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形勢逆転
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しおりを挟むフィーナがフィーネと追いかけっこをしている最中、国王の命令に従わなかった騎士達は国王に剣を向けた。
「反逆罪と見なすぞ!」
「結構です……陛下………我々騎士団も貴方の命令等もう従わない」
「ぐぬぬぬぬ………もういい!儂1人でお前等等如何とでもなる!ロマーリオの雷には負けぬわ!」
国王は玉座から立ち上がり、剣を抜く。それを見てロマーリオはフィーナから貰ったペンダントを握り締めると、剣に変わった。
「うぉ!スゲ~!」
「な………何だその剣は……」
「土魔法対策」
だが、国王は弱くなく、ロマーリオの斬撃も受け流す程、反応が良かった。
「ちっ!耄碌しときゃいいものを……」
「永遠の生命を手に入れるのだ……動けぬ様ではつまらぬからな」
「………何が永遠の生命だ!そんなもん要るかぁ!」
あちこちに斬撃が飛ぶが、ロマーリオと国王の間に入れない騎士達右往左往だ。
「避難しろ!邪魔になる!」
「し、しかし……我々も………」
「怪我人達の救助に当たれ!さっきから階下で爆発音しているのが分からないか!」
「は、はい!」
騎士達は、フィーナとフィーネの追いかけっこを目の当たりにし、怪我人達の救助にあたる事になった。
「だ、誰なんだ?王太子妃を追っている女は……」
「さ、さぁ?」
ガチンッ!
剣同士がぶつかり合い、睨み合うロマーリオと国王。
「上達したではないか」
「ふん……騎士団で鍛えてきたからな……」
「いい剣だ……お前が死んだら儂が使ってやる」
「誰がアンタに渡すかよ!…………ゔっ!」
急に、ロマーリオが吹き飛び、床に倒れ込む。
「ぐっ………ゲボッ!」
口から鮮血を吐き、咳き込むロマーリオに、一歩一歩近づく国王は、ロマーリオに遠慮等せず、頭を掴むと膝まずき、ほくそ笑んだ。
「腹ががら空きだ……遺言ぐらい聞いてやろう、我が息子よ」
「………もう……お前の息子じゃねぇ……」
「そうか……ユージーンを捕まえたら、お前の魔力も貰ってやろう……あと、フィーネの馬鹿の魔力もな……姉の方に興味が湧いたわ」
「くっ………離せ!」
「起き上がれぬのに、口だけ達者だ」
「……………!」
「ぐわっ!」
ロマーリオの目線の先、国王の頭の後ろに大きな影が出来ると、みるみる内に、鳥型の魔獣が現れた。その魔獣は国王を背後から踏み付ける。
「鳥?」
「グワッ!」
「…………マジか……」
ユージーンは魔獣を鳥にした魔法具だと渡してきた鳥。通信具は足首に着けられていた小さな物だと直ぐに気が付いたが、魔獣でさえ変化が出来る様にさせていた事に驚きを隠せなかった。
「出しなさいよ!助けて!陛下!」
そして、国王と対峙していたロマーリオは、階下から爆発音が轟く中で、戦いを中断中、背後から甲高い声に振り向いた。
「フィーナ?」
「…………はぁ……はぁ……フィーネ、捕まえてたわ……」
「………下の衝撃音、フィーナだったのか……」
「違うわよ、この子が逃げてる時、壁壊しながら走ってたから」
「………なるほど……」
「………え?この魔獣何?」
「あぁ……鳥だ」
「グワッ!」
「え!」
フィーナも驚く程の大きさで、唖然としている中、フィーネが魔法壁の中から叫んでいた。
「陛下!助けて!陛下ぁ!」
「……フィーネこそ助けんか!クソッ!重くて動けぬ!」
「私こそ、魔法使えないんだもん!出せ!」
「フィーネ、久しぶりだな」
「………ロマーリオ殿下?死んだんじゃないの?」
「死ぬかよ、まだ」
「悔しい!出せぇ!」
「ギャァァァッ!」
「「!」」
フィーネに気を取られていると、鳥の叫び声が轟く。
「陛下!」
「許さぬぞ!ロマーリオ!」
「!……避けろ!フィーナ!」
「!」
―――ま、間に合わな……!
国王が、鳥から逃れ、斬撃をロマーリオに向けて出したのだが、フィーナへ軌道が変わっていく。慌てて防御をしようとしても間に合わなさそうで、受けてしまうと思った瞬間、ブオッ、と風が巻き起こった。
「!」
「フィーナ!」
「グワッ!」
ザシュッ、と胸から血が吹き出て、フィーナは倒れてしまった。
「フィーナ!フィーナ!」
「グワッグワッグワッ!」
「ははははははっ!隙だらけだったな!ロマーリオ!」
「…………あぁ………あ……おと……さ……おか……さ……お姉……ちゃ……」
「フィ………ネ……」
「嫌ぁ!お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
ドンドン!ドンドン!
「!………フィーネ?……まさか?」
「ロマーリオ、お前も一緒に死ね!その女と共に!」
「止めてぇ!お姉ちゃんを殺すなぁ!」
パリン、とフィーナの魔法壁が意識が途切れたからか割れて、フィーネが魔法壁の拘束から解けると、国王目掛けて魔法を放つ。
「ぐわっ!」
氷の属性を持つフィーネは、国王を凍らせた。
「………わ、私………何で……」
「フィーネ!呪縛が解けたのか?」
「!ひぃっ!……だ、誰?お兄ちゃん………お姉ちゃん怖いよぉ……」
高飛車な印象だったフィーネが、まるで人見知りする幼女の様で、泣きながら倒れてしまった。
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