45 / 55
第6章 特異点
五話 目標
しおりを挟む
「ほっときなさい。シグレにも考えがあっての事だろうしね」
姿を伺う事も出来ぬ、灯りの無い薄暗い古寺内、一人の女性が口を開いた。
「何言ってんだよカレン! こんな勝手、認めんのかよ!?」
一人荒れるユキを余所に、もう一人の特異点も冷静に口を開く。
「ただ、次に出会う時はお互い敵となるやも知れんが……それでもよいか?」
敵意を不思議と感じられないその言葉に、シグレは振り返る事無く呟く。
「ああ、俺は俺の道を往く。一人で最強を証明する為にな。その時が来たら敵として闘うだけだ」
シグレはそう口を紡ぎ、止めていた歩みを再び進めた。同じく彼にも敵意を感じられなかったが。
「そうか……ならいい」
一堂同意の下、決別したシグレ。誰もそれを止める者はいない。
「ライカまで? どうなってんだよ……。キリトも何か言えよ!?」
「……ふふ」
一人だけ納得いかない感じのユキは、その後ろ姿を睨み付ける様に見据えていた。
************
古寺から出たシグレは、前方に居る人物の姿に気付き、思わずその歩みを止める。
満月に照らされた、虫の音が聴こえる生温い静寂の中、近くの神木に寄り掛かる様に腕組みしていた白銀髪の青年、前ユキヤが彼を待っていたかの様に佇んでいたのだから。
ユキヤが腕組みしていた腕を降ろし、シグレの前へと立ち塞がる。
「やはり行くのですね? まあ何時か、この日が来るとは思っていましたが……」
シグレは反論する訳でも無く、その想いのたけを述べる。
「俺はお前達とは違う。天下を獲り、新たな世を創る考えに興味が無い。それだけの事だ……」
「アナタらしいですね」
お互いを見据え、言葉を交わす。だが其処に憎しみの念は見えない。
「それでもアナタが、私達の仲間で在る事に変わりはありません」
ユキヤはそう言い、シグレへ右手を差し伸べる。
「貫きましょう。お互いの信念を、死ぬまで……」
そしてシグレも右手を差し伸べ、お互いにしっかりと握手を組み交わした。
「ああ……」
シグレの後を一人で追い、物陰から二人の姿を見ていた幼きユキ。その目に映るは確かな絆が有る様に、そう見えていた。
「おい、チビユキヤ」
シグレがふと、物陰に向かって口を開く。ユキが後を追って隠れていたのを知っていたかの様に。
「チビとは何だよチビとは!」
図星を突かれたのか、声を荒げながら幼きユキが、物陰から躍り出る。
シグレは幼きユキを諭す様にーー
「お前はまだまだ幼い上に弱い。強くなれよ、その名に恥じぬ様にな……」
そしてシグレは踵を返し、二人に背を向け歩み出す。
「闘いの中でしか生きられない俺達にとって、真に正しいものが有るとするなら、それは強さだけだ。ただ誰よりも強くなれ。そしていつか、俺達を越えてみせな」
そう言い残し、ゆっくりと夜の闇に消えていくシグレ。
「餓鬼扱いしやがって。見てろよ、今は無理でも、いつか絶対アンタに勝ってやるからな!」
消えていくシグレに向かって、幼きユキはそう宣言するのであった。
姿を伺う事も出来ぬ、灯りの無い薄暗い古寺内、一人の女性が口を開いた。
「何言ってんだよカレン! こんな勝手、認めんのかよ!?」
一人荒れるユキを余所に、もう一人の特異点も冷静に口を開く。
「ただ、次に出会う時はお互い敵となるやも知れんが……それでもよいか?」
敵意を不思議と感じられないその言葉に、シグレは振り返る事無く呟く。
「ああ、俺は俺の道を往く。一人で最強を証明する為にな。その時が来たら敵として闘うだけだ」
シグレはそう口を紡ぎ、止めていた歩みを再び進めた。同じく彼にも敵意を感じられなかったが。
「そうか……ならいい」
一堂同意の下、決別したシグレ。誰もそれを止める者はいない。
「ライカまで? どうなってんだよ……。キリトも何か言えよ!?」
「……ふふ」
一人だけ納得いかない感じのユキは、その後ろ姿を睨み付ける様に見据えていた。
************
古寺から出たシグレは、前方に居る人物の姿に気付き、思わずその歩みを止める。
満月に照らされた、虫の音が聴こえる生温い静寂の中、近くの神木に寄り掛かる様に腕組みしていた白銀髪の青年、前ユキヤが彼を待っていたかの様に佇んでいたのだから。
ユキヤが腕組みしていた腕を降ろし、シグレの前へと立ち塞がる。
「やはり行くのですね? まあ何時か、この日が来るとは思っていましたが……」
シグレは反論する訳でも無く、その想いのたけを述べる。
「俺はお前達とは違う。天下を獲り、新たな世を創る考えに興味が無い。それだけの事だ……」
「アナタらしいですね」
お互いを見据え、言葉を交わす。だが其処に憎しみの念は見えない。
「それでもアナタが、私達の仲間で在る事に変わりはありません」
ユキヤはそう言い、シグレへ右手を差し伸べる。
「貫きましょう。お互いの信念を、死ぬまで……」
そしてシグレも右手を差し伸べ、お互いにしっかりと握手を組み交わした。
「ああ……」
シグレの後を一人で追い、物陰から二人の姿を見ていた幼きユキ。その目に映るは確かな絆が有る様に、そう見えていた。
「おい、チビユキヤ」
シグレがふと、物陰に向かって口を開く。ユキが後を追って隠れていたのを知っていたかの様に。
「チビとは何だよチビとは!」
図星を突かれたのか、声を荒げながら幼きユキが、物陰から躍り出る。
シグレは幼きユキを諭す様にーー
「お前はまだまだ幼い上に弱い。強くなれよ、その名に恥じぬ様にな……」
そしてシグレは踵を返し、二人に背を向け歩み出す。
「闘いの中でしか生きられない俺達にとって、真に正しいものが有るとするなら、それは強さだけだ。ただ誰よりも強くなれ。そしていつか、俺達を越えてみせな」
そう言い残し、ゆっくりと夜の闇に消えていくシグレ。
「餓鬼扱いしやがって。見てろよ、今は無理でも、いつか絶対アンタに勝ってやるからな!」
消えていくシグレに向かって、幼きユキはそう宣言するのであった。
0
あなたにおすすめの小説
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】真実の愛はおいしいですか?
ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。
稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。
王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。
お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。
でも、今は大きくなったので見えません。
―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語
※童話として書いています。
※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。
【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい
マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」
新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。
1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。
2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。
そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー…
別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる