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舞い降りた縁談

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 3年の月日が経ち、ロティシュとアリエスの関係も進展もないまま、ほぼ毎日身体を繋げたロティシュとアリエス。
 と言っても、はロティシュからしか誘う事で成り立つ関係で、ロティシュの苛立ちが募っていっていた。成長と共に神力の力も増すロティシュとアリエスは、貪る欲も増していった。
 
「いつ迄続けるんだ?侍女………」

 ロティシュの執務室で侍女服を整え、乱れた髪を結い直すアリエスの後ろ姿を見つめるロティシュ。お行儀見習いの時期はもう終わっているアリエスが、侍女服を纏い、侍女の仕事をする事に強制は無い。城に侍女として仕える女は、裕福な商人の娘達が礼儀作法を覚える為のステータスにしか過ぎず、モルディア皇国の娘達が憧れる職の1つだ。

「…………侍女の仕事が好きなので」
「……一生、侍女でいるつもりか?」
「それでもいいかもしれません」
「…………そうなったら、結婚してもこのまま相手してくれよ」
「…………っ……失礼します」

 ロティシュは遠回しに、と言いたかった。だが、遠回し過ぎる言葉は、アリエスには分からない。
 アリエスもまた、そういうロティシュの言葉に傷付いているが、いつ迄も少女のままでは無い。もしかしたら、ロティシュは自分の事が好きなのでは、と思っていた時期もあった。だが、ロティシュの遠回し過ぎる言葉に傷付いてその儚げな小さな思いを打ち消すアリエス。

 パタン。

 扉を開け出て行くアリエス。ロティシュは引き止める事も出来ず、執務を再開した。もうすぐ、19歳になるロティシュとアリエス。2人共はっきりしなければならない歳だ。

「アリエス」
「お父様、お疲れ様です」
「…………お前に話があるんだが……陛下の執務室に来てくれ」
「………はい」

 アリエスの父、マークがロティシュの執務室から出て来た所を見計らい、声を掛けた。

「………いつ迄続けるつもりだ?」
「何をです?侍女ですか?」
「気付いてないとでも?………ロティ様と……だ」
「……………っ……」
「想いは伝わっているのか?」

 いつ迄も続く、娘の実る気配のない不毛な恋に、マークも痺れを切らしたらしい。

「…………伝わっては……ないと思います」
「………そうか……」

 マークはそれ以上何も聞かず、ルカスの執務室の扉を開けた。

「ルカス様、アリエスを連れて来ました」
「おぉ、すまないなアリエス」
「…………皇帝陛下にご挨拶申し上げます」

 執務室には、ルカスとマシュリー、エリス迄居た。マシュリーとエリスは複雑な表情で、アリエスには嫌な予感しかしない。

「そこに掛けてくれ、アリエス」
「は、はい」

 下座に、マークとエリスを挟み座るアリエス。上座にはルカスとマシュリーが座る。

「早速なんだが、アリエスにコルセア国から縁談が来てるんだが………」
「コルセア………国……隣国からですか?」
「そう、あちらの国王の息子、王太子が25歳だったか?」
「そうですね」

 マークが、返事をする。

「コルセア国内の貴族令嬢ではなく、モルディアと婚姻を結びたかったらしい………まぁ、だよな」
「でしょうね………神力欲しさに」
「…………正直なぁ……気は乗りはしないんだ……コルセアとは約20年、国交もしてはきたが、今になって婚姻を言ってくるというのは、皇族の血脈の娘で皇帝の近しい親族が欲しいのさ………イリーサを打診してきたが、イリーサはまだ13歳だ、それを知ると従弟であるマークの娘を、と変更してきたぐらいだ……年齢も年頃だしな……」

 薦めているルカスではあるが、不服そうだ。マシュリーやマーク、エリスも同様の表情を見せる。

「わ、私にコルセアへ嫁げ、と?」
「…………まぁ、相手を気に入ったら、考えてくれていい…………こっちからは、『会わない事には決めれない』と言ってある………モルディアはコルセアと国婚しなければならない程困ってないしな…………今度、ロティの19歳の誕生祭に来賓として王太子が来る事になっている。それでアリエスの目で判断して欲しい」
「……………わ、私は………結婚したく……ありません……」
「「「……………」」」
「それは、ロティとの事か?」

 マークやマシュリー、エリスはアリエスの気持ちは分かっているから押し黙るが、ルカスが口に出した。

「っ………」
「…………進展がなぁ………」
「アリエス、ルカス様の話には、が関係する………ロティ様の側に居たいのも分かる………だが、変わらない関係でいつ迄もこのままでは、ロティ様は結婚をしなくなる………それなら、アリエスが結婚したらロティ様はアリエスに執着しなくなるだろう?だが、同じモルディア皇国の貴族では、駄目だと思っている…………だから……」
「…………隣国なら……ロティ様との関係が終わる………と………?」

 マークが、ルカスの代弁をする。

「…………結論を言えば………な……」
「…………っ………うっ………」
「………アリエス………」

 これは、救済とも言える配慮。ロティシュに告白も出来ない弱いアリエスへの逃げ場だ。コンプレックスがあるアリエスに、モルディアでない国に行く事は、誹謗中傷を受けなくて済む。だが、日々募って行くロティシュへの想いで、涙が溢れ溢れた。

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