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第8章 絶望へのカウントダウン
二話 小さな光明
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――――長老家広間内――――
誰もが憔悴しきっていた。余りにも犠牲が多過ぎた。
この一連の出来事での犠牲者は、惨殺された長老含む四十三名にも登った。その殆どが原形を留めていないので、集落全体を挙げての収容確認作業は困難を極めた。
漸くそれが終わる頃には、既に夜が明けようとしていた。誰もが一睡もしていない。それもその筈。村全体の十分の一以上の人命を失った上、最も危惧されていた光界玉までもが、狂座の手に渡ってしまったのだから。
「もう……終わりだ」
焦心に漂う広間内。誰がともなく呟く。
“冥王の復活”
三年前の恐怖が、近い内に再び繰り返される。
これからの事を考えると、絶望に苛まれるのも当然の事。
そんな中、ユキは広間の片隅で、アミの手による傷の手当てを受けていた。
塗られる傷薬。身体中の至る所に巻かれる包帯。アザミ戦程の致命傷を受けていなかったのは不幸中の幸いだが、傷だらけのその姿はとても痛々しく見える。
その二人の傍で、疲れきったのか床に平伏す様に眠るミオ。
「まだ……終わっていませんよ」
その憔悴漂う空気を打ち消すが如く、ユキがその痛々しそうな口を開く。
「ユキ……?」
アミはその手を止め、彼の横顔をそっと覗き見る。
痛々しい迄に傷付いたその姿。だがその深い銀色の瞳に、絶望の色は無かった。
「何を馬鹿な! 長老も殺され、光界玉も奪われた。これが終わりじゃなくて何だってんだ!!」
一人の男が声を荒げる。精神的にも錯乱状態にある様だ。
正に一発触発。広間内に不穏な空気が流れる。
「大きな声を出さないでください。大の大人が見苦しい」
「何だと!?」
男がユキの口調が癇に障ったのか、掴み掛からん勢いで叫んだ。
「ちょっと止めて!」
その雰囲気にアミが狼狽える様に声を出すが、ユキはそれを諌め、あくまで冷静に立ち上がり、広間内を見回す。
広間内には一族の戦士十数名が鎮座しており、怪訝そうな表情でユキに注目する。勿論、その中にはミイの父、リュウカも居た。
「まだ時間はあります。光界玉はキリトの特異能で創られた、云わば魂の結晶なんです。その力の結晶体は、そう簡単には破れません」
同じ力を持つユキのその言葉には、常識を越えた説得力があった。特にその力を施されたリュウカには。
“まだ終わりじゃない”
その言葉の意味に、僅かながら光明が差したかの様に周りの空気が、そして皆の表情が変わっていく。
しかし、すぐにそれは遮られる。
「とはいえ、そうのんびりしてる時間はありません。奴等も馬鹿じゃ無い。その力を中和する方法は有るのですから。奴等もそれに気付く筈……」
誰もが憔悴しきっていた。余りにも犠牲が多過ぎた。
この一連の出来事での犠牲者は、惨殺された長老含む四十三名にも登った。その殆どが原形を留めていないので、集落全体を挙げての収容確認作業は困難を極めた。
漸くそれが終わる頃には、既に夜が明けようとしていた。誰もが一睡もしていない。それもその筈。村全体の十分の一以上の人命を失った上、最も危惧されていた光界玉までもが、狂座の手に渡ってしまったのだから。
「もう……終わりだ」
焦心に漂う広間内。誰がともなく呟く。
“冥王の復活”
三年前の恐怖が、近い内に再び繰り返される。
これからの事を考えると、絶望に苛まれるのも当然の事。
そんな中、ユキは広間の片隅で、アミの手による傷の手当てを受けていた。
塗られる傷薬。身体中の至る所に巻かれる包帯。アザミ戦程の致命傷を受けていなかったのは不幸中の幸いだが、傷だらけのその姿はとても痛々しく見える。
その二人の傍で、疲れきったのか床に平伏す様に眠るミオ。
「まだ……終わっていませんよ」
その憔悴漂う空気を打ち消すが如く、ユキがその痛々しそうな口を開く。
「ユキ……?」
アミはその手を止め、彼の横顔をそっと覗き見る。
痛々しい迄に傷付いたその姿。だがその深い銀色の瞳に、絶望の色は無かった。
「何を馬鹿な! 長老も殺され、光界玉も奪われた。これが終わりじゃなくて何だってんだ!!」
一人の男が声を荒げる。精神的にも錯乱状態にある様だ。
正に一発触発。広間内に不穏な空気が流れる。
「大きな声を出さないでください。大の大人が見苦しい」
「何だと!?」
男がユキの口調が癇に障ったのか、掴み掛からん勢いで叫んだ。
「ちょっと止めて!」
その雰囲気にアミが狼狽える様に声を出すが、ユキはそれを諌め、あくまで冷静に立ち上がり、広間内を見回す。
広間内には一族の戦士十数名が鎮座しており、怪訝そうな表情でユキに注目する。勿論、その中にはミイの父、リュウカも居た。
「まだ時間はあります。光界玉はキリトの特異能で創られた、云わば魂の結晶なんです。その力の結晶体は、そう簡単には破れません」
同じ力を持つユキのその言葉には、常識を越えた説得力があった。特にその力を施されたリュウカには。
“まだ終わりじゃない”
その言葉の意味に、僅かながら光明が差したかの様に周りの空気が、そして皆の表情が変わっていく。
しかし、すぐにそれは遮られる。
「とはいえ、そうのんびりしてる時間はありません。奴等も馬鹿じゃ無い。その力を中和する方法は有るのですから。奴等もそれに気付く筈……」
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