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しおりを挟む由真が連れて来られたのは、アダルトグッズだらけの部屋だ。
ラブホテルに来たかの様に、ベッドやソファ、拘束具もある。
「とりあえず、ソファへどうぞ」
「………は、はい」
---部屋に連れ込まれちゃったけど、取材させてくれるんだよね……
由真は促されるままにソファに座ると、桐生がティーカップに何か入れて持って来る。
「紅茶だけど」
「あ、ありがとうございます………あの此処はどういった部屋なんですか?」
「宿泊無しの、カップル休憩場所。バー店内ではあるが、アダルトグッズを試してみたいけど、人目を気にする人用に、3部屋だけあるんだが、その内の1部屋」
「す、凄いですね………」
ソファに座る由真の前にあるベッドに座る桐生。由真の横に座るのは違うだろうと思ったからかもしれない。多少距離はあるが、話が出来ない程の距離ではない。
「それで?アンタはどんなプレイをしてみたいんだ?」
「わ、私の事を聞くより、取材対象なのは桐生さんなんですけど!」
「初心者のアンタに合わせる為だろ?どんな趣旨の企画かも分からないんだ。緊張しているアンタを知らないまま、緊縛師の俺の趣味のプレイ全部受け入れられるのか?緊縛もコミュニケーションが大事なんだよ」
「あ………き、企画書あります!」
足元に置いた由真のバックの中にあるタブレットを桐生に持って行く由真。その後説明もしやすい様に、由真は立ったままだ。
「………横座れば?俺が読む間立ったままでいるつもり?」
「え………あ、はい……」
少し距離を取り、横に座る由真は一口も桐生が淹れた紅茶を飲めてはいない。
「………へぇ~、SMプレイに興味あるのに、勇気が出ないカップル向け、初心者講座ね………」
「は、はい………雑誌や漫画では沢山緊縛プレイの題材が多くて、興味を持ってる人も多いと思うんです。でもどう結んであげたらいいか、とか、苦しくない方法とか調べてもイマイチ分からないので、今の様な桐生さんがレクチャーしている様な事から初めたい人の為に………」
「アンタみたいな人向けね……」
「っ!」
「しかしまぁ………処女でSMに興味示すって、よっぽど欲求不満なんだろうな」
「っ!」
桐生に見透かされてる感じが否めず、言葉が出ない由真は、次第に顔が赤くなっていた。
「………で?アンタは自分でシて満足しないから、こんな企画を出しちゃった、と………」
「………ゔっ……」
「どんなん使ってんの?」
「………え……」
「玩具だよ………梁型?ローター?ビーズ?」
「…………ロ、ローター……とか………バイブ……ですけど……」
「寂しいねぇ………彼氏居ないの?今迄」
「っ!………わ、私の事ばっかり聞かないで下さい!」
どんどん恥ずかしくなっていく由真に、桐生はS気質が少しずつ現して行く。
「言ったじゃん、コミュニケーションだって。セックスに持ち込めないカップルの大半はコミュニケーション不足なんだ。今俺達の会話もコミュニケーションで取って理解しようとしてるだろ?」
「…………取材したいのに、取材させてはもらえないんですけど……」
「取材は身体でしたらいいよ」
「…………か、身体?」
「未経験なんだろ?アンタ………しかも緊縛に興味が強い。初心者のアンタが未経験のまま縛られていく様をアンタ目線で書けばいいじゃないか」
「…………そ、それは桐生さんに縛られる、て事ですか?」
「そう………俺、処女をSMプレイに引き込むの上手いよ?」
「っ!」
息が耳に掛かるか掛からないかの距離で、低く色気のある声で囁かれた由真。
昼間の電話で聞いた声そのもので、下半身が疼き始める。
「しょ、初歩的の事から教えて下さい!」
「…………だから、アンタ………由真だっけ……」
「あ、はい」
「由真が嫌な事はしないつもりだけど、その嫌な事を聞かないで、プレイなんて出来ないからね」
「…………怪我や火傷になる類いは嫌です」
「あぁ………俺も対象を傷付ける行為は嫌いだね。それはヤらないから大丈夫。少々の痛みは?抓るとか噛むとか………」
「か、噛む………え!」
「傷付ける行為だろ?緊縛は痣が残る事もあるが、それは下手な奴がするか、対象が動き過ぎて付いたかだ」
「血が出るのは………」
「…………うん……そういう面では相性は悪くないな………セーフティワードを決めよう」
由真に対しての配慮を考えてくれる桐生は、由真の顔を覗き見る。
「セーフティワードって、それを言えば桐生さんが止めてくれるって事ですか?」
「そう………ルールは決めとくべきだ。由真は仕事の取材。俺はその題材提供者。一線越えない為にもね」
「…………そうですね……【嫌】とか?」
「そんなワードは女の常套句じゃないか。セックス中によく言われるが、本心は嫌じゃない」
「…………M気質の人が普段言わない事を言われたら止まります?」
「…………あぁ、それは止まるなぁ。あれ?てなる」
「…………例えば?」
「躾られる言葉を言われたら止まるかも」
「…………【おすわり】とか?」
「お、俺………犬じゃないし!」
「分かってますが………」
セーフティワードを決める話になっても、由真は桐生の独壇場の世界に引き込まれているのに、由真は全く気付いていなかった。
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