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翌日の午後。
桐生の部屋に来た由真は、昨日桐生に買って貰った服を着てやって来た。
「こんにちは………桐生さん、まだ寝てました?」
「…………あの後店で飲み過ぎて………」
「大丈夫ですか?二日酔いなら薬飲んで下さいね」
「…………いや……二日酔いにはならないが、腹減ったから何か食べたい……」
「作りましょうか?昨日何も無かったし、調理器具あるから、服代には程遠いけどそのお礼で、材料買って来ちゃいました」
「…………助かる……嬉し……」
寝起きで整えられてない桐生の爆発した頭に、由真は笑いを堪えてるが、言いたい事は言わないと、と材料を入れたエコバッグを桐生に見せた。
寝惚けていたのもあるだろう、由真の笑みにはスルーする桐生。
「シャワーでも浴びて、目を覚まして下さいね」
「…………ん……」
由真も昼御飯を食べてはおらず、2人分の食事を作り終えると、タオルを頭に被りシャワーから出て来た桐生。
「うわ………美味そ……」
「お口に合えばいいですけど」
「こんな飯久々……」
「パスタとサラダですけどね」
「いや………充分………ありがとう、由真」
「彼女でもないのに、こんな事していいかとは思いましたけど………」
掛けていたエプロンをたたみ、桐生の前に座る由真に、桐生は放心状態になっていた。
「如何かしました?」
「…………あ……いや……同棲してた女、思い出しただけ………」
「未練あるんだ、桐生さん」
「…………それはないな………あんな女……」
「泥沼で別れたんだ」
「泥沼…………まぁ、そうかもな………今や義理の母親だし」
「…………え!」
「…………」
由真には衝撃的で、巻取ったパスタのホークを手から離す。
「…………面白くもない話だが、その女は親父に近付きたくて、俺と付き合ってた………同棲してそのまま結婚も考えていた俺が女を連れて親父に会わせたら、親父と結婚すると言われてな………」
「び、びっくりですね………それ………」
「フラレて気付く俺も馬鹿なんだがな」
「だからって………それ酷い……漫画や小説に有りそうな在り来りの話だけど……」
「…………冗談だ、忘れてくれていい」
「…………冗談じゃないでしょう?桐生さん」
「なら、慰めてくれなくていいから!」
「っ!」
慰めよう等とは思ってはいなかった由真ではあったが、結局は慰めになりそうな言葉を連ねそうだった。それを桐生は止める。
慰められたくない、と全身で拒否をし、またも立ち入れさせない。
由真は立場を越えない様にするしかなかった。恋人でもない、ただの記者が取材対象にしている間柄なのだから。
「ごめんなさい………慰めようとしてました……余計なお世話でしたね……もうプライベートに踏み入りませんから……」
「…………っ!………俺も悪かった……ここ数日、親父やあの女の事を思い出したから………ちょっと…………な………」
「そんな思い出した事があったのなら、尚更です………私が踏み入れちゃいけませんでした………ごめんなさい」
桐生が思い出したきっかけは由真なのだが、由真に聞かせる事でも無い。
「…………いや、大丈夫だから………それにしても、本当美味い」
「…………ありがとうございます。こんなので良ければ取材にお邪魔する時は作りに来ますよ」
「…………有り難いが……そんな事されたら甘えちまうよ、きっと………」
好きあってもいないのだ。お互いに境界線は必要になるだろう。
その桐生の言う意味は、由真にもよく理解出来た。
「そ………ですね………また踏み込み過ぎちゃった………私………」
「…………由真は、分別を付け過ぎてないか?」
「え?」
「自分自身で、無理な事を決めきって、諦めていく節がある」
「…………そうですね……よく言われます………似合わないから、とか言われて………可愛い服諦めたり………コンタクトが合わないから、て眼鏡で似合ってない形や色の物で顔を隠したり………胸も大きくなって、痴漢に遭うようになって、潰してたり………」
「…………解放してやれよ、由真」
「っ!」
今の由真も桐生に買って貰ったコンタクトを嵌めずに、眼鏡で居る。服こそは桐生の買った服ではあるが、下着は違った。
「食べたら、着替えて緊縛してやる………由真自身、抜け出せない勇気が無いなら、手伝ってやる」
「…………桐生さ……」
「…………名前も呼び方変えてみろ………一昨日言ったと思うが、翼と呼べ………緊縛されている間はな」
「っ!…………は、はい……」
由真は、緊縛しようとする桐生の醸し出す空気の変化に感じ取り従順になる。何故、直ぐに桐生の言葉の支配力に従順にしたくなるのかは、まだ分からなかった。
桐生の、由真に対する理解力もあるのかもしれないが、解放しろと言われた由真は、もう桐生の支配下に居たいと思わせてくれている様に感じる。
また縛られて、貶されて、蔑まれて、お仕置きされたい、と迄、陥れてくれそうで、それを理解し解放した後のスッキリとした感覚は、由真は欲しかった。それが緊縛で解放されるのであれば、こんなに楽な方法はないだろうとさえ思えてしまう。
立ち入れさせてはくれない男に、のめり込む相手ではないとは思われる桐生だが、彼もまた闇を持ち悩んでいる事は由真にも分かる。それを由真で少しは桐生の慰めになるのなら、それでいいとさえ思うのだった。
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