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所有♡

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「離して下さいませ!」
「駄目だ!」
「歩けます!」
「待てん!」

 1階のリビングから3階迄、靭やかかつ俊敏にあっという間に上がって来るヒューマ。メイリーンを肩に担ぎ移動しているのに、本当に早かった。
 メイリーンが1階から3階迄移動する時間の半分以下の時間で運ばれるのは、やっと慣れてきたメイリーンだが、正直嫌な行為ではあった。靴も脱げる時もあれば、髪飾りも落ちたり、イヤリングも落ちて無くす。後から見つかるが、侍従達の労力も考えて欲しかった。

「きゃぁっ!」

 ぽすん、とベッドに落とされるのも毎回で、逃げ場も無く、そのまま覆い被さるので、メイリーンに拒否権も与えない。

「メイリーン………いい加減、獣人を理解してくれ」
「マーキングが直ぐに消えるならわたくしも躊躇しませんわ!3ヶ月も痕が残るのですよ!」
「それこそ、夜会以降メイクで隠せばいい」
「それでも、分かる方には分かるではないですか!」
「獣人なら分かるな」
「ほら!わたくしは獣人の方と結婚する考え等無いのですから!」
「…………くっ!………なら、俺が生涯妻は1人と決めていたら君は俺と結婚するのか?」
「…………え?…………あ、あの……き、急に仰られても………」
「答えろ、メイリーン………そうでなければ、今夜は乱暴に抱くぞ」
「…………か、考えさせて下さい………」

 ベッドに仰向けにされていたメイリーンは、ヒューマから顔を背けた。

「俺が嫌いか?」
「なっ!………そんな事考えた事ありませんわ!第一、嫌いな方と何度も房事出来る程、わたくし阿婆擦れではありません!」

 嫌いではない、と否定した答えを返すのに、メイリーンは再びヒューマを見上げ、服を掴み怒りを見せた。自分の気持ちに正直で、真っ直ぐなメイリーンに、ヒューマは好感を持っている。

「……………阿婆擦れ………プッ……そんな事は俺も思わん………好きか嫌いか、で答えてくれればいい」
「……………黒豹のお姿は好きですわ……」
「な、何だその告白は!」
「…………わたくしの誓いは如何なりますの!あれ程、わたくしは獣人の方とは婚姻しない、と固く決めたのに…………ヒューマ様の存在がわたくしを変えてしまったのです!戸惑いますわ!」
「……………そうか……それ程、俺は君の心に入れていたのか………」
「っ!」

 そう、メイリーンも気付いていた。ヒューマがメイリーンの心にスッと入った時の事を。それから意識し始めていたが、自分のプライドが邪魔をしていた。プイッと再び横を向き、ヒューマの服を掴んだ手を離すメイリーン。

「…………フッ………いつからだ?」
「………っ!………い、言わないでおきます」
「答えぬと、もう一生消えぬ婚姻の証を付けるぞ?」
「ま、まだ婚約もしておりませんわ!そ、それに……………あの……」
「何だ?」
「………こ、恋人………気分を……味合わせて下さいませ………」
「……………分かった……そうしよう……俺も仕事が忙しいからな………で?いつからだ?」
「っ!執拗いですわ!」
「……………それなら、身体で聞くか………答えぬ恋人にな」
「……………え?………あの………今何と仰いました?」

 ヒューマは身体を起こし、キャビネットの中から縄を持って来る。

「ヒューマ………様?」
「メイリーン………脱いでしまおうか………それとも破り割くか?」
「っ!」
「全裸になり、足を開いて俺を欲しがれ」
「…………ヒューマ様は脱ぎませんの?」
「俺は、まだだな」

 メイリーンが素直にドレスを脱ぎに掛かると、ヒューマは天井の梁に縄を掛けるのをメイリーンは目撃する。その梁はベッドの真上だ。

「な、何をなさるのですか?」
「マーキングをするのに、メイリーンを噛むだろう?痛くて逃げられたら俺は落ち込む」
「に、逃げませんわ!あ、あの本当にマーキングする気なのですか?」
「諄いぞ、メイリーン………もう、俺の女だろ?」
「っ!」

 裸になったメイリーンの頬を擦るヒューマ。その眼差しは『好き』と言っていた。ヒューマがメイリーンに顔が近付いて来たのを感じ、目を閉じたメイリーンだが、キスの最中ヒューマは抱き締めてはくれない。しかもメイリーンが抱き着こうとする手がいつの間にか縛られていた。

「え!」
「……………似合うぞ、メイリーン」
「な、何ですの!コレ!」

 腕は背中に固定され、胸と腰を縄で括られた状態になっていた。緊縛されたメイリーンの裸体を弛緩され、ヒューマは天井から吊るされた縄を引っ張ると、メイリーンは腹を中心に吊るされてしまう。

「俺の牙は痛いからな………泣いた所でも止めるつもりもない………だから縛ってそのまま抱き締めた状態でマーキングする………1滴残らずメイリーンの血も吸うからな、俺が下から舐め取ってやる」

 何だか、恐ろしい事を平然と言いながら、上半身裸にはなったヒューマはメイリーンの下に潜り込んだ。

「ッあん!」

 メイリーンの背中を擦るヒューマ。その手は優しく、小さな喘ぎが漏れた。

「メイリーン………ラノックのマーキングは痛かったか?」
「そ、それが………何もわたくし知らなかったので………気が付いたら痣が……」
「言い方を変えよう………今から噛むのはだ」
「っん!」

 ヒューマが今から噛む場所に爪を立て、痛みを与えてからまた擦る指。

「噛まれた時は痛かったか?」
「キ、キスマークだと………思って………ましたから……」
「…………そうか……に噛まれたか」
「多分……そうかと」
「同じでは腹が立つ…………痛みは伴うが、直ぐに和らげてやる………少し我慢しろ、噛んでいる時は話が出来ない………いいな?メイリーン」
「っ!………は、はい…………ゔっ!……………ああああああああっ!」

 宙に浮く身体を、ガッチリ抱き締められ、項に牙を立てられたメイリーン。房事の時の喘ぎや悶えとも違う声を発し、部屋中に轟く。足をバタつかせ、牙から逃れ様と暴れるが、メイリーンの額を押えるヒューマの腕にも力が入っていた。

 ―――痛い!噛まれた場所が熱い!

 ヒューマの牙が根本迄食い込む痛みは、ラノック公爵に付けられた時より痛いのだと、悲鳴が挙がる。メイリーンは血を吸われ、耳元にヒューマの飲み込む喉が鳴ると、温かく感じる何かがメイリーンに戻された気がする。すると、次第に痛みが薄まっていく。溢れた血を舐め取られ、ゆっくりと牙が抜かれた。だが、ヒューマの声はまだメイリーンに届かない。愛撫をするかの様に、痣の出る場所を癒やしていくかのように、唾液が塗り込まれていた。

「あ………」

 額へ押え込まれたヒューマの力も軽くなった時、別の感覚がメイリーンを襲う。縛られ強調された胸を鷲掴みされ、揉み扱かれ始めたのだ。

「あっ……んふっ………っん……」
「痛みは?」
「…………な、無い……ですっ」
「頑張ったな………メイリーン………婚姻したら痛みが無い様に刻印するからな」
「い、痛み無い様に出来たのなら…………始めからして下さいませ!」
「ラノックと同じやり方は、俺の主義ではない」
「なっ!…………酷いですわ!………というか、いつまでこの状態なのですか!わたくしは!」
「……………暫くこのままで楽しませろ」

 仰向けのまま吊るされて、胸を鷲掴みされた事も始めてのメイリーン。

「わたくし、ラノック公爵様にこんな事されてませんわ!」
「……………今からラノックの事は禁句にする………だが、ラノックとの房事は緊縛はなかったか………そうか……」

 ヒューマは楽しそうにメイリーンの耳元でクスクスと笑っていた。
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