水の都~二十年越しの恋~

海野ことり

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⑪初めての−2(R−18)

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「ごめんな」
「謝らないで下さい。俺も謝りませんから」
 そう言うと慶太郎は信乃の下帯に手を掛けた。
 尾骨の上のT字になっている部分に指を差し込まれ、信乃が慌てた。

「ここはもっときつく締めないと」
「うる……せ。俺ぁ緩いのが、好きなんだよ」
「でも直ぐに解けてしまうでしょう? ほら」
 慶太郎は下帯を引っ張ってスルリと解いた。
 布一枚を股の間に挟んで抵抗する信乃からあっさりと赤い布を奪う。

「……そこの色も薄いんですね」
「死ねっ!」
 信乃は短く毒吐いて身体を見えないようにと頻りに捩じった。
 けれど陰茎がぷるぷると震え、その仕草は闇に浮かび上がる白い体をいやらしくくねらせているようにしか見えない。
 慶太郎は興奮して息を荒らげながらその先を急いだ。

「着物が邪魔だな」
 慶太郎が眉宇を顰めて呟いて、信乃の着物を大きく開いて後ろに払った。
 背中から腰、前を隠そうと捻ったために晒された臀部、白い腿も折り曲げられた足も全てが露わになった。

「止めろって! 男の裸なんざ見ても仕方がねぇだろう!」
 風呂でも見てるだろうが、と喚いた信乃に慶太郎が淡々と答える。

「湯屋は暗いし、一緒になった時はあなたの方を見ないようにしていたから……ここに黒子がある事も知らなかった」
 指で脇腹を押さえられて信乃の身体がびくりと震えた。

「触ん、なぁっ!」
「脇腹が弱いんですね」
 慶太郎は念押ししてそこをさわさわと触れるか触れないかの力加減で撫でた。

「ぅん、やだ……って、」
 ドクドクと信乃の胸が脈打って、乱暴にされたらきっと何とも思わないのに、そっと触れられると変な気持ちになった。
 自分の中から見たことのない凶暴な獣が顔を出しそうで怖い。

「少し、しっとりとしてきた……甘い匂いがする」
 ぺろりと首筋を舐められて信乃が悲鳴をあげた。

「けいっ!」
「恥ずかしいなら、目を閉じていたらいい」
 その内に何も分からなくしてあげる。
 耳元で甘ったるく囁かれて信乃は途方に暮れた。自分は男なのに男の手で乱されてしまうというのか。
 信乃の戸惑いを置いてきぼりに、慶太郎は項垂れたままの信乃自身を柔らかく握り込んだ。
 ご無沙汰だった事もあり、戸惑う心とは裏腹にそれは直ぐにぴくぴくと反応して慶太郎の手を打ち返した。

「やっめ、ろ……」
「力を抜いて。ほら、先っぽから汁が出てきた」
 クチクチと音を立てて濡れた分身を扱かれ、信乃の身体が羞恥と性的紅潮で匂い立つように鮮やかに色付いた。
 慶太郎は信乃の分身が大きくそそり立つまで手淫を続け、手を離してその姿をうっとりと眺める。

「ああ、綺麗だ」
 両腕を頭上で括られ、涙で潤んだ瞳は言い付けを守るかのように固く閉じられ、肩からだらりと着物を下げただけの身体を剥き出しにされて、けれどそこだけが反抗するように前は腹に付くくらいに雄々しく勃ち上がっている。
 捕らわれた獲物のような姿がどうしようもなく劣情をそそる。

「俺のも見ますか?」
 慶太郎の言葉に信乃は吃驚して瞑っていた目を開いた。
 その拍子に眦からぽろりと涙が溢れ、茶水晶のような瞳がキラキラと輝く。
 こんな時なのに光の結晶のように綺麗だと思いながら慶太郎はばさばさと半着を脱ぎ捨て、軽衫の前紐を解いた。
 盛り上がった褌の前から信乃は弾かれたように目を逸らした。
 慶太郎が自分を見てそこを腫らしている。
 そう思うと恥ずかしいような嬉しいような不思議な気分になった。

(こんなみっともない俺の身体で興奮している……)
 それは自分の姿を醜いと思い込んている信乃には新鮮な驚きで、悦びですらあったのだ。

「信乃さん、あなたに触れる事を許しちゃくれませんか」
 苦しそうな慶太郎の声に顔を上げたら唇をそっと触れ合わされた。
 しっとりと唇を食まれ、小さく吸われて信乃の唇がふわりと緩む。
 手首を拘束され、着物を肌蹴られ、心細い信乃にとって優しい口付けは救いのように感じられた。

「ん、ふ……」
 勝手に溢れてしまう甘ったるい鼻声と何度も繰り返される柔らかな口付け。

(どうしよう、俺ァおかしいのか? 慶太郎とこうしてんのが、気持ちよくて堪らねえ)

「けい、たろ……」
「信乃さん、口を開けて」
 慶太郎の言葉に信乃は大人しく口を開け、舌を絡め取られた。
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