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過去

波乱の前

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 水掛け論だった。マキシマスの求婚はロゼッタには予想外で、本心かどうかさえロゼッタは判断をし難い。熱の篭った表情で愛を囁くものではないのか?とロゼッタは小説で培った知識しか知らない男女の付き合い方。

「そ、そんな!今サブリナと別れ告げたばかり!…………本気かどうかも分かり兼ねます!!」
「…………じゃあ、明日また求婚しよう」
「マ、マキシマス様………あ、あの……困ります……第一、サブリナが祝福するとは………」
「サブリナは関係ない………元よりサブリナは俺の性欲を満たすだけの関係だった、と今なら思う………好きか嫌いか、と聞かれたら、ここに来る迄は好きだった……だが、騙すような仕打ちで嫌いになった………祝福をサブリナに求める気等ない。付け加えるなら君の婚約者からの祝福も要らん……むしろ恨まれて結構………ロゼッタの魅力を知っている筈なのに、女の扱い方を知らない男等、相手にもならん」
「……………マキシマス様………円滑に物事を進める事はお嫌いですか?」

 マキシマスのきっぱりと言い退ける言葉は、敵を作る様な気がしたロゼッタ。

「いいや?魔道士だから、効率的な方法を考えて言ってるよ……魔法も円滑に発動しなければ、発動した自身に返ってくるからね」
「で、ですが、今のお言葉はサブリナもロベルトからも反感買うだけでは……」
「勿論、反感はあるだろうね………何故君が領主にならなければならない?サブリナがなってロベルトとやらと結婚すればいい。サブリナも現領主の娘だろ?」
「でも人の心はそんなに変われません!」
「そう、変わらない………だが、このままでは君は恐怖感のある男と結婚させられるんだぞ?…………一生我慢するのか?」
「……………そうなる………と……」
「想像するだけで、泣きそうになるのに?………いいか?その泣き顔はあの手の男は勘違いするぞ?……君の泣き顔……俺だってグラつくぐらい唆られるんだ………笑顔も唆られるけど……」

 マキシマスはロゼッタの笑顔に唆られる、と言った後、少し顔が赤くなる。それが照れだと、ロゼッタも気が付いた。

「…………努力してみます………破談になるように………」
「だから、協力……」
「要りません……お気持ちだけで………」
「頼って貰ってもいいんだが?」
「…………ご厚意は有り難いんですが……」
「…………分かった……暫く様子は見ていよう………無理なら俺が出て行く」
「如何してそこ迄して頂けるのですか?」
「言っただろ?君に惹かれている、愛しい……と」
「……………」

 何度も言われ、ロゼッタも自覚してきた様だ。顔が火照り、頬を顔で覆うロゼッタはマキシマスから目線をずらした。

「…………駄目だな……その顔も他の男に見せないでくれ………抱き締めたくなる……」
「…………だ、抱き締め………」

 マキシマスもロゼッタを見られず、理性を保とうと顔を背けた。その後は他愛のない話が出来たロゼッタとマキシマス。お互いの価値観や、趣味等楽しい時間を共有した2人。

「あ、そろそろ私、帰ります!長居し過ぎてしまいました………マキシマス様にはご迷惑ばかりで申し訳ありません」
「…………迷惑とは思ってないよ……楽しい時間だった…………君とはまだまだこういう時間が欲しい……明日も会いたい」
「…………マキシマス様……」
「駄目とは言わせない……君があの男とサブリナの居る屋敷に帰したいと、君に惹かれる俺は如何しても思わない」

 ソファから立ち上がるロゼッタをマキシマスは阻む様に自身も立ち上がる。

「…………こ、困ります………帰らないと破談話出来ません………」
「…………それもそうか………では、明日また会おう………会える時間はある?」
「………は、はい……午前中なら………午後は父が視察から帰ってきますから、領主の仕事を手伝わねばならないので」
「じゃあ、午前中にあの貝を採った海岸で……どう?」
「私は構いませんが、マキシマス様お仕事は?」
「午前から仕事する」
「…………は?」
「折角君に会えるんだ、君と過ごしたい」

 そう言うとマキシマスはロゼッタの手を取った。

「俺を好きになって欲しいしね」
「!!」

 手の甲にキスをされ、思わずロゼッタは手を引っ込めた。

「可愛い……ロゼッタ………引き止めたいが、流石にもう無理かな?屋敷に送ろう」
「あ、あの………私も先程のサブリナの様に送って下さい。送って頂くなら………屋敷では人目が……」
「…………あぁ、そうだな……それか君の部屋でも……」
「それは遠慮します」
「見たかったんだが………」
「駄目です」

 送って貰ったロゼッタとマキシマスの恋が始まった。だがそれは長くは続かないのは明らかだった。日に日に、ロゼッタはマキシマスの事を考える様になり、雰囲気も柔らかくなっていく一方で、ギスギスした雰囲気になっていったサブリナ。ロベルトもロゼッタが変わっていったのを見逃す訳はなく、1ヶ月程経った頃、嵐が巻き起こった。
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