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今日も俺の目は覚めないらしい。
元親友は酷く落ち込んだ様子でそう俺に告げてきた。
そりゃそうだろうな。中身はここにいるし。

早く未練なんてなくなって、こんな所から逃げたいんだけどなぁ…。

あいつが学校へと向かい俺は室内から外をぼーっと眺める。
一度脱走しようとしたことがバレてからあいつは俺を一歩たりとも外へ出すことはなくなった。
機会を見て逃げようと思ったけど、中から外に出れそうな場所は、ない。

神様、俺もう死んじゃいそうだよ。

「まっさかぁ~」
「に゛ゃぁああ!!?!?」
「あはは!びっくりしすぎでしょ~」

突然聞こえてきた声に文字通り飛び上がる俺。
ゲラゲラと腹を抱えて笑う神様をジトーっと恨めしそうに見上げれば、ごめんってと全く悪いと思ってなさそうなトーンで謝ってきた。

ところで、何がまさかなの。

「えっとねぇ~僕が君に呪いをかけたからだよ~」

呪い?

「そう。…君が死ぬことのない、呪い」

…それは呪いと言うのか…。
じゃあ死のうとしても、どんなにお腹が空いても、轢かれても死なないってこと?

「んーまぁ、そうだねぇ」

え、じゃあ未練がなくなった時も結局死ねないってことなの?

「未練がなくなった時は、最初に言った通り僕が選ばせてあげるよ。この世でまた同じ人間として生きるか、異世界で違う人間として生きるか…僕と生きるか」

全部嫌とかは…。

「それはなし~そんなの面白くないじゃ~ん」

………。

「ま、未練がなくなった頃には答えも自ずと出てるはずだよ~。じゃあ、飼い主が帰ってきたみたいだから僕はまた消えるね~」

あっ待って!聞きたい事があるんだ…!

「ん?なぁに?」

…『未練』って、何に関係してるの…?

「うーーーん…教えたくないんだよねぇ~」

そこを、なんとか。お願いします。
全く見当もつかないんだよ。

「仕方ないなぁ。じゃあ、ヒントね」

ああ!

「君の、飼い主だよ」

飼い主…ってことは、あいつに関する事なのか?

「具体的に言えば君の飼い主と、君の事かなぁ~?おっと、喋りすぎちゃった。じゃあね~」

え!あ、ちょっ……行っちゃった…。

俺と…元親友の事…?
…俺の気持ちがまだ、あるって事…?

そん、なわけ…。

ぐるぐると頭の中で疑問がまわる。
思考がぐちゃぐちゃになって今にも倒れてしまいそうな俺の疑問を遮ったのは呑気な元親友の声だった。

「ただいま~ナツ~いい子にしてたか~」


…いや、気持ちはまじで残ってない。
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