同じくらいにはなるというので、そこから青年期が非常に長いんだと。
魔人族のチアキさんもそうだったようで、この五年程で白髪が増えて老化が始まったので、そろそろ寿命が終わる頃だろうと実感したのだと教えてもらった。
ただ、あちらではお会いしたことがない水色髪の洗礼前後にしか見えない少年というのは、なかなか萌えポイントを突き刺してきますよ。そんな可愛らしい少年がモジモジしているのは私のお腐れ様がムクムクと……ゲホンゲホン。
「ベル坊、はようせんか。男らしくないぞ」
私はニマニマしそうな顔を緩めないようにするのに必死ですし、男性陣は温かい目で見守っていたんだけど、白雪さんはズバっと言っちゃいましたよ。
ちょっと半泣きっぽい潤ませた目のままグイっと頭を上げたベル君。
「こないだは悪かった! ヴィオを無理やり連れてきてゴメン! だけどこの島の事も、俺の事ももっと知ってほしい。将来があれなのは……ゴニョゴニョ」
勢い込んで謝罪をされたけど、あれかな? いきなり結婚を申し込んできた事に対する謝罪かな? あの時は驚いただけで、まあ受ける気もなかったけど別に怒っても居なかったんだけどね。
後半はなんかゴニョゴニョになってるけど、白雪さんがまたツッコむ。
「ベル坊聞こえんぞ?」
「あ~~~~! まずは俺と友達になってくれ!」
真っ赤な顔で片手を突き出してきたベル君、何だこの可愛い生き物は。
何か昔そんなテレビがあったよな。クジラだか何とかっていう恋愛バラエティー。
「お友達ならよろしくね」
まあここは「ごめんなさい」ではなく手を取る一択ですけどね。出された手を握り返せば、ブワっと涙を零したベル君。情緒不安定ですか? 大丈夫です?
「ははっ、ベル坊よかったなぁ」
「ベルフォンス、ちゃんと謝れましたね。偉かったですよ」
「そうじゃな、友達になりたいとまで言えたんは上出来じゃな」
ごめんなさいと仲直りの練習だったのかな? なんだかほっこりしちゃいますね。11歳相手だと思えば微妙かもしれないけど、競争相手の同年代が居ないこの村では、そういう体験もあまりしたことがなかったのかもだよね。
えっぐえっぐと嗚咽しながらも笑っているベル君は滅茶苦茶可愛かったことを報告しておきます。
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